10年固定や35年固定は低下傾向が続く

住宅購入や住宅ローンの借り換えを検討している人にとって、住宅ローン金利の動向は気になるところだろう。長く上昇傾向が続いていた長期金利が下落に転じるなど、このところ変化しつつある金利の動きと、今後の見通しをまとめた。

主な銀行の最近の住宅ローン金利から見ていこう。まず変動金利はここ3ヶ月間、まったく変動がなかった。変動金利は金融市場の短期金利に連動しており、短期金利は日銀の金融政策でコントロールされている。日銀のマイナス金利政策により短期金利はマイナス圏での推移となっており、大きな動きがないためだ。

一方、10年固定金利は下落傾向が見られる。みずほ銀行やりそな銀行、楽天銀行は今年に入って連続して金利を引き下げており、他の銀行もイオン銀行以外は1月や2月に金利を引き下げた。10年固定の基準となる長期金利は2018年12月ごろから下落基調となっており、その動きに連動した形だ。

さらに35年固定金利は1月に各行が軒並み引き下げており、フラット35やみずほ銀行、三菱UFJ銀行などがその後も引き下げを続けている。35年固定は基準となる長期金利の動きをよりストレートに反映するため、金利引き下げの動きが明確だ。

主要銀行の住宅ローン金利の動き(2019年1月~3月)主要銀行の住宅ローン金利の動き(2019年1月~3月)

2018年12月以降は長期金利が低下に転じている

変動金利の基準となる短期金利は日銀が2016年2月にマイナス金利政策を導入して以来、マイナス圏で推移している。変動金利の店頭での表示金利はマイナス金利導入の前後でほとんど変わっていないが、金利引き下げ幅が拡大されて適用金利が下がっているケースが少なくない。代表的なのはみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3メガバンクだ。3行の適用金利はマイナス金利導入前が0.625%だったが、現在は0.525%が最優遇金利となっている。ただし0.525%はネットで申し込んだ場合の限定金利で、窓口で申し込んだ場合は0.625%のままだ。

10年固定や35年固定の基準となる長期金利は日銀のマイナス金利政策でマイナス圏に低下したが、2016年の夏には上昇に転じている。2016年9月に日銀が短期金利をマイナス0.1%程度、長期金利をゼロ%程度とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入したことでその後も長期金利が上昇し、0%〜0.1%での推移が続いた。

その間、10年固定はやや上昇気味に推移した。背景には米国でFRB(連邦準備制度理事会)が政策金利の利上げを進めたことが挙げられる。米国の利上げは日本の政策金利にも影響するとの予測から、実際に長期金利が上昇する前に10年固定が上昇したようだ。また日米の金利差が開くことで米ドルが買われ円安が進みやすくなることから、景気拡大への期待が高まり金利が上昇した面もあるだろう。

その後、2018年夏ごろから日本の長期金利も上昇したが、12月以降は下落に転じ、連動してフラット35や10年固定金利も低下した。米中の貿易摩擦や英国のEU離脱に伴う世界的な景気先行きへの懸念が広がったことが要因だ。

長期金利、フラット35金利、10年固定金利の推移長期金利、フラット35金利、10年固定金利の推移

米国の利上げ停止で日本の金利にも低下圧力がかかる

今後の住宅ローン金利動向の見通しは?今後の住宅ローン金利動向の見通しは?

今後の金利動向については、当面は長期金利が下がりやすい状況が続くとの見方が多い。最も大きな要因はFRBが今年1月に利上げを停止し、2019年中に利上げを行わない見通しを示したことだ。米国では景気後退の予兆とされる長短金利の逆転現象が発生するなど、景気の先行き懸念が強まっている。米国では利上げの停止にとどまらず利下げを予測する見方も多くなっており、金融緩和の動きが再び強まる可能性が高い。

日銀は金融緩和の姿勢を続けており、金利政策と連動する短期金利は引き続きマイナス圏での推移となるだろう。ただ、金利がさらに下がる余地はほとんどなく、変動金利も横ばいの動きになると考えられる。

一方、長期金利もここにきてマイナス圏に下落しており、米国で利下げが実施される事態になれば日本の長期金利もさらに低下することになりそうだ。ただし日本では金利の引き下げ余地が限られることから、日米の金利差が縮小し、円高が進んで景気の足を引っ張ることも予測される。その場合は日銀が追加緩和に踏み切る可能性もあり、長期金利は一段と低下する展開となるだろう。

世界経済の現状を見ると、米中の貿易摩擦はやや緩和されつつあるものの、トランプ政権による大型減税の効果が一巡することから、米国景気の先行きは必ずしも楽観できないとされている。さらに中国景気の減速感が強まり、英国による合意なきEU離脱への不安が高まるなど欧州経済にも悲観的な見方が根強い。世界的にも金利低下要因が広がりつつあり、日本の住宅ローン金利も低下傾向がしばらく続きそうだ。

2019年 04月01日 11時00分