雇用促進住宅を取得、全国で10万戸超の物件を保有
引越しをしたいと思いつつも、一般的に家賃の4~5ヶ月分はかかるといわれる初期費用の支払いがネックで先送りにしている人もいることだろう。
ビレッジハウス・マネジメント株式会社は、敷金・礼金・仲介手数料・更新料無料。かつ、フリーレント1ヶ月、引越しサポートとして最大3万円をキャッシュバックし、初期費用を抑えて住み替えのハードルを下げているのが特徴だ。(フリーレント1ヶ月と引越しサポートは一部物件で対象外)
最寄駅から距離があるなど立地面で不便さを感じそうな物件も一部あるものの、主に家賃3万円台からという周辺相場と比較して安い賃料で提供。入居者負担となることが多い鍵交換代もかからない。
ビレッジハウスは、2017年に急激に保有物件数を伸ばし、日本有数の賃貸物件管理戸数を有する会社となった。2017年に西日本、東日本の雇用促進住宅を一括取得、1,064棟、10万5,147戸の賃貸物件を運営・管理している。雇用促進住宅は勤労者向けの公共の賃貸住宅で、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が管理しているが、2021年度までに民間企業などへ売却・廃止されることが決まっている。
ビレッジハウスの物件は主に築40年以上の築年数の経過した物件が多いものの、入居率は物件を取得した当初の33%から61%へ大幅に上昇しているという。
和室やバランス釜などの旧設備をリノベーション
「雇用促進住宅は2007年ごろには入居募集をしていなかったこともあり、なかには空き室になってから長い時間が経過していたものがありましたが、建物の躯体はしっかりしていました。現代の入居者ニーズに合うよう、バランス釜は給湯器・シャワー付きに変更し、和室はクッションフロアにするなどリノベーションで古い設備を更新しています」と話すのは、共同最高経営責任者である岩元龍彦氏。周辺の賃貸市場を鑑みて物件によっては温水洗浄便座や洗面化粧台なども設置。取得した物件は順次リノベーションし提供しているという。
「室内に洗濯機置き場がない物件も多く、できるだけ室内に洗濯機置き場を設置するよう改修しています。島根県江津市の『ビレッジハウス神主』は冬場には雪が降る寒冷地のため、室内に洗濯機置き場を設置したかったのですが間取り上それが実施できず、1階の1住戸をランドリールームに改装しました。この物件では洗濯機の利用は無料で提供しており、入居者の方からは『入居者同士でコミュニケーションがとれる場になっている』と好評です」と、岩元氏。
需要に合わせた柔軟なリノベーション、設備追加も
前述のバランス釜などの古い設備の更新がビレッジハウスで行われている一般的なリノベーションだが、昨今増えている外国人入居者や、学生などの単身者に向けて柔軟に間取り変更も行っている。
「山口県の『ビレッジハウス小野田』では、周辺でのファミリー向け物件の需要が少ないことと、大学の新学部創設によって学生向けニーズがあったので、もともと2戸を1戸にニコイチ改装されていた物件をさらにシングル向け1Rにリノベーションしました。三重県の『ビレッジハウス高花平』では外国人の方の需要の高まりを受けてファミリー向けの物件を2戸・1Kに分けるなど対応しています」と、岩元氏。
こういった周辺ニーズを考察したうえでのリノベーションや初期費用無料が入居率の改善に奏効したことは考えられるが、特にビレッジハウスが力を入れているのが外国人の入居サポートだ。
「雇用促進住宅を一括取得した当時から、公営住宅は減少傾向にありました。今後も単身世帯、高齢者は増えることが予想されており、外国人入居の需要も増えるはずだという見通しを持っていました。ビレッジハウスは当初から外国籍の方を含む幅広い入居者の方に物件を提供しています」と、岩元氏は話す。
ビレッジハウスは、住宅セーフティネットへの物件登録を各地で進めている。高齢者や障がい者、子育て世帯など、住宅確保に配慮が必要な人がいるものの、今後も公営住宅は増加が見込めない。民間企業の管理する空き家や空き物件を活用した新たな住宅セーフティネット制度が2017年10月にはじまっている。住宅確保要配慮者の入居を拒まない物件としてセーフティネット住宅に登録されている物件戸数は2020年2月時点で20,571戸。このうち約6割がビレッジハウスにより登録されたものだ。
外国人向け対応スタッフを採用、高齢者向け見守りサービスも導入検討中
当初から今後の需要増加を見越していたこともあり、ビレッジハウスの外国人向けサポートは着々と進んでいる。
「東海地方ではブラジル人入居者の方が多く、ブラジルの公用語であるポルトガル語対応スタッフを11名採用、福岡の九州支社には英語対応スタッフが4名、それぞれ入居問合せや入居後のサポート対応をしています」と、岩元氏。日本語が読めない人にも安心して契約してもらえるようにと、ポルトガル語や中国語などの言語に対応した賃貸借契約の書類を用意。ゴミの出し方など生活に関するルールをまとめた5ヶ国語対応のハンドブックを配布したり、ゴミ出しや居住時に気を付けることなどを記した看板を設置したりと、生活マナーを丁寧に説明している。
さまざまな国籍の居住者が増えればその対応にかかるコストが増してしまいそうだが、「外国人の方向けの対応チームは名古屋や福岡に集約し、入居前の相談だけでなく契約事務など複数の業務を兼務することで効率化をはかっています。現在の外国人の入居希望者は技能実習生を除いても2割ほどと割合が多いのですが、最近ではベトナムやフィリピンの方も増えてきており、今後は製造業だけでなく幅広い業種や国籍の方が増えていくと思います。これまで構築してきた対応のノウハウを他言語でも展開していきます」と、岩元氏。
また、高齢者向けの対応についてもビレッジハウスは視野に入れている。「電球の点灯・消灯で安否確認ができるIoT電球を一部物件に試験的に導入しています。現段階では全物件に展開していくかは未定ですが、高齢者の方向けの何かしらの見守りサービスは継続して検討していく予定です」と、共同最高経営責任者である工藤健亮氏は話す。
管理会社、管理人の内製化により入居者サポートのさらなる質の向上を図る
ビレッジハウスがここ数年で進めている取組みがある。管理会社や管理人の自社雇用、内製化だ。長年、雇用促進住宅を管理していたSK総合住宅サービス協会の社員がビレッジハウスへ転籍、2018年11月にすべての管理会社の内製化が完了している。
「管理会社がビレッジハウスと一体になったことで、対応スピードが明らかに早くなりましたし、課題も見つけやすくなりました。管理会社の内製化が業務効率化やサービスの向上に効果があったと感じており、管理人の内製化も進めています。管理人の方から、外国人入居者の方とのコミュニケーションをスムーズにしたいとの声を受けて、一部のエリアで管理人にポケトークを配布済で今後も需要に応じて台数の増加を予定しています」と、岩元氏。一般に賃貸物件では契約した会社や物件オーナー、管理会社がそれぞれ異なることが多いが、ビレッジハウスの場合は入居問合せ窓口や契約対応、管理人、管理会社、オーナーと、顧客接点のありそうな関係者がすべてビレッジハウスに統一されている状態ということになる。ビレッジハウスは入居審査基準や入居者対応窓口を全国で統一していることもあり、入居者目線で見ても、一貫した対応が受けられそうだ。
「もともと入居されている方と、新しく入居された方とのコミュニケーションの場にと、交流の機会をつくることにも今後力を入れていく予定です。昨年開催したお花見やバーベキューなどでは、参加された方から文化交流の場になり、楽しかったとの声をいただいています。今後は防災訓練なども計画しています」と、工藤氏。
雇用促進住宅を取得してから3年が経ったビレッジハウスは、建物や設備のリノベーションなど「ハード面」での整備はひと通り完了し、次にさまざまな入居者へのサポート体制の構築も進め、そしていま、コミュニケーションの場の創出に乗り出したかたちだ。高齢者や子育て世代、さまざまな国籍の人がゆるやかにつながる団地暮らしが生まれつつあるようだ。
取材協力:ビレッジハウス・マネジメント株式会社
https://www.villagehouse.jp/
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