生卵、リンゴ、鮭……。建物に食べ物が投げつけられる事件が発生

投げつけられる食べ物もかわいそうである投げつけられる食べ物もかわいそうである

賃貸では暮らし始めてからも不動産会社とお付き合いするケースは多々想定される。そんな時に気持ちよく対処してもらい、楽しい暮らしを送るためには、不動産会社の仕事や役割、どんなことをしてもらえるのかなどを知っておくと何かと便利。これは様々なトラブルに対処してきた不動産会社の裏話に耳を傾け、より良い暮らしのためのノウハウを学ぶ連載の第12回目。今回は笑うに笑えない、不思議な事件とそうした事件に冷静に対処する不動産会社の仕事ぶりをご紹介しよう。

「白い新築マンションの外壁に生卵が投げつけられる事件が発生したことがあります。生卵は乾くと黄身が取れにくくなるのですが、12階建てで手が届きにくい場所があり、拭くのはとても大変でした。最初は単なるいたずらと思ったのですが、生卵が2回続いた後、リンゴが2回投げつけられ、それを食べようと鳥が集まって糞害が発生。それを見て下見に来たものの、申込みにならないケースも発生しました。さらにその後は鮭。社員の中には次はおにぎりだという予測が出ましたが、鮭まででストップ。そこで犯人が分かりました」(ハウスメイトパートナーズ東東京支店元支店長・谷尚子氏)。

建物前の道路幅が広いため、最初は道路の反対側、地面から投げられたのではないかと考えられたものの、元自衛官の社員が「角度が違う」と発言。投げつけられたモノの飛び散った角度から向かいのマンション◎階から◎階、左端から何部屋目までの間から投げられているに違いないと分析。それを元に向かいの分譲マンションの管理人を訪問したところ、「心当たりがある」との返答が。

「以前から賃貸マンションの建設に反対し、管理組合で抗議しろとか、階段の照明が眩しいから消せと文句を繰り返していた住民がいるとのことで、住戸は元自衛官の社員が予測した場所と合致。管理人さんの協力で生卵被害の写真を添付したポスターを掲示しました。警察に相談して巡回を強化してもらっていることなどを記載し、犯人が警戒心を抱くようにしたところ、投げつけはなくなりました」。

犯人はマンション建設で、自宅から花火が見えなくなったことを恨み、投げつけていたらしい。腹が立つとモノを投げつけたくなる人は他にもいるようで、手近にあるからか食品が利用されることも多く、ラーメン、ワカメ、あんパンなどなど様々な食品が投げつけられているそうだ。

エレベーター前に濡れたジーンズ、パンツ、靴下、靴が点々と

早朝や真夜中にかかってくる電話にはトラブルが多い。「そんな中でも記憶に残っているのは、エレベーター前にジーンズ、パンツ、靴下、靴が折り重なって脱ぎ捨てられていたという事件です」。

連絡してきたのは新宿にある高層マンション最上階に住む女性オーナー。単身者が多く住む物件で、エレベーター前に異臭を放つ、おしっこらしき液体でぐしょぐしょになった衣類などがある、びしょ濡れで重かったが、とりあえずゴミ袋に入れて回収したという連絡だった。幸いにしてジーンズのポケットに財布が入っており、オーナーが確認したところ、その中には免許証が。

「オーナーのおっしゃる名前を確認したところ、入居者と分かったので連絡してみると『自分のものなので取りに行きます』と、気まずそうに言われました。状況を予測するに、酔って帰宅、オートロックで鍵を出すのに手間取っているうちにおもらしをしてしまい、面倒になったので下半身丸裸で部屋に戻ったのでしょう。その状態で他の入居者に出くわさなくて良かったと思いました」。もし出くわしていたら、警察沙汰になりかねない案件である。

「衣類は最上階のオーナーさんが回収、保管くださっているそうなので、謝りに行って受け取ってくださいと伝えましたが、さぞかし決まりが悪かっただろうなと他人事ながら気になりました」。おもらし系は他でもあちこちで聞く話だが、後片付けをする人のことを考え、飲んで帰宅する際や、体調が悪い時などにはご注意を、である。

体重で便座破損、化粧品でキャビネット亀裂、女性絡みのトラブル多発

トイレの詰まりの原因は一度に大量のトイレットペーパーその他を流す、モノを落とすなどだが……トイレの詰まりの原因は一度に大量のトイレットペーパーその他を流す、モノを落とすなどだが……

トイレ、洗面所などの水回りはそもそも故障その他のトラブルが起きやすい箇所だが、そこに女性が絡むと、なかなか言いにくくなることも。「以前、お相撲さんに部屋を貸した時に便座の接続部にヒビが入ってしまったことがありました。オーナーは『お相撲さんだから太るのも仕事だし、仕方ない。これは故意過失には当たらないでしょう』とオーナー負担にしてくださいました。

そこの物件にその後、とてもふくよかな女性が入居し、再び、便座の接続部が破損。でも、女性に対して「一般的には便座は割れるものではないので、故意過失に当たります」とは指摘しにくいと、その時も仕方なく、オーナーが負担。トイレを詰まらせるのも女性が多いそうだが、何が、どうして詰まったかは聞きにくいところ。そこでたいていの場合、理由は聞かずに押し流すことにするそうだ。

女性には優しいオーナーも少なくない。「洗面台のキャビネットに亀裂が入ったからと新品に交換した部屋で、1年後にまた同じトラブル。そんなに重量物を入れるような場所でもないのにと調査に行ったら、婚活中でキャビネットには重厚なガラス瓶に入った高級な化粧品がぎっしり。化粧にすごく力を入れていらっしゃるようでした。それを女性オーナーさんにお伝えしたら、『きれいになりたいという気持ちに水はさせないから仕方ないわね、ご結婚が決まったら退去されるのだろうから』と、また交換してくださいました」。

だが、さすがにオーナーが激怒したこともある。「オートロックのある新築マンションで、しかもオーナー、その息子家族も同じマンション内に居住していることから、セキュリティは万全。なのに、娘が心配だから、自分たちで費用を負担するからと警備会社との契約を強硬に主張する親御さんがおり、仕方なくその部屋にだけ導入した例がありました」。

ところが、親がそれほど心配しているのに娘のほうは男性を連れ込むなどやりたい放題。もちろん、親の前ではしおらしい顔。ところが、退去に当たって室内に導入した警備用の配線などを剥がしたところ、玄関ドアの塗装が剥がれるなど、原状回復に多額の費用がかかることに。親に請求をしても足りない状況にオーナーが激怒、「部屋ではなく、娘に警報機を付けておけばよかったんだ」といった発言を。「実際にはもっと具体的な表現で、爆笑しそうになりましたが、そこは笑ってはいけないところ。必死に堪えました」。

留守の部屋から聞こえる謎の音の正体

ケージ、水槽に入れて飼うなら平気だろうと考えている人もいるが、ペット不可の場合にはそうした勝手な判断はせず、きちんと確認をケージ、水槽に入れて飼うなら平気だろうと考えている人もいるが、ペット不可の場合にはそうした勝手な判断はせず、きちんと確認を

過去の記事でも書いたように、音はトラブルになりやすい。特に留守の部屋や夜中に聞こえる音は面倒だ。「家族旅行中で留守の部屋から謎の音が鳴り続けていてうるさいとご近所から苦情が。入居者に連絡、断ってから立ち入ってみると、確かにテレビ番組終了後の音をかなり高音にしたようなキーンという鋭い音がします。何度も何度も室内を点検してみるものの音源が分からず、もっとしっかり聞こうと付けっ放しだったキッチンの換気扇を止めたら、それで音が止みました。でも、換気扇を動かすとまた、音がする。二手に分かれてスイッチを入れたり、切ったりしたところ、サッシの隙間風だと分かりました。換気扇が付けっ放しになっていたため、強力に空気を吸い込み、その音だったのです」。

夜中にどこからともなく聞こえる音も怖い。「どこからともなく、がりがり、がりがりと何かを齧る音がするという連絡を受けたことがあります」とは千葉県の不動産会社のA氏。それほど大きな音ではないものの、その音は少しずつ大きくなってもいるという。ただ、大きくなったことで隣戸との間からすることが分かったとも。

そこでA氏は隣戸を訪問。「事情を話すと隣戸の住民は一瞬、しまったという表情。何かあると思って『お心当たりがあるんですね?』と突っ込むとしぶしぶ、ペット不可なのにペットを飼っている、でも、ケージに入れてあるとのこと。見せていただくと、壁の一画をフェンスで囲って出られないようにした内側にフェレットのような小動物。住民に動物を抱えていてもらって隣戸との壁をチェックしたところ、コンセントのカバーが外れており、その周りを齧っていた様子。原因は分かりましたが、隣戸の住民にはペットの件を注意をすることになりました」。

生活に密接に関わるだけに不動産会社の仕事は多岐に渡る。おかしな事件も発生するわけで、聞けば聞くほど大変。入居者の快適な暮らしを陰で支えてくれているわけである。

2016年 08月03日 11時04分