庭を楽しもう

日本の伝統的庭園は、花が少なく質実だ日本の伝統的庭園は、花が少なく質実だ

メンテナンスなどを考えるとマンション住まいも悪くはないものだが、かつて「庭つき一戸建て」は、サラリーマンの夢だった。庭はエクステリアの一部ではあるが、庭木などの自然を取り入れているため、同じものを作ろうとしても、まったく同じものを作れない。千差万別なのだ。だからこそ魅力的ともいえるが、どのように設計すればいいか、なにを植えればいいかと考えだすと難しいもの。
そこで、造園のプロとして、大阪造園土木株式会社の阪口昌行代表にお話をうかがった。

「そもそも日本の庭園は、樹木や草などの植物を家に持ち込み、自然を再現したのが原点ではないでしょうか」
と、阪口氏。
確かに、日本式庭園は華美ではなく、侘びを感じる質実なものが多い。しかし、時代により庭の流行も代わる。花のあふれるイングリッシュガーデンを好む人も少なくないだろう。日本式庭園は石組の面白さがあるし、洋風庭園は花が美しい。一概にどんな庭がよいとは決められるものではなく、庭造りの際は迷うことが多いだろう。阪口氏によれば、どのような庭にするかを決める前に、どんな木を植えたいかを考えるとよいという。
「花の咲く木を主に植えたい方は洋風の庭にするとよいでしょう。たとえば、ハナミズキやヤマボウシなどですね。日本式の庭は、マツやマキ、クロガネモチなど、花の目立たない木を主役にすることが多いのです」
確かに、イングリッシュガーデンには花があふれているが、日本式庭園には常緑樹が多い。

育てやすい庭木とは

ナワシログミギルドエッジは、手入れがしやすく、生垣に向いているナワシログミギルドエッジは、手入れがしやすく、生垣に向いている

しかし、いくら好きな樹木を植えても、手入れが難しく、枯らしてしまうようでは困る。育てやすい庭木とはどのようなものだろう?
具体的には、あまり枝が伸びず、落ち葉も少なく、虫がつきにくい、水やりの頻度が少ない樹木は手入れの手間がかからない。たとえば、ナワシログミギルドエッジなどは、ほとんど水やりが必要なく、枝葉も伸びすぎないため剪定などの手入れは年に一度程度ですむうえ、虫も比較的つきにくく、落ち葉も少ないという。ただし、主役になる木ではなく生け垣などに向いているとか。
また北海道に分布するプンゲンストウヒは、ほとんど大きくならないため手入れはあまり必要ないが、北国の木なので暑さに弱く、高価なのが難点なのだそうだ。

常緑樹なら落ち葉が少なそうに思うが、実際は一年に一度葉っぱが落ちるという。ただ、ヒバやレイランドヒノキなどの針葉樹は、風にとばされないので掃除が楽だとか。

ただし、どんな樹木でも一定の頻度で剪定が必要だ。一度でも怠って木が育ちすぎてしまうと、根もグングンと伸びてしまうという。
「当然ではありますが、木の地上部分と根は、互いに影響しあって成長しています。根っこが広がると木全体が旺盛な生命力をもつので、枝がすぐに伸びるようになり、その後の手入れが大変になります。こまめに剪定をしていれば根っこも伸びず、幹や枝もそんなに大きくはなりません。ですからやはり、最低限の手入れは必要です。家はできたときがゴールですが、庭はできたときがスタート。育て上げる意識が重要なのです」

庭木を楽しむためのポイント

季節を告げる花には、ときめきがある季節を告げる花には、ときめきがある

花の咲く庭木を選ぶ場合、どのようなポイントを見ればよいだろうか。
阪口氏は、
「花を選ぶ際は、どんな色の花がほしいか、カタチは?などを考えると良いでしょう。また、キンモクセイなど香りの強い木を好む方もおられます。また、花の期間や時期もポイントでしょう。サルスベリなどは夏中楽しめますし、ウメなどの春一番に咲く花なら季節の移り変わりを知るときめきがあります」
と、教えてくれた。

庭に実のなる木があると楽しそうにも思うが、実は掃除が大変だそうだ。また、実のなる木は毛虫が発生しやすく、鳥が集まってきて鳴き声が騒がしいのも難点。糞害が発生する可能性もあるから、近所からのクレームにならないか、注意が必要だ。

ところで、実のなる木以外にも、虫のつきやすい木はあるのだろうか。
「一般的に、ハナミズキなど葉っぱが薄い木は虫が発生しやすい傾向にあります。また、サザンカやツバキにはチャドクガがつきやすいです。風通しをよくすると虫の発生が抑えられますが、増えてしまった場合は消毒するほかありません。ただ、生まれてすぐの毛虫や青虫は、一枚の葉っぱに密集しているので、早期発見できれば一枚か二枚の葉っぱをとるだけで対策できます。虫が発生すると、葉っぱがかじられたりフンが落ちたりして、慣れれば一目でわかりますから、毎日庭木を観察することが大事ではないでしょうか」
と、阪口氏。やはり、庭に対する愛情が良い庭を育てるのだろう。

庭の機能性とまとまり

落葉の手入れがしやすいレイランドヒノキ落葉の手入れがしやすいレイランドヒノキ

庭のタイプが決まれば、次にどのような機能を持たせたいか考えるのだという。
たとえば、玄関周りが外から丸見えならば、生け垣を作ったり、ネットを設置して緑のカーテンを作ったりする。西日が強いならば、乾燥に強い木を植えて日除けにするなど、個々の問題に対応する植物を配置していくのだ。

西日のあたる場所に日除けの木を植えるなら、乾燥に強いシラカシやアラカシなどのカシが適している。最近の流行はシマトネリコだそうだ。
反対に、北側の湿地には日陰に強い木、ナンテンやアジサイなどが良い。外から見えないよう目隠しにするなら、高く成長するソヨゴやナナミの木などがぴったりだという。

しかし、機能を考えるだけでは、雰囲気にまとまりがなくなりそうだ。ちぐはぐな庭にならないためにはどうすればよいのだろうか。
阪口氏は、
「テーマを考えて、庭の中にストーリーを作るとよいと思います。たとえば、山荘の雰囲気を愛する人のお庭なら、里山の雰囲気などを想像しながら木々を配置すると、調和がとれます」
とアドバイスしてくれた。

実際に植物を植える前には、土壌の整備も必要だ。
「よい庭を作るためには日当たりも大事ですが、一番重要なのは土です。建築工事のためには土壌を堅くしないといけません。ですから家を建てた後、土になんの手も加えずに木を植えても、決して育たないのです。まずは土を掘り起こして通気性をよくする。そして土壌改良材などで土質を改善しましょう」

粘土質の土でも改良材を使えば生育環境に適するようになるが、樹木を植える部分だけ掘り起すとポット状になってしまい、水の逃げ場所がない。根腐れさせないためには、パイプなどを設置して、水を流す工夫が必要になるそうだ。

日本人と庭

お話を聞かせてくださった、大阪造園土木株式会社の阪口昌行代表お話を聞かせてくださった、大阪造園土木株式会社の阪口昌行代表

庭木の魅力は、家を引き立たせるだけでなく、西日除けや目隠しなどで家の機能を補完し、さらに人と人とのつながりを結ぶ、よすがとなることだという。
「ブロック塀は家の中の様子をしっかり隠しますが、泥棒が入っても外からはわかりません。その点生垣なら中の気配がわかりますから、防犯の意味でも優れています。また、庭木の手入れを見れば家人の人となりが見えます。庭木の手入れなどを通じてご近所づきあいのきっかけにもなるでしょう」
と、阪口氏。

また、鬼門にはヒイラギやヒイラギナンテン、ナンテンなど、葉にトゲのある木や、縁起のよいとされる樹木を植え、家を守るのも日本的伝統の一つ。日本人と樹木の関わりは長く深いのだ。

大切に育てればさまざまな魅力を発揮する庭木。手入れは大変だが、庭があるのならまず1本、好みの樹木を植えてみるのはいかがだろう。

■参考リンク
大阪造園土木株式会社
http://www.osakazoen.co.jp/

2014年 11月12日 11時04分