市民ムービーのオーディションに、800人もの市民が集まった!

▲「タカハマ物語」の制作風景。物語に登場する『鬼瓦コンサート(鬼コン)』は、映画を飛び出して実際に定期開催されている!▲「タカハマ物語」の制作風景。物語に登場する『鬼瓦コンサート(鬼コン)』は、映画を飛び出して実際に定期開催されている!

愛知県高浜市は、人口4万人というコンパクトなまち。どこの自治体でも同様だが、小さなまちの発展には、子ども・若者の定住が欠かせない。

「高浜市では“子ども・若者の成長支援”を目的にして、大人と中高生が一緒に『Kids Now(きずな)実行委員会』を立ち上げました。そこで生まれた案が、市民が出演者やスタッフとして広く参加でき、みんなに見てもらうことのできる【映画制作】だったのです」
(高浜市役所こども未来部文化スポーツグループ 間瀬敬治さん)

こうして2011年~2012年にかけて、市民映画『タカハマ物語』制作がスタート。
縁あって「トリック」「20世紀少年」でおなじみの堤幸彦監督に監修をお願いすることができ、市民のボルテージはぐんとアップ。
「出演者オーディションには、小さいお子さんからおじいちゃんまで、800人もの市民が集まりました。単独イベントとしては、驚くほどの集客でした」

この『タカハマ物語』、出演者は高浜市民、ロケ地も市内。知り合いやなじみの場所が続々と登場する作品とあり、初お披露目の日にはふたを開けてビックリ、600人収容の会場に2,000人の市民がつめかけたのだそう!
「撮影や上映期間中はまちが映画色に染まり、一体感が生まれたと実感しています。『次は私も出たい』といった参加意識の高まりもあって、次回作につなげることができました。
またスタッフの中には、『夢が見つかった』と映像関係や服飾の学校に進学したり、役者を目指して上京した子もいるんですよ!」

まちが好きになり、地域の人とつながり、自分の可能性も開ける。感性豊かな時期の映画づくりは、高浜市の子ども・若者たちのココロを確実に刺激したようだ。

ご当地アイドルが誕生か!? 2015年『タカハマ物語2』の撮影がスタート

予想を超える成功を収めた市民映画『タカハマ物語』。“あの巻き込む力をもう一度つくりだそう”と、『タカハマ物語2』の制作が決定した。

「今作は、前作以上に“中高生を中心に手作りで行う”をテーマに掲げています。プロの制作スタッフは加藤行延監督とカメラ・照明・音声の方の4名のみで、機材の取り扱いなども市民スタッフで行います。より本来の目的“子ども・若者の成長支援”に近づいた形ですね」(間瀬さん)

続編の制作に向けて集まった市民スタッフは約100名。今回は中高・大学生がぐっと増え、半分ほどを占めている。ここに市の若手職員50人が加わり、総勢150名の若者パワーで映画づくりを盛り上げていくことになった。

また、今作ではスタッフも重要な任務をまかされることが増えるため、「シナリオ・演技・撮影のワークショップ」を順次開いて、プロと一緒に学ぶ機会を設けている。
「毎回本当に楽しくて、いい雰囲気なんですよ」と間瀬さんも自信を見せる。

気になるストーリーをちょっと教えてもらうと・・・
市長の「高浜市にアイドルをつくります!」という宣言から物語がスタートする―。
実際に、オーディションを通った高浜市の小学生~20代主婦までの約30名が、厳しいダンスレッスンを受けているというから何だかワクワクする。 

撮影は7~9月の夏休みに集中して行い、2015年冬に上映会を開催予定。どんな作品になるのか、まちにどんな波及効果をもたらすのか、乞うご期待!

▲映画制作の中心メンバー、高浜市役所こども未来部文化スポーツグループ 間瀬敬治さん。「キャスト、スタッフへの連絡が一番大変です。1,000人のエキストラが出演する撮影が延期になった時は、一日中電話をかけ続けました(笑)」▲映画制作の中心メンバー、高浜市役所こども未来部文化スポーツグループ 間瀬敬治さん。「キャスト、スタッフへの連絡が一番大変です。1,000人のエキストラが出演する撮影が延期になった時は、一日中電話をかけ続けました(笑)」

単発イベントだけじゃない。「地域内分権」でずっと参加できるまちづくり

すべて行政頼みではなく、住民にも積極的にまちづくりへ参加してほしい。そんな「住民主導」のまちづくりに、高浜市では10年前から取り組んでいる。

きっかけは、周辺5市との合併の話が整わなかったことにある。「自分たちのまちは自分たちでつくる」という原点にかえり、単独自立の道を探った。その中で「住民力の強化」を3本柱のひとつに掲げたのだという。

「具体的には、地域でしかできないことを地域で取り組んでもらう『地域内分権』を推進しました。小学校区を単位にして『まちづくり協議会(まち協)』を設置し、必要な【権限】と【財源】をわたしたのです。小さな子どもから高齢者まで歩いて移動できる小学校区というのもポイントでした」(高浜市役所企画部総合政策グループ 木村忠好さん)

まず2005年、市内初の「高浜南部まちづくり協議会」が発足。そこから次の協議会がスタートするまで約2年かかった。今では、市内5つのまち協が活動している。
「新興住宅街、伝統文化が残るまち、自然の川に寄り添うまちなど個性が違うので、どこのまち協でも一緒の取り組みというわけにはいきません」(木村さん)

今、それぞれのまち協では、財源と権限を活かして、自然観察などの個性あふれるイベントを多数開催。この10年でまちに根差し、盛り上げにしっかりと貢献してきたそうだ。

▲「菊人形」を特色として掲げる「吉浜まちづくり協議会」。2014年の人形小路菊まつりにはなんと!「アナと雪の女王」が登場▲「菊人形」を特色として掲げる「吉浜まちづくり協議会」。2014年の人形小路菊まつりにはなんと!「アナと雪の女王」が登場

「何にも縛られずに、自由にまちづくりができるのがうれしい」

▲地域を知り尽くしたまち協による「防犯・防災」は心強い!▲地域を知り尽くしたまち協による「防犯・防災」は心強い!

まち協の取り組みの中でも、とくに成果が出ているのが「防犯・防災」だという。

「青色回転灯車両による防犯パトロールを、各まち協の方々が実施しています。犯罪発生件数も減少していると聞いています。業者に委託するのと同額の事業費をお渡しし、市の仕様に基づけば、実施方法、事業費の使い方はまち協で決められます」(木村さん)

また防災面では、防災訓練の一次訓練として「家族全員が無事な家は、玄関にタオルをかけてください」と周知し、町内会が町内を見回ってまち協に報告。まち協は各町内の状況を取りまとめ、市に報告している。
加えて二次訓練として「避難所開設訓練」も行っている。市がモデル地区を指定して実施してきた防災訓練は、今では、まち協が主体で行っている。すぐには行政の手が届かない真の災害時に、この「自助・共助」のシステムが大きな力を発揮するに違いない。

さて実際に携わっている「まち協」メンバーの思いとは?『やれることをできる時にやるというスタンスだから続けられた』『何かに縛られるのではなく、家族や地域のためだからできた』といった声が届いている。
「まちづくりを『自分事』として実施している姿を見て、本当にうれしく思いました」と木村さんは顔をほころばせる。

これからは、次なる担い手の育成がひとつの課題となるが、映画制作の活気を見れば、まちを愛する次世代が着々と育っている気もする。小さなまちのロールモデルとして、今後の展開に注目していきたい。

取材協力/高浜市役所こども未来部文化スポーツグループ・企画部総合政策グループ

2015年 02月08日 11時44分