家の断熱性能を上げれば年間約8万円の削減になることもある

家を購入する際に、その価格にこだわらない人は非常に少ないだろう。だが、住まいにかかるお金は購入時だけではない。住み続ければ税金やメンテナンス費用などがかかる。中でもウェイトが大きいもののひとつが冷暖房費だ。家庭内で消費されるエネルギーの約30%は冷暖房で消費されている。
そこで重要なのが家の断熱性能だ。国土交通省によると、もし、まったく断熱をしなかった場合の冷暖房費は年間約13万3000円。それが1999年省エネ基準の仕様にすれば約5万2000円となる。1年間で約8万1000円の削減できる。30年間住むとすれば約243万円の削減だ。
(※なお、昨年(2013年)住宅の省エネルギー基準が改正されたが、これは建物の断熱性は1999年の基準そのままで、プラスして冷暖房などのエネルギー消費と太陽光発電などの創エネを加味したものであり、上記計算には1999年省エネ基準の断熱性能を使用する)

さらに断熱性能が高い家に住めば以下のようなメリットがある。
(冷暖房費の削減に加えて)
・ 四季を問わず快適な室温ですごせる
・ 家全体の温度差が小さくなりヒートショックの予防となる
・ 結露しづらくなり、カビやダニの発生を抑える

省エネ基準ごとの断熱仕様の比較。断熱性能は断熱材の厚さを増やすほど上がり、冷暖房費は下がる(出典:住宅の省エネルギー基準早わかりガイド(一般社団法人 日本サステナブル建築協会))省エネ基準ごとの断熱仕様の比較。断熱性能は断熱材の厚さを増やすほど上がり、冷暖房費は下がる(出典:住宅の省エネルギー基準早わかりガイド(一般社団法人 日本サステナブル建築協会))

断熱材には様々な種類があり、それぞれ性能や特徴が異なる

このような家の断熱性能に大きく影響する部材のひとつが断熱材だ。断熱材は上の図のように使用する厚さが増えるほど断熱性も増す。
断熱材の種類は大きく「無機質繊維系」「自然素材系」「発泡プラスチック系」の3つに分けられる。それぞれの主な種類には以下のようなものがある。

●無機質繊維系
「グラスウール」
もっともポピュラーな断熱材。ガラスを繊維状にしたもので、比較的安価。結露対策のため壁に隙間なく充填し、防湿層を設けることが必要。
「ロックウール」
高炉スラグや玄武岩を高温で溶融させ、遠心力などで吹き飛ばして繊維状にしたもの。性能と価格はグラスウールと同レベル。

●自然素材系
「セルロースファイバー」
古新聞を原料とし、綿状にしたもの。エコ素材であると同時に高い断熱性能と防虫効果もある。ただし、施工(吹き込み)には高い技術が必要で、価格はグラスウールの3倍前後する。
「羊毛」
化学物質を含まない羊毛の断熱材。調湿機能があるので結露しにくく、防音性能も高い。価格はグラスウールの2倍前後。

●発泡プラスチック系
「押出法ポリスチレンフォーム」
ポリスチレン樹脂に炭化水素などの発泡剤を加えて押出成形する断熱材。断熱・耐水性に優れ、ボード状なので気密性の確保がしやすい。価格はグラスウールの2倍前後。
「フェノールフォーム」
フェノール樹脂と硬化剤、発泡剤などと一緒に加熱してつくられる発泡体。断熱性が高く、発泡に特定フロンガスを使用しないので環境にやさしく、経年変化も少ない。価格はグラスウールの3倍前後。

また、断熱材は下図のように種類やグレードによって性能が異なる。つまり同じ断熱性能の家でも、断熱性の高い種類を使えばより薄い壁になるので、その分部屋を広くすることができるのだ。

ある一定の断熱性能を求めた場合、断熱材の種類によって必要となる厚さは異なる。一般的にはグラスウールよりフェノールフォームの方が断熱性能は高い(フラット35の省エネルギー対策等級4技術基準を参考に作成)ある一定の断熱性能を求めた場合、断熱材の種類によって必要となる厚さは異なる。一般的にはグラスウールよりフェノールフォームの方が断熱性能は高い(フラット35の省エネルギー対策等級4技術基準を参考に作成)

施工方法には「充填断熱工法」と「外張り断熱工法」がある

断熱材は施工方法も複数ある。おもなものが「充填断熱工法」と「外張り断熱工法」だ。

●充填断熱工法
柱と柱の間に断熱材を充填する工法。もっとも一般的に採用されている。どのような間取り、デザインでも比較的柔軟に対応でき、採用可能な断熱材の種類も多い。一方で気密性の確保が難しく、防湿層を設けないと内部結露を起こしやすい。

●外張り断熱工法
柱の外側にボード状の断熱材を貼り付け、家全体を包む工法。気密性の確保がしやすいので、寒冷地や欧米で多く採用されている。断熱材の外側に外壁材を取り付けるため、外壁材をしっかり固定する下地を設置しないと、外壁材が落下する恐れがある。このようなことから対応できない工事会社が多い。

充填断熱工法(左)は、柱と柱の間に断熱材を充填する。外張り断熱工法(右)は、
柱の外側にボード状の断熱材を貼り付け、家全体を包む。どちらが優れているとは言い切れない(出典:住宅の省エネルギー基準早わかりガイド(一般社団法人 日本サステナブル建築協会))充填断熱工法(左)は、柱と柱の間に断熱材を充填する。外張り断熱工法(右)は、 柱の外側にボード状の断熱材を貼り付け、家全体を包む。どちらが優れているとは言い切れない(出典:住宅の省エネルギー基準早わかりガイド(一般社団法人 日本サステナブル建築協会))

費用対効果ではどの断熱材が優れているとは言い切れない

断熱材は種類に関しても、施工方法に関しても一長一短。費用対効果から見るとどれが優れているとは言い切れない。コストを重視すれば無機質繊維系になるし、化学物質を含まず、環境へのやさしさを選べば自然素材系、断熱性能を取れば発泡プラスチック系になりそうだ。
また、これらのどの特長を重視するかと同時に注意したいのが工事会社の得意不得意だ。前述のように充填断熱の場合は、しっかり隙間なく断熱材を設置するのにかなり丁寧な作業や防湿層の施工が必要だ。スピード重視では手薄になるかもしれない。また、外張り断熱の施工には専門性が問われる。いくら気に入った会社でも、慣れていなければ依頼すべきではないだろう。過去の施工実績をしっかり確認してどの会社に依頼するかを決めたい。

2014年 04月29日 10時31分