
不動産一括査定を使って媒介契約の質を高めたい。
今回はそんな悩みをもつ不動産会社の方に向けて、不動産一括査定の運用や活用方法について解説します。
一括査定を使った運用方法について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の対象となる人
- 媒介契約の質を高めたい
- 不動産一括査定を使っているが、なかなか効果が出ない人
- 不動産一括査定の導入を迷っている人
不動産売却の媒介契約の重要性

不動産売却の反響が欲しいと悩んでいる不動産会社は多いですが、そもそもなぜ不動産売却の媒介を契約することが重要なのでしょうか?
売却の媒介が重要な理由を不動産会社目線で見ると、売上の見込みができることと営業効率を高めることにつながるためです。
不動産売却の媒介契約をすることで、自社の媒介物件として広告に掲載することができます。
媒介契約後にできる広告活動は、例えば以下のようなものがあります。
- レインズへの掲載
- チラシ、ポスティング
- ポータルサイトへの掲載
- 現地看板の設置
これらの活動を行うことで、自社へ購入希望の問い合わせが増える可能性が高まります。
また、売却の媒介契約がない場合は、他社の物件を広告掲載の許可を取って広告活動をする流れになるため、売上の見込みが立てづらく営業効率も落ちてしまいます。
不動産一括査定の仕組みを理解して媒介契約につなげる

媒介契約を獲得するためには、不動産一括査定の利用が有効です。
不動産一括査定は「不動産売却をしたい人が売却価格を一括で見積もることができるサイト」です。他の広告に比べて特徴があるため、ここでは不動産一括査定の仕組みを解説していきます。
査定依頼は複数社に一括送信される
不動産売却を検討している方のほとんどは、初めて不動産の売却を経験するという人たちです。どのように不動産会社を探すべきか、本当に信頼できる不動産会社なのか、不安でいっぱいなはずです。実際、何社も個別に探すのは労力もかかりますし、その中から選別するのも簡単ではありません。
不動産一括査定は、その地域に実績のある複数の不動産会社に価格の見積もりを依頼することができるため、多くのユーザーに利用されています。
不動産一括査定は、売却を検討している人が対象不動産の情報を入力すると、複数の不動産会社に一括で送信されます。売主は、提示された価格や不動産会社とのやりとりを元に判断し、売却の意思決定を行っていきます。
今すぐ売りたい人ばかりではない
不動産一括査定を利用する売主の状況には、以下が考えられます。
- 相続した不動産が売れるかどうか知りたい
- とりあえず価格だけ知りたい
- 住み替えのために不動産を売りたい
このように、「売却検討者」といっても人により抱える課題や状況はさまざまです。
今すぐ売りたいといった問い合わせだけではなく、3ヵ月以内・半年以内・1年以上後など売主ごとに状況は異なるという点を理解しておくことも必要です。
机上査定と訪問査定がある
不動産一括査定には「机上査定」と「訪問査定」があります。
机上査定は、実際の物件の中を見ずに、過去の成約事例や現在の売り出し状況などをもとに価格を算出する方法です。価格がすぐにわかるというメリットはありますが、実際の物件の中や詳細調査をしているわけではないため、正確な価格査定ではありません。
一方、具体的な価格を知るためには訪問査定が必要です。訪問査定は実際に現地を訪問し、物件の中や売却理由、インフラ面など詳細を調査したうえで価格査定を算出します。調べた結果を「査定書」として売主に提出することになります。
一括査定には、サービスごとにそれぞれ特性がある
不動産一括査定サイトを提供する会社は10社以上あります。
IT企業がサービスを運営するケースが多いですが、大手不動産会社が共同で運営している一括査定サイトもあります。
それぞれ運営会社の特徴が異なりますので、会社の成り立ちやサービスの歴史、目指すべき方向性もさまざまです。不動産一括査定サイトとの相性もあるので、導入前に実際に話を聞いてみたり、調査しておいたりすることが必要です。
不動産一括査定を使って媒介契約の質を高める方法4選

ここまで、不動産一括査定の構造を解説しましたが、どのような手法で媒介契約の質を高めることができるのでしょうか?ここでは4つの方法を紹介します。
一次対応スピードをどこよりも速くする
一括査定サイトを利用する場合、一次対応を迅速に行うことが重要です。先述したように、不動産一括査定は複数社に見積もり依頼がいく仕組みとなっています。サービスや地域によりますが、ユーザーが同時に査定を依頼できる社数は多いと5社以上になります。
例えば5社以上の中から選ばれるためには、まず迅速に売主とコンタクトを取る必要があります。競争が激しい不動産一括査定では、1秒でも早く売主に電話することで連絡が取れる確率が上がります。
最初の反響があってから数時間後に連絡すると、「すでに他の不動産会社と約束をしたので」などと断られるケースもあります。まずは反響からの一次対応スピードを速めることが、媒介契約につながりやすくなります。
中長期で継続してコンタクトを取る
少し矛盾するようですが不動産一括査定は、中長期でのコンタクトも必要です。
何らかの事情により、初めて問い合わせがあったタイミングで、コンタクトできない場合もあります。今すぐ売りたい人ではない場合や初期対応で連絡がつかない場合、売却のタイミングが長期にわたる場合は、その場で無理に連絡を取ると売主との距離が空いてしまいます。
中長期で継続してコンタクトを取り、必要なタイミングが来たら依頼してもらう仕組みを作ることが大切です。例えば、定期的にメールで新規の成約事例を紹介したり、お客さまの役に立ちそうなコラムなどを送るなど継続的に連絡したほうが良いでしょう。
顧客のニーズや現状を知る
なぜ不動産売却の一括査定をするのか、どのような状態になれば売却したいとなるのか、売主のニーズをつかむことも大切です。今は売る気がないのか、または売らざるを得ない状況なのか、ヒアリングする必要があります。
不動産一括査定の反響があった時点では、最低限の情報しか分かりません。電話や訪問でニーズをつかむことは、その後の提案にも生きることが多いです。
売主の所有権の持分割合や、売却査定をした理由、売却のタイミングなど基本的な情報をヒアリングして、ニーズをつかむことが大切です。
訪問査定時の営業資料準備に注力する
訪問査定では「価格査定書」を売主に提案書として提出します。売主は、この査定書をもとに売却するかどうかを決めるため、非常に重要な資料となります。
不動産売却の価格の根拠や、過去の成約事例、売却する際のプランなど、自社に売却依頼をすればどのぐらいの期間で売却が見込めるかなど強みをアピールする機会です。
意思決定が先のタイミングになるとしても、資料として残り続けるため、売主が見返したときに「ここにお願いしたい!」となるような提案をすることが媒介契約の質を高めるカギになります。
不動産一括査定の媒介契約の質を高めるための競合との差別化方法

不動産一括査定の媒介契約の質を高めるうえでは「競合との差別化」を意識する必要があります。
前章で述べたことは、不動産一括査定を上手に活用するための基礎的な方法です。活動エリアや競合他社の動きにより、自社が取るべき戦略が異なる場合もあります。オリジナルの方法も組み合わせていくことで、より媒介契約の質を高めることができます。
ここでは不動産売却の媒介依頼をしてもらえるような方法を解説します。
競合他社の動きや自社の改善ポイントを把握する
他社と差別化を図るためにはまず現状把握が大切です。自社が活動するエリアでは、どのような不動産会社が競合となるのか、一括査定を使っているのかを知ることが第一歩です。
訪問査定時にどのような会社と比較しているのか、どのような提案があるのか、調査を積み重ねることで、競合の動きも見えてきます。
また、顧客との関係性にもよりますが、結果として媒介契約に至らなかった場合でもなぜ至らなかったのか、改善点を探ることで次回以降の査定にも生かすことができます。
不動産一括査定の営業担当者に情報を聞く
営業担当者に成功事例やマーケット情報を聞くことで、ヒントを得られることがあります。営業担当者は、自社以外の不動産会社とも日々交流があり、さまざまな会社の事例を知っています。
例えば、他社でうまく行っている方法や媒介契約の質を高めるためにできることなど、一括査定の担当者以外にも、導入しているサービスやITツールの営業担当者からヒアリングすることもおすすめです。
自社の課題や希望を共有することで、ヒントになるような事例を知り、自社の活動に生かせることもあります。よい情報を教えてもらえるように、普段から良好なパートナーとして関係構築をしておくことも心がけたい点です。
Webでの情報発信も組み合わせて人となりを伝える
不動産一括査定サイトでは、売主と必ず会えるとは限りません。そこで、自社サイトやSNSを通じて、普段から情報発信しておくことも一つの手段です。
例えば、ブログで成約事例を紹介したり、自身の不動産売却に対する考え方やお役立ち情報を発信したりすることで、売主に人となりを伝えることができます。自社サイトにスタッフの写真やプロフィールを充実させておくことも重要です。
検索したときに情報が少ないと、売主が媒介を任せたいかどうかの判断材料も少なくなります。訪問時に話ができる時間も限られているため、自身のことを知ってもらう一つの手段として有効です。
このほか、オリジナルのプロフィールシートを作ったり、ニュースレターを作ったりするなど、さまざまな工夫を凝らすことで、オリジナリティを出すことができます。
不動産一括査定の費用対効果を高める方法

ここまでは不動産一括査定の仕組みや活用方法について解説しました。最後に、不動産一括査定の費用対効果を高める方法を解説します。費用対効果を高めるためには、改善につなげていくための数字を記録していくことが大切です。
広告効果を測る指標「ROAS」を活用する
不動産一括査定の効果を図る一つの指標に「ROAS」があります。「Return On Advertising Spend」の略語で「広告の費用対効果」という意味です。
ROASの計算式は「広告からの売上 ÷ 広告費 × 100%」です。
例えば、不動産一括査定を2社使っているケースを考えます。
・A:月の売上が100万円、広告費が20万円
・B:月の売上が50万円、広告費が20万円
計算式に当てはめると、以下のようになります。
・A:「100万円 ÷ 20万円 × 100%」=500%
・B:「50万円 ÷ 20万円 × 100%」=250%
数値が高いほど費用対効果が良いことの表れで、この場合、Aの方が優れていることがわかります。
不動産一括査定は、反響元が明確なため、この指標が計りやすいです。どの不動産一括査定が良いのかを判断する指標にもなるでしょう。看板やチラシなどは効果測定が難しい場合もあります。しかし、一括査定サイトについては、常に効果測定しておき、半期ごとに広告の効果を見直すことが効果を高めるコツです。
他にも意識したい「訪問査定率」や「媒介獲得率」について
ROASは売上と広告費を指標として用いますが、これだけでは十分とは言えません。不動産一括査定では他にもみておきたい指標があります。
不動産一括査定の反響があってから、契約までの一連の流れを分解して指標を記録します。指標としては訪問査定率・媒介契約率・本契約率です。
それぞれの指標の説明は、以下のとおりです。
▶︎記録例
| ①反響数 | 不動産一括査定経由の反響数 |
| 【A】訪問査定率 | ②÷① |
| ②訪問査定数 | 訪問査定につながった数 |
| 【B】媒介契約率 | ③÷② |
| ③媒介契約数 | 媒介契約につながった数 |
| 【C】本契約率 | ④÷③ |
| ④契約数 | 契約につながった数 |
指標を記録していくことで、どこに原因があるのか、高められる数値は何かの測定ができます。
この考え方は不動産一括査定以外の広告にも応用できる考え方なので、ぜひ定期的に振り返り、改善のポイントを考えてみてください。
不動産一括査定を利用して質の高い媒介契約を契約しよう

以上、不動産一括査定を使って媒介契約の質を高める方法を解説しました。
不動産一括査定を上手に活用するためには、まず仕組みを知ることが大切です。「競合すること」が前提条件にあるため、売主は他の不動産会社と比較をしたうえで媒介契約を依頼する会社を決めます。
この前提が抜けてしまうと、期待した効果が得られなかったり、短期で実施してやめてしまったりしてしまいます。広告運用には長期的な目線も欠かせないため、ぜひ改善を重ねながら、媒介契約の質を高める方法として活用していただけると嬉しいです。