物件の出ない地域限定で家探し。条件に適ったのは築37年の中古オフィスビル

古家を買って改装した例なども紹介されている著書を手に高橋さん古家を買って改装した例なども紹介されている著書を手に高橋さん

11年ほど賃貸で暮らしてきた中野区にある西武新宿線新井薬師駅周辺限定、予算3,500万円の2階建てという条件で始まった高橋洋子さんの新居探し。新井薬師は安土桃山時代に開かれ、江戸時代には子育て薬師として広く信仰を集めた新井薬師の門前町で、都心にも近く、古くから開発されてきたため、新規に分譲される土地はほとんど出ない。

「供給が少なく、探している人が多いエリアなので、たまに空き家を見かけても、すぐに更地になり、あっという間に新築建売住宅が建てられてしまうんです。新築になると5,000万円ほどはするので、とても手が出ない。それでもと思い、何軒か新築も見に行きましたが、どれも同じような間取りでいいとは思えない。そこで中古に狙いを定めたのですが、こちらもなかなか物件が出なくて」。

そんなところに出会ったのが現在の住まい。印刷会社が事務所として使っていた建物でビルばかりを扱っているサイトでオフィスビルとして売られていたという。「1階にキッチン、和室があり、2階を事務所として使っていたようで、それが競売にかかり、買った会社が2,500万円で売却しようとしていたものの、1年ほど売れなかったという物件です」。

オフィスビルといっても、建物そのものはごく普通の木造一戸建て。たまたま、その一部をオフィスとして使っていたことから、オフィスビルとして売られていただけで、住むには問題はない。都心近くの住宅街にはそうした建物が少なからずあるはずだから、古いオフィスビルをターゲットに物件を探すという手はありそうだ。

見つけたのは建ぺい率オーバー、雨漏りの2大マイナス要因のある物件

改修前の2階の様子。確かにこの様子だけ見れば、不安になる人が多いかもしれない改修前の2階の様子。確かにこの様子だけ見れば、不安になる人が多いかもしれない

売れなかった原因は2つ。ひとつは建ぺい率がオーバーしており、都銀などの住宅ローンが利用できないという点。「建ぺい率60%のところに80%近い建物が建っており、それでは銀行は利用できません。念のため、駅前の都銀に相談に行きましたが、『あの物件に価値があると思っているんですか?』と冷たい態度。銀行は数字しか見ていないんだな、あの建物がかわいそうと逆に買いたい気持ちになりました」。

もうひとつの不安要素が雨漏り。「天井が抜けて雨漏りしていました。それに長らく空き家になっていましたから、全体がかび臭く、それで嫌悪感を抱いた人が多かったそうです。もちろん、建物そのものが湿気ているなら危険ですが、屋根が吹き飛んでいたため、外からの雨なら問題ないと何度か見に行き、検証したところ、どうやら外からの雨と判断。それなら大丈夫だと思いました」。

そこで耐震補強、改装にいくらかかるかを検討することに。「親族の大工さんに相談したのですが、耐震補強から含めてやるとなると個人では無理と言われ、大手の定額制で耐震補強から改装までをやってくれる会社に相談。購入前に無料の耐震診断その他の調査をして、見積もりをもらいました。集合住宅1室の改装ならできる会社も多いと思いますが、一戸建てで土台からとなるとそう多くはない。長く住もうと思ったら躯体まできちんと手掛けられる会社でないと心配ですよね」。

3カ月悩んだ末に購入決定。金利の高いローンの比率を下げて購入

以前のレトロな雰囲気の外観。これも気に入ってはいたが、現在はまるで新築なみに一新以前のレトロな雰囲気の外観。これも気に入ってはいたが、現在はまるで新築なみに一新

とはいえ、銀行ローンが使えないのは大きな痛手。高橋さんも耐震改修、リフォームの見積もりを取るなど動きながらも3カ月以上悩んだという。「2010年の1月に見て4月まで悩んでいました。銀行以外でも住宅ローンは借りられますが、ノンバンクは金利が高い。私の場合は3.9%。危険だなあと思いました。でも、悩んでいるうちに5月になり、不動産会社さんから『まだ、買う気があるなら値下げするよ』と連絡をもらい、それで決めました」。

2,500万円を430万円下げ、2,070万円にすると言われ、決断した高橋さん。「物件価格2,070万円にリフォーム費用1,180万円で計3,250万円。当初予算より少し安くて済むならと決断しました。ただ、高い金利で借りる分をできるだけ減らそうと、定期預金や投資信託を解約するなどして現金をかき集め、自己資金1,500万円を用意し、住宅ローンは800万円だけに。それとは別に、リフォームローンで1,000万円を固定で2.9%で借りました。今なら住宅購入とリフォームを一括で借りられるローンがありますから、そういうのを使う手もありますね」。

しかし、金利の高いローンを借りて大丈夫なのか。そこで頭金を同じ1,500万円として、新築を5,000万円で買う場合と、高橋さんの場合で非常にざっくりとだが、毎月返済額、総返済額を計算してみた。新築の場合には3,500万円を金利1%で30年返済で返すとして毎月返済額は11万3,000円、総返済額は4,053万円になる。これに対して1,750万円を金利3%として20年返済で返すとした場合には毎月返済額は9万8,000円、総返済額は2,330万円。確かに金利は高いが、物件価格が安い分、早く返せることもあり、総返済額ははるかに安く済む。これでどうしても住みたい場所に一戸建てが買えるなら、建物価値ゼロの古い一戸建て購入はありだろう。

中古を買うならお金、税、助成の知識があると損しない

自宅で仕事をすることも多い高橋さん。そのため、2階では仕事と同時に家事も行えるように作られている。写真は2階のリビング自宅で仕事をすることも多い高橋さん。そのため、2階では仕事と同時に家事も行えるように作られている。写真は2階のリビング

高橋さんは現在、自分の経験を踏まえて0円新居を進める講演活動をしているのだが、肩書きにはFPとある。お金の話のプロだったから、こうした買い方ができたのかと思って聞いてみると、意外なことにFPを取ったのは購入後だという。

「住宅ローン減税はリフォームローンにも使えるんです。でも、その時、いろいろ調べても自分が適用されるかどうかわかりませんでした。適用されないだろうと判断し、確定申告をしたのですが、その後、リフォーム業者と話していたさいに、適用対象であることを知り、半年後に修正申告をして、5年間の減税が受けられることに。これを機に、家を買う時に損しないためにはお金の知識は必要だなと実感。それでFPの資格を取りました」。
本当はバリアフリー改修工事、省エネ改修工事を行った時には申告すれば固定資産税、所得税の軽減もあるそうだが、こちらについては工事後3カ月以内の申告期限があり、期限を過ぎてから気づいたため、適用されなかったとか。知識がないと損するというのは本当だ。逆に知識があれば助成を利用することもできる。

「たとえば自治体によっては耐震助成金なども使えます。立地、住む人の要件にもよりますが、50万円、100万円と出る自治体もあり、リフォーム費用に充てられます。中野区は少額で、申請書類作成を作る手間を考えると、費用対効果が少ないことから利用しませんでしたが、お隣の新宿区で、160万円も助成金が出たと喜んでいた知人がいます。また、都内で高齢者がいる家庭で介護認定を受けている場合、介護保険から最大20万円の助成金が出ます。また、それとは別に、しかも介護認定の有無に関わらず、住宅改善事業に助成が出ることも。事業の有無は自治体によりますが、浴槽の交換に40万円弱など、場合によってはかなりの額に。調べてみない手はありません」。

中古リノベは物件の見極めと依頼する会社選びが肝

インテリアにこだわるリノベーションではなく、自分にとっての使い勝手を優先した高橋邸。キッチンの右手に洗濯機置き場があり、調理と洗濯が同時並行できる。かつ干す場所もリビングの脇と動線は短く、便利インテリアにこだわるリノベーションではなく、自分にとっての使い勝手を優先した高橋邸。キッチンの右手に洗濯機置き場があり、調理と洗濯が同時並行できる。かつ干す場所もリビングの脇と動線は短く、便利

また、知識がないから中古を敬遠するという傾向もあるという。「新築の場合には10年の住宅かし保険がありますが、中古は5年。だから新築のほうが安全、強いと思っている人もいますが、きちんと耐震補強してあれば中古でも安全に暮らせます。暮らし始めて半年後、地方出張中に東日本大震災が起きましたが、被害はガラスの写真立てといった小物ですみ、家は無事でした」。

火災保険、地震保険にも中古だと不利、入れないというような誤解があるという。「火災保険は建物の面積と再調達価額などから算定されますし、地震保険はエリアと構造で掛け金が決まります。ですから、中古でも、リフォームでも入れますし、極端に不利というわけではありません。そんなことで中古はダメと思うのは損ですよ」。

ただし、物件の見極めとリフォーム会社選びは大事だという。「躯体の状況が悪かったらいくら手を入れてもダメ。できれば購入前に専門家に、おおよそ、どんな状態かを見てもらうほうが安心です。また、中古は工事をやってみないと分からない瑕疵を抱えていることも多く、そのために予算、工期が延びるケースもしばしば。私が定額制の会社を選んだのはそうした不安を考えたためです。また、トラブルが発生した際に返金、保証を行えないような、経営基盤が不安定な会社に依頼するのも危険です」。

全体で67m2強とコンパクトな家だが、1階に寝室、収納を、2階に生活、仕事のための機能を集約、キッチンの脇に洗濯機置き場を作るなど自分の暮らしに合わせた配置がとても使いやすいと高橋さん。「0円新居を提唱していますが、中には都内で150万円などという額で家を手に入れた人もいるほど。発想を変えれば無理なく一戸建てが手に入るはずです」。

高橋さんが主宰する、0円新居の勉強会「空き家リノベーション研究会」
http://ameblo.jp/yo-coo/entry-11985066561.html

住宅リフォームに関する減税制度の概要(リフォネット)
http://www.refonet.jp/csm/info/fund/tax_reduction/

住宅改善事業(バリアフリー化等)区市町村別事業概要一覧(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/jiritsu_shien/jutaku.html

2015年 02月25日 11時07分