賃貸の初期費用の内訳を見てみると、「消臭代」や「24時間サポート代」といった項目が並んでいる。これらは全て支払う必要があるのだろうか。そして、誰が費用を加え、どの会社の収益になるのだろうか。
元不動産会社の仲介店舗勤務の筆者の経験を交え、賃貸の付帯サービスの仕組みや、不要なサービスの見分け方、契約前の確認方法などを解説していく。

見積書に並ぶ付帯費用は、全て支払う必要があるのか

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賃貸住宅の初期費用を見積もってもらうと、敷金・礼金や前家賃のほかに、消臭施工代や24時間サポート代といった項目が並ぶことがある。これらが合計額に含まれていると、借主は物件を借りるために欠かせない費用だと思い込みやすい。しかし、見積書に記載されているからといって、そのサービスへの加入が全て必須と決まるわけではない。

消臭施工代は、主に入居前の室内で消臭や除菌などの作業を行うサービスの料金である。一方、「24時間サポート」や「安心入居サポート」などは、水漏れや鍵の紛失といった入居後のトラブルに対し、夜間や休日も相談を受け付けて必要に応じて駆けつけるサービスだ。ただし、現地対応の範囲や部品代などの追加料金の有無は、商品によって異なる。

いずれも借主にとって役立つ場合はあるが、費用の位置づけは物件ごとに確認する必要がある。仲介会社が勧める「任意のサービス」であれば、不要だと伝えて見積書から外せる可能性が高い。一方、貸主や管理会社が加入を入居条件(必須)としている場合は、その条件を変更できるか個別に相談しなければならない。

つまり、「付帯費用は全て断れる」わけでも、「見積書に載っていれば必ず払わなければならない」わけでもなく、一律には判断できないのである。

付帯サービスで不動産会社とサービス提供会社はどう収益を得るのか

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頼んだ覚えのないサービスが見積書に加えられる背景には、不動産会社の収益構造がある。入居希望者が賃貸借契約の初期費用を検討するタイミングは、消臭施工や入居後サポートなどの「付帯サービス」をまとめて案内しやすいためだ。

こうした付帯サービスは、不動産会社が窓口となって販売し、実際の施工やトラブル対応は別の専門会社が担うという取引形態が一般的である。この場合、事前の取り決めに応じて、サービス提供会社から不動産会社へ紹介料や販売手数料が支払われる。この対価は俗に「キックバック」とも呼ばれる。ただし、全てのサービスで手数料が発生するわけではなく、金額や支払い条件は契約ごとに異なる。

例えば「24時間サポート」では、仲介会社がサービスを販売することで、一定の手数料収入を得られる仕組みであることを公表している提供会社もある。入居者が支払う料金の一部が仲介会社の収益となり、入居後の相談やトラブル対応の実務はサービス提供会社が引き受けるという構図だ。

一方で、「消臭代」などのように、仲介店舗が自ら施工を行うことで直接自社の売上にするケースもある。このように、見積書を見るだけでは、誰がサービスを提供し、どの会社にいくら利益が入るのかまでは分からない。もちろん、企業が正当なビジネスとして収益を得ること自体は問題ない。真に問題となるのは、借主が自由に選べるはずのオプションを必須だと誤認させたり、料金を受け取っていながら実際にはサービスを提供しなかったりする行為なのだ。

「管理会社に確認します」――仲介店舗で経験した消臭代の案内

かつて筆者が勤めていた仲介会社では、店舗の売上のために、除菌消臭代を初期費用の見積書に加えていた。この費用は入居希望者から不要と言われれば外せたのだが、その場ですぐに修正はせず、「管理会社に確認します」と伝えて時間を置いてから再提示していた。仲介会社が独自に乗せた費用であるにもかかわらず、さも管理会社の判断が必要であるかのように見せる対応だった。

もちろんこれは一例であり、本当に貸主や管理会社が入居条件としている物件もある。しかし、借主にはその区別がつきにくい。だからこそ「管理会社の指定」と言われた際には、それが本当に必須条件なのか、外しても契約できるのかを具体的に確認したい。

札幌の爆発事故で判明した除菌消臭サービスの未施工

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消臭施工は借主が現場に立ち会わないことが多く、実際に作業が行われたかを外から確認しにくいという側面がある。こうしたサービスの不透明さが浮き彫りになったのが、2018年12月に札幌市豊平区の仲介店舗で起きた爆発事故であった。

店舗の運営会社の親会社だったAPAMAN株式会社の公表資料によると、爆発の原因は、店長が店内で大量の除菌消臭スプレーを噴霧した後に湯沸かし器を作動させたことによるものとされている。そして事故後の調査の過程で、顧客から費用を受け取りながら実際には除菌消臭施工を行っていなかった「未施工」の存在が多数判明した。

同社が2019年4月に公表した調査結果では、事故の起きた平岸駅前店において、当該店長の在任期間(約2年間)に受け付けた施工申込み215件のうち、実に対象の6割を超える127件が未施工であった。同社はその後、対象の顧客へ返金対応を行ったと説明している。ただし、これはあくまで特定の店舗で確認された不正であり、賃貸業界全体の施工状況を示すものではない。また、爆発事故の直接の原因と、顧客への施工未実施という不祥事は、切り離して捉える必要がある。

こうした実態を踏まえ、借主が除菌消臭施工を希望する際には、料金の確認に留まらず、作業を担う会社や実施予定日、施工範囲、そして完了をどのように確かめられるかを事前に店側へ確認しておきたい。完了報告書などの発行義務について確かめることも有効だが、書類の有無だけで施工の有無を断定することは難しいため、事前の具体的な確認こそが重要となる。

不要な付帯費用を見分け、契約前にどう対応するか

賃貸契約の見積書に記載されている消臭代や24時間サポート代は、必ずしも全てが必須の費用とは限らない。まずはサービス内容を一つずつ確認し、不要だと感じたものは契約を結ぶ前に「このサービスは希望しないため、費用を外してほしい」と明確に伝えるべきだ。その際、言った言わないのトラブルを防ぐためにやり取りはメールなどの履歴に残し、削除に応じてもらえた場合は修正後の見積書を受け取っておきたい。

交渉を進める上では、その費用を誰が上乗せしているのかを見極める必要がある。仲介会社が独自に付加したサービスであれば、その会社に対して直接削除を相談する。交渉が難航する場合や、そもそも交渉自体に苦手意識があるなら、同じ物件を扱う別の仲介会社に見積もりを依頼する方法もある。ただし、費用の確認や交渉に時間をかけている間に、ほかの入居希望者との契約が進む可能性もあるため、仲介会社を変更する際は現在の申込みの扱いと募集状況を確認し、費用の削減だけでなく、希望する物件を借りる機会を失うリスクも踏まえて判断すべきである。

一方、貸主や管理会社によって定められた条件である場合は、仲介会社を通じて変更が可能か打診することになる。ただし、このケースでは窓口となる仲介会社を変えても条件自体が変わらないことが多い。貸主側が消臭施工などを契約の絶対条件として掲げており、交渉を重ねても応じない場合、その物件に住むためには費用負担を受け入れるしかない。契約の本質は双方の合意であるため、借主の都合だけで一方的に条件を外すことは不可能だからである。

しかし、納得のいかない条件で無理に契約を結ぶ義務はどこにもない。費用に見合ったサービス内容であると納得して契約に踏み切るか、あるいは条件に妥協せず別の物件を探すかは、消費者が自由に決めるべきことである。もし提示された金額があまりにも高額であったり、不動産会社側の説明に不信感を抱いたりした場合は、契約を急がずに一度立ち止まり、消費生活センターなどの専門機関に相談することを推奨する。

賃貸契約前に確認すべき付帯サービスに関するチェックリスト

□見積書の項目を1つずつチェックする
敷金・礼金などの必須費用以外に、「消臭施工代」や「24時間サポート代」などの付帯費用が入っているか確認する。

□その費用が「必須」か「任意」かを確認する
仲介会社が独自に勧める任意のサービスか、貸主・管理会社が定めた入居の絶対条件かを確認する。

□不要なサービスは契約前に明確に断る
任意のオプションであれば「希望しないため外してほしい」と伝える。言った・言わないのトラブルを防ぐため、やり取りはメール等で履歴に残す。

□施工を依頼する場合は詳細を事前確認する
消臭施工などを依頼して料金を支払う場合は、作業会社、実施予定日、施工範囲、完了の確認方法などを契約前に店側に確かめる。

□違和感があれば他社への相談や相見積もりを検討する
説明に不信感を抱いたり高額すぎたりする場合は、無理に契約せず、他社へ見積もりを依頼するか、消費生活センターなどの専門機関へ相談する。