コロナ禍だからこそ見直したい、住みたい街・働きやすい場所
住まい選びの基準はなんだろうか。コロナ流行以前は、通勤時間や都心へのアクセスの良さを重視する人も多かっただろう。しかしコロナ禍でテレワークも浸透し、都心部に住まなくとも仕事を進められると感じている人も少なくない。
「地方移住」特集もさまざまなメディアで目にする。地方移住には豊かな自然や物価の安さ、3密回避など多くのメリットがある一方で、もちろんデメリットもある。テレワークとはいえ、時には都心への移動も必要であり、買い物などの不便さを感じることもあるだろう。
またどこででも仕事ができるテレワークだが、「集中できない」「オンとオフが切り替えづらい」などという声も聞こえる。
犬山市協働プラザ「わんまるーむ」は、犬山駅から徒歩5分の場所に位置する「犬山市民交流センター」の1階にある。館内には観光協会、社会福祉協議会、国際交流協会、フィットネスクラブ、パソコン教室などがあり、一日中多くの世代の人々が集う今回取材に訪れた愛知県犬山市は、名鉄「名古屋」駅まで特急で直通約25分、車でも高速道路を利用すれば名古屋市内まで30分程度という距離。
豊かな緑と滔々(とうとう)と流れる木曽川に育まれた風光明媚な犬山市は、地方移住というほどではないが、都心との”程よい距離感”と”程よい田舎さ”が魅力の街だ。実際に街の雰囲気や暮らしやすさに惹かれ、移住してきた人も多いという。
そんな犬山市に2020年4月にオープンしたのが犬山市協働プラザ「わんまるーむ」。人が集いコミュニケーションが生まれる場所だ。さらに同施設には、快適に仕事ができるワーキングスペースも備わっている。さまざまな可能性を秘めた「犬山市協働プラザ」を取材した。
「人×社会×アイデア×交流」が生まれる、まちづくりの拠点施設
「協働」とは、個人をはじめ、市民団体、NPO、ボランティア団体などの複数の主体が、共通の目的を達成するために力を合わせて活動すること。「犬山市協働プラザ」はまさしく「協働」を生み出す拠点となっているのだ。
同施設には”人”だけでなく、アイデアやスキル、物、利用可能スペース、情報などが集まる。また「こんなことをやってみたい」「○○ができる人はいないか」「これを貸してほしい」「何から始めたらよいのかわからない」など、情報を求めやってくる人も多いそう。市民のみならず、犬山市とコラボレーションしたいという市外・県外からの問合せもあるというから驚きだ。
そんな人や物、場所などをマッチングさせるのが、協働プラザの大きな役割である。
犬山市協働プラザの運営を行うのは、いぬやま協働まちづくりコンソーシアム「ジョインいぬやま」。5つの団体からなるコンソーシアム=共同事業体だ。ジョインいぬやまのメンバーは、長年市民活動を行ってきた。その経験や人脈など、あらゆる角度からアドバイスをしてくれるのは非常に心強い。何よりメンバーの皆さんの相談しやすい温かでアットホームな雰囲気は安心感がある。
今までにも多くのコラボレーションが実現
「犬山市協働プラザ」では、多くのマッチングが行われている。一例を紹介しよう。
市内の明喜左官店が開発した、固形燃料でご飯が炊ける「卓上かまど」。従来の製品は鉄鍋だが、犬山焼の窯元・尾関作十郎陶房に「土鍋」の製作をお願いし実現。さらにこの卓上かまどと犬山焼の土鍋で、精米にもこだわった地元のおいしいお米「いまいまい」を炊く。
自慢の逸品がマッチングしたのも「協働プラザ」での交流がきっかけなのだ。
犬山を舞台に何かを生み出そうと語らう場「フューチャーセッション」
協働プラザができる前から開催されていたのが「犬山市フューチャーセッション」。今年度、シーズン5(5年目)を迎える。
フューチャーセッションとは、「犬山で何かをしたい」という思いのある若者たちが集まり、自由に語り合い、対話から価値を生み出す創造的な語り場だ。漠然とした思いも、語り合うことでどんどん形になっていくのだそう。
このフューチャーセッションから誕生したのが「犬山マルシェ」だ。地場野菜や飲食、クラフト、アート、音楽など、自慢の品が集結する人気イベントに成長した。
今後、フューチャーセッションから何が生まれるのか期待したい。
交流スペースは個人のワークスペースとしても利用可能
ここまで「犬山市協働プラザ」のソフト面を紹介してきたが、ここからはハード面を紹介したい。
「犬山市協働プラザ」は、とにかく居心地がいい。スタッフの皆さんのにこやかな対応はもちろん、広々と明るい「交流スペース」はフリーWi-Fiも完備され飲食もOKなのだ。(現在は新型コロナ感染拡大防止のため、水分補給程度のみ可)
現在はコロナ対策のため机や椅子を減らし、受付にて連絡先と健康状態を記入する。コロナ後は特に受付する必要もなく、自由に利用できるようになる。
同施設ができる前、市民団体は市役所や喫茶店などに集まりミーティングをしていたそうだが、少人数しか集まれなかったりWi-Fi環境が整っていなかったりと不便があった。その悩みも解消され、今では積極的に同施設が利用されている。
団体のミーティングだけでなく個人での利用も可能。フリーWi-Fiも完備されているので、テレワークをする人も多いのだとか。
さらに専用ロッカーを月極めで借りることも可能(100~200円/月)。資料や備品などを置いておくこともできる。何とも痒い所に手が届く対応だ。(現在は新型コロナ感染拡大防止のため利用不可)
ほかにもホワイトボードやプロジェクター、印刷機、紙折り機、電動ホチキスなどの館内貸し出しもあり、資料作成などの作業も可能(一部有料)。
これほどまでに充実した設備が、基本的に無料で利用できる。
取材をしていて強く感じたのは、ここに集まる人たちの根底にある「犬山が好きだ」という思いだ。これほどまでに自分の住む街に誇りが持てることが、正直うらやましいとさえ感じた。
好きな街で暮らし、快適に仕事をする。withコロナ/afterコロナでは、当たり前の選択になるのかもしれない。
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