コロナが与えた影響として、若い女性の仕事や夢への影響が大きい
前回からお伝えしている「コロナ後の意識と行動の変化」調査。
この調査は、株式会社カルチャースタディーズ研究所では三菱総合研究所が毎年行っている3万人調査への追加調査として2022年1月に行った(調査主体:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム。1都3県18〜54歳男女2,000人対象)に行ったものである。
前回見たように、コロナ後の意識と行動の変化は男性より女性に多く見られるわけであるが、さらに女性を年齢別に見ると、若い女性のほうがより影響が大きいことがわかる。
年齢を3段階に分けて集計すると、18〜34歳の女性では
・毎日通勤するのは嫌だという気持ちが増した 23.2%(正規雇用では33.9%)
・仕事と生活のバランスをうまく取りたいという気持ちが増した 20.4%(正規雇用では26.1%)
・自分の将来やキャリアについて考えるようになった 15.8%(正規雇用では21.2%)
・もっと給料の高い仕事に就きたいと思うようになった 11.9%
・転職を考えるようになった 9.4%(正規雇用では17.6%)
・自分の夢や目標が、実現から遠のいた 8.0%(在学中のみでは14.6%)
・副業を始めた・増やした 7.1%
・仕事がなくなったり、転職をしたりした 6.7%
など、仕事に関する選択肢で回答率が有意に高いものが多い。
女性の就業先は飲食、小売り、ホテル、美容、福祉など対人的なサービス業が多い。そのためコロナ禍の影響がてきめんに表れたのである。自分の夢や目標が、実現から遠のいた女性が8.0%(在学中のみでは14.6%)という数字は重いといわねばならない。
コロナが生活・意識に与えた影響が大きいのは、23区内より郊外
次にコロナ後の意識と行動の変化を居住地別に集計してみる。
変化が大きいのは通勤時間が長い郊外の住民である。東京23区の住民は毎日通勤するのは嫌だという気持ちが増したという回答が20%以上あるほかは、すべて20%未満の回答しかなかった。
通勤時間が短いはずの23区の住民で毎日通勤するのが嫌だという回答が多いのはちょっと不思議であるが、23区内だから始発に乗って座って通勤できない、一番混雑率の高いときに電車に乗る、23区内はコロナ感染者が多いのに通勤はしたくないという意識の表れであろう。
その仮説がおそらく正しいであろうことは、川崎市の住民で毎日通勤するのが嫌だという回答が25.3%と多いことからも裏付けられる。
各選択肢で20%以上回答した選択肢の数を見ると、横浜市北部(西区、青葉区、港北区、都筑区、中区など)とさいたま市の住民が最も多い。東京都心部に通勤する人の割合が高い郊外住宅地と思われる地域で、コロナによる意識と行動の変化が大きいのはうなずける。
横浜市北部住民は、コロナの仕事への影響を感じた
横浜市北部で20%以上の回答があった選択肢は、以下である。
・のんびりマイペースで生きることが大事だという気持ちが増した
・スーパーでの買い物や買いだめが増えた
・自分の好きなことをたくさんして人生を楽しむことが大事だという気持ちが増した
・毎日通勤するのは嫌だという気持ちが増した
・テレビゲームをしたり映画・アニメを見たりマンガを読む時間が増えた
・人と会うことは楽しいことだという気持ちが増した
・ウォーキングをすることが増えた
・仕事と生活のバランスをうまく取りたいという気持ちが増した
20%未満の選択肢でも、横浜市北部住民は以下の回答が他の地域よりも多い。
・ひとりひとりが自分の責任で生活や経済の安定を目指すことが大事だ
・仕事での不安やストレスを感じるようになった
・困難な時には、政府や行政による援助がもっと増えるべきだ
・地震・台風・事故などへの災害・災難への対応を日頃からしっかりしておきたい
・緊急事態では、政府や行政による権限がもっと強くあるべきだ
仕事の不安やストレスと、災害・災難への対応、政府や行政による権限は、さいたま市でも多いが、横浜市北部の住民はより強く仕事中心の価値観で生きている人が多く、そのため自分自身も行政も経済の安定を目指すべきだと考える意識が高いのだろうと思われる。
さいたま市住民は家族やシンプルでベーシックな生活を重視するようになった
さいたま市で20%以上あった選択肢も横浜市北部とほぼ同様だが、さいたま市で回答率が多く、横浜市北部にない選択肢は以下である。
・お金をあまり使わない暮らしをしたいという気持ちが増した
・家族関係・夫婦関係が大事だという気持ちが増した
・料理をする時間や料理の種類が増えた
・自分の将来やキャリアについて考えるようになった
さいたま市住民のほうが家族や生活に関する選択肢が追加されており、それぞれの選択肢の回答率の横浜市北部との差は3〜9ポイントほどある。
横浜市北部とさいたま市に共通して回答率の高い選択肢である「人と会うことは楽しいことだという気持ちが増した」も、さいたま市住民のほうが3ポイント以上多い。さいたま市住民のほうが、よりシンプルでベーシックな生活を求めているのかもしれない。
さいたま市住民では「郊外がいいね」という気持ちも増えた
また横浜市北部住民は、以下の回答も多く、やはりコロナの影響を仕事中心で感じている人が多いものと思われる。
・仕事へのモチベーションが落ちた
・静かな環境に住みたい
・職場でのコミュニケーションがとりづらくなった
・今より1部屋以上多い家に住みたい
・職場での人間関係が希薄になった
対して、さいたま市住民は
・人と会うことでヒント・アイデアが得られることが大事だという気持ちが増した
・ウーバー・出前などによる食事の宅配が増えた
・惣菜店・デリカフェが家の近所に欲しいと思うようになった
・かかりつけ医が家の近所に欲しいと思うようになった
・23区内より郊外がいいなという気持ちが増した
が他の地域より多い。
横浜市北部と比べると、宅配の増加と「郊外がいいな」の多さが目立つ。対して川崎市住民は「郊外がいいな」は2.4%しかいない。
23区に隣接する川崎市の住民は、郊外がよいと思って川崎市に住むというより、23区にある勤務先に近いから住んでいる人が多いのかもしれない。
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