この立地でこの広さ、設備、賃料という驚き
柏市にある東武野田線(東武アーバンパークライン)豊四季駅と聞いても場所がぱっと思い浮かぶ人は少ないだろう。常磐線と交差する柏駅とつくばエクスプレスと交差する流山おおたかの森駅の間にあり、隣駅がそれぞれ駅前に大型商業施設がある繁華な場所であることを考えると、静かすぎるほど静かな駅。それが豊四季駅である。
そこから歩いて13分。初めての人なら15分はかかるかもしれない。駅から近いとは言えない立地で、周辺にはごく一般的な賃貸住宅が点在する。Gargantua(ガルガンチュア)もぱっと見ただけなら違いが分からないかもしれない。だが、ゲートを入り、全9戸に対し、14台分のスペースのある広い駐車場を横切って建物に近づいていくと、違いが見えてくる。この地にあるとは思えないほど、というと怒られるかもしれないが、高品質でこだわりのある賃貸住宅なのである。
外から見ただけで明らかに違うと分かるのは玄関。2階建ての建物は細長い敷地の、駐車場の奥に建てられており、敷地の両側に設けられた通路から各戸に入る。玄関は通路沿いにあるのだが、一般の一戸建てに比べても2倍以上のゆとりがあり、竣工して2ヶ月しか経っていないというのに見事な植栽が迎えてくれるのである。見ると住戸の外に設置されたガスメーターも本体はベージュだが、それ以外は外装と色を合わせて黒く仕上げられている。
賃料と広さ、設備を聞くとびっくりする。広さは80m2台から110m2前後までと一般的な賃貸としては破格。賃料は16万5,000円からで最高額は23万5,000円(共益費8,000円、全戸同じ)。そして圧巻は各戸の1階部分にそれぞれ異なる専用の設備が導入されているという点である。
数百万円する設備を自分のものとして使える贅沢
そのなかでも最も希少なのはゴルフシミュレーターのある、専有面積80.62m2、賃料23万5,000円の2LDK、Gタイプだろう。これまでにも共用施設としてゴルフ練習スペース、シミュレーターを導入した物件はあった。だが、ガルガンチュアでは専用部分にプロ仕様の製品が設置されている。自分で購入するとしたら数百万円はするだろう設備がわが家にあり、24時間、365日使い放題なのである。
この設備を入れるためには天井高は2.8mを確保する必要があり、お金があるからといっても建物から考えなければ導入はできない。そのためもあり、他室にボルダリングウォールを施工した会社の人がこの住戸の賃料を聞き、「23万5,000円は安すぎます!」と驚いたとか。賃料だけで見ると高いように思えるかもしれないが、設置されている設備で考えると安い。ガルガンチュアはそんな物件なのである。
ちなみにこの部屋はすでに入居者がいる。ツアープロを目指すゴルフのレッスンプロの方が借りたそうで、自分の練習はもちろん、教えている生徒たちのレッスンでも利用できるというのが決め手。ガルガンチュアではこの部屋に限らず、防音室、フィットネスルームのついた住まいなど教室として使える住戸があり、一日一組程度の利用であれば、教室使用も可。部屋を利用して稼ぐこともできるのである。
2階までのボルタリングウォールのある部屋には安全に配慮した契約事項が
では、ゴルフシミュレーター以外にどんな部屋があるかを見ていこう。まず、ゴルフ同様スポーツの要素がある部屋としてはボルダリングウォール(以下ウォール)のある部屋がある。この住戸では1階に吹き抜けのある約22畳のリビングがあり、ウォールは吹き抜けに面した2階までの高さがある壁に設置されている。
玄関からリビングに入ると中央に階段があり、その左手にウォールがあるのだが、階段がスケルトンになっているため、入った瞬間のインパクトは大。そのためか、入居を決めた人はボルダリングが趣味というわけではないが、空間が気に入ったからとのこと。
ウォールがあるだけではない。ウォールの下には落下した体を受け止めるマットが用意されており、契約書には専用のシューズを履いて利用すること、年に1回行う点検に協力することなど安全確保のためのルールが盛り込まれている。これはオーナーである奥山羊太氏がウォールを導入するなら自分でもやってみようとボルダリングを体験、そこで得た学びを反映させたもの。奥山氏はせっかく各室それぞれに異なる設備を入れるなら、喜ばれる設備であることはもちろん、安全にも配慮しようと自ら動いて経験したり、営業したり。オーナーのこだわりのみならず、実行力が反映されているのである。
フィットネスルームや車、バイク、自転車好き向けの部屋も
もうひとつのスポーツ系は、前述のフィットネスルームのある住まい。玄関ホールから入れる10.4畳の、壁の1面に鏡が張られた部屋がフィットネススペースでマシンを置いてもいいように床には補強が入っている。床材は汗がしたたり落ちても手入れがしやすいクッションフロアである。天井のダウンライトはスピーカーとしても使え、携帯からブルートゥースを利用して音楽を流せばダンススタジオなどとしても。
フィットネスルームに隣接して広いウォークインクロゼットが用意されているが、ここは更衣室としても利用が可能。トイレやシャワーも1階に設置されているので、それらも教室として使う時には重宝する。
車やバイク、自転車好きに配慮した住戸もある。電動リモコンシャッターを備え、1階に電気自動車用のコンセント、洗車用の水栓を備えたガレージのある住まい(2戸)、大事な自転車を駐輪場ではなく家の中に置きたいという人用に土間スペースのある住まい(1戸)だ。後者は1階奥に9畳ほどのバイシクルガレージとして使える9畳の土間があるのだが、入居したのは結婚式で使う各種のデコレーションを作る仕事をしている人で、土間は作業場として使われる予定だという。空間があれば活用は人それぞれにできるわけだ。
防音、陶芸に大型書棚、部屋ごとにワクワク
体を動かす以外の趣味を意識した部屋としては防音室のある住まい、陶芸を意識したワークショップのある住まい、そして大型壁面書棚のある住まいがある。まず、防音室は玄関わきの12畳となっており、ドアも窓も2重。グランドピアノを設置できるように床は補強されており、ドラム、声楽を除く楽器演奏が可能。ただし、周囲への配慮から利用は夜9時まで。この部屋では実際に頭が痛くなるほどの大音量で音を鳴らし、それを壁を接する隣の部屋で聞くという体験をさせていただいたが、意識しなければほぼ聞こえない状態。
ドア、壁、窓が防音室仕様になっていることに加え、隣家との間に収納、水回りなどを挟んで配していることもポイントで、これは他の住戸も同じ。それぞれに設備が違うだけではなく、間取りもそれぞれ異なるのだが、意識して音が伝わらないよう、独立性を高めるように間取りが考えられているのである。
各戸考えられているといえば、住戸内のアクセントクロスをはじめとする壁材、床材もそれぞれに色、柄、素材が異なっている。これは住む人をイメージ、それに合わせて選ばれているわけで、ここまで細部に目を向けた作りはそれだけでも珍しいはずだ。
続いては陶芸を意識したワークショップのある部屋。ここには専用庭に面した細長い8.5畳の土間が用意されており、電気窯利用が可能な50Aの電源、作った作品を乾かすための扉あり、なしの2種類の室(むろ)も用意されている。
耐震その他、建物の性能もトップレベル
個人的に一番気になったのは大型壁面書棚のある住まい。当初は2階までの吹き抜けを作り、その壁一面を書棚にする構想だったそうだが、地震時の危険を考え、1階リビングの階段脇と2階の吹き抜けに面した廊下一面の書棚となった。それでも圧倒的な収納量で、まるで図書館かブックカフェ。2階の廊下には書斎や仕事部屋として使えるようなカウンターが設置されており、こんな開放的な空間内でのテレワークなら作業がはかどりそうである。吹き抜けがあることに配慮し、他の部屋にはない大容量のエアコンも設置されている。
ここまで各住戸の設備を見てきたが、建物や全戸に共通する設備も圧倒的である。賃貸住宅では珍しいと思うが、建物は耐震等級で最大の3を取得しており、断熱その他性能表示制度にあるものについてはバリアフリーを除き、トップレベル。土間などを作るとどうしても段差が生まれるため、バリアフリーのみはクリアできなかったのである。
収納も全戸豊富に用意されており、本気で歩き回れるサイズのウォークインクロゼットがある部屋なども。ひとつ、面白いアイデアと思ったのは壁面書棚のある住まいにある玄関とキッチンの両側から開けられる収納。玄関側から開けて買ってきたものを置けば、荷物を持って家の中を回り込まなくて済むようになっているのである。それ以外でも壁面の凹んだ部分を利用して棚やデスクとして使えるようにされているなど、どの住戸にも工夫がぎっしり。使い勝手を配慮し、キッチン内に3口のコンセントが設置されている点も羨ましく思った。
自ら動いて物件の差別化を図るオーナーがいたから生まれた物件
ところで、なぜ、このような個性的な賃貸住宅が生まれたのか。オーナーの奥山氏は3年前に義父から賃貸経営を引き継いだ2代目。義父は周囲に言われるままに農地にアパートを建設してはきたものの、経営にはあまり興味がなかったそうで、特に工夫、努力はしてこなかった。だが、それを引き継いだ奥山氏は人口の減少する時代に選ばれ続けるためには物件の差別化が必要と既存の2DKを広いワンルームに改修、家賃アップを図るなど工夫を積み重ねてきた。
ガルガンチュアはその奥山氏が初めて建設した物件で、当初は一戸建て賃貸あるいはガレージ付き賃貸を検討していたという。賃料は最初から20万円前後を考えて計画をした。というのは隣駅、流山おおたかの森では100m2以上の一戸建て賃貸、分譲賃貸がその賃料ですぐに埋まる状況。広さに加え、他にない物件を作ればニーズはあると考えたのである。
だが、全戸をガレージ賃貸にするのはつまらない。一戸建て賃貸ではセキュリティ強化に費用がかかる上に、その効果が今ひとつと思えた。そこでガレージ賃貸を中心に9社に見積もりを取ったところ、積水ハウスだけが1室、防音室を作ったらどうかという提案を出してきた。それも面白いと思ったが、どうせなら全室を変えたらどうかと思いつき、それを実践したのがガルガンチュアである。趣味を中心にした部屋作りになったのは本人がいろいろなことにトライしてみたい人間だからだという。
その全方位への好奇心は入居者にも向けられており、管理会社は入っているにも関わらず、入居者とのやりとりは奥山氏本人が対応する。昨夜も夜11時くらいにショートメールが入り、間違えて火災報知器を作動させてしまったという入居者に対応していたと笑う奥山氏は「どうせ近くに住んでいるから」と設備故障には自分ですぐ出向く。物件紹介の動画も自分で作ってアップ、ガルガンチュアでも部屋ごとの紹介カードは自作だ。こんなスーパーオーナーだから作りえた物件ともいえるわけで、不動産には所有者の個性が出るものだなあと思ったものである。
ガルガンチュア(奥宮園ホームぺージ)
https://www.okumiyaen.com/home/gargantua/
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