まだまだ様子見の人が多い電力自由化

小売電気事業者の切り替え申し込み件数は、電力自由化がスタートした4月以降ほぼ同じペースで増加している(出典:資源エネルギー省『小売全面自由化に関する進捗状況』)小売電気事業者の切り替え申し込み件数は、電力自由化がスタートした4月以降ほぼ同じペースで増加している(出典:資源エネルギー省『小売全面自由化に関する進捗状況』)

今年(2016年)4月からスタートした電力自由化。すでに6カ月が経過したが、切り替えた人はどれくらいいるのだろうか?

電力広域的運営推進機関のスイッチング支援システムを通じた契約先の切り替え申し込み件数は、7月末時点で約148万件。全体のおよそ2.4%となっている。4月以降毎月ほぼ同じペースで増加している状態だ。

経済産業省が9月に行った1万人を対象としたインターネット調査によると、「電力自由化の内容を知っている」と答えた人は約67%だった。また、現在契約先を切り替えていない人のうち、約27%は今後切り替えを検討している。

このような前向きな声が目立つなかで、100世帯中3世帯弱しか切り替えていないという状況は、まだまだ様子見という人が大多数ということだろう。また、興味はあってもどこの小売電気事業者を選んでいいかが分からないという人も多いはずだ。小売電気事業者は8月26日時点で334社。これだけあれば選び方が分からないのは当然かもしれない。

ちなみにスイッチング支援システムとは、電力広域的運営推進機関が提供する電力託送契約の切り替えに係る各種業務を支援する事業者向けシステム。Web上で利用することができる。

圧倒的シェアを誇る東京ガスの強み

そのような中でも圧倒的な勢いで契約件数を伸ばしている事業者が、東京ガス株式会社だ。同社の契約件数は7月20日時点で約40万1,000件。全国の契約総数が約126万件(6月30日時点)なのでトップの契約数とみられる。

その理由は、地域に密着したガス機器販売店により営業活動や、テレビCMなどのプロモーション活動など様々なことが考えられるが、その中でも消費者にとって大きなメリットとなるのが、電気料金が安くなるケースが多いということだ。

ほとんどの小売電気事業者は、発電施設から電気を買ってユーザーに販売する、いわゆる商社だ。ところが東京ガスはグループ会社も含めて出資する火力発電所が5カ所あり、電源規模は約160万kW(自社持分)。これは一般的な原子力発電所1基分を上回る規模だ。これほど大きな発電施設を保有していれば、当然ながら価格競争力が強くなる。営業力+プロモーション+価格競争力の三拍子が揃っていればシェア獲得もうなずける。

最適なプラン探しには比較サイトの活用も

とはいえ、どの世帯にとっても東京ガスがお勧めかと言えばそうではない。電気料金は家族構成や生活スタイルなどによって大きく変化する。また、選択条件が料金だけではない、という人もいるだろう。つまり、それぞれの世帯に最適なプランを見つけることが重要だ。

最適なプランを見つける方法の一つとして、比較サイトを活用する方法がある。「電力会社 比較」といったキーワードで検索すれば複数の比較サイトが見つかる。このようなサイトに家族構成や現在の電気料金などの条件を入力することで、今よりも条件のよいプランを提供する事業者を探すことができる。

最近は電気料金単体ではなく、ガスや携帯電話とセットで契約することで割引を行う事業者も増えている。また、エコ意識が高まるなか、太陽光や風力発電など再生可能エネルギーを取り扱う事業者を選びたい、という人もいるだろう。これらの事業者も比較サイトで見つけることが可能だ。

ちなみに、契約先を切り替える際のネックとして、新規参入してきた事業者なので停電や倒産が心配、という声も聞く。しかし、そこは安心していい。電力自由化後は、同じ電線に複数の事業者の電気が混ざり合って流れている。このことでたとえ、1社の供給が少なくなっても他社がその分を補う仕組みになっているのだ。したがって、契約する会社によって停電しやすいということはない。

また、万一契約した事業者が倒産した場合は、自動的に「経過措置」プランに引き継がれるので電気の供給がストップすることはない。「経過措置」プランは割高になる可能性があるが、それは次の事業者と契約するまでの一時的なものだ。

電力自由化後の今なら、環境にやさしい太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを取り扱う小売電気事業者を選ぶことも可能だ電力自由化後の今なら、環境にやさしい太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを取り扱う小売電気事業者を選ぶことも可能だ

少なからず発生している便乗営業

電力自由化にともなうクレームは減少傾向ではあるものの、8月に入った時点でも発生している(出典:独立行政法人国民生活センター)電力自由化にともなうクレームは減少傾向ではあるものの、8月に入った時点でも発生している(出典:独立行政法人国民生活センター)

電気料金は安くなる、環境にやさしい再生可能エネルギーも選択できる、しかも停電などの心配もない。いいことずくめの電力自由化だが、実はサービス開始以来、少なからずクレームが発生している。

独立行政法人国民生活センターによると、電力自由化に関する相談件数はサービス開始直前の2016年1~3月がもっとも多かった(863件)ものの、7~8月の時点でも77件が寄せられている。

おもな内容には以下のようなものがある。

・メーター交換の際、電気温水器の販売を受けた
・新料金プランに変更してから電気料金の請求がない

小売電気事業者を切り替える際に新たに機器を購入する必要はない。スマートメーターへの交換も特殊な場合を除き無料だ。ところが中には便乗営業をする事業者もいるようだ。必要ないものを勧められたらきっぱりと断りたい。

また、請求書に関しては、システムの不具合などにより一部のデータ通知が遅れており、届けられない事態が発生している。もし、そのような事態になったら契約した事業者へ問い合わせて対応してもらえばいいだろう。

そのほか、契約締結前に心配なことがあれば下記の相談窓口または最寄りの生活消費センターに相談してほしい。

電力・ガス取引監視等委員会(経済産業省)
http://www.emsc.meti.go.jp/general/consult.html

2016年 10月26日 11時05分