7月には一部の銀行が金利を引き下げ

住宅の購入や住宅ローンの借換えを検討している人の中には、現在の金利の動向をチェックしている人も多いだろう。このところ長期金利が上昇の兆しを見せるなど、長く続いた超低金利が転換点に差しかかっているとの見方もある。気になる住宅ローン金利はどうなるのか、最近の動向と見通しをまとめた。

主要銀行の直近の動きから見ていこう。まず変動金利だが、6月までは住信SBIネット銀行が2ヶ月連続で金利を引き下げたこと以外は、さほど目立った動きはなかった。だが7月には三井住友信託銀行とりそな銀行が金利を引き下げている。正確には2行とも店頭金利は2.475%のまま変わっておらず、最優遇の金利引き下げ幅を拡大した形だ。

固定期間選択型の中でも利用率の高い10年固定金利は、このところ金利の小幅な変動が続いている。5月には金利を引き下げる銀行が目立ったが、6月には一転して引き上げの動きが広がった。だが、7月には再び3行が引き下げに踏み切っている。

フラット35を含む35年固定金利も、このところ「出入り」の多い動きとなっている。5月に軒並み金利が下がったかと思うと、6月には引き上げに転じた銀行が目立った。さらに7月はみずほ銀行が引き上げ、三菱東京UFJ銀行とソニー銀行が引き下げ、その他は据え置きと対応が分かれた。

主要銀行の住宅ローンの動き(2017年5月~7月)主要銀行の住宅ローンの動き(2017年5月~7月)

短期金利はほぼ横ばい。上下動を繰り返す長期金利

日銀が昨年(2016年)2月にマイナス金利政策を実施したことで、もともとゼロ%近い水準だった短期金利がマイナス圏に下がり、その後はマイナス0.05%前後で推移している。ただ、短期金利に連動するはずの住宅ローン変動金利は、マイナス金利の前後も店頭金利がほとんど動いていない。銀行にとって短期金利はさまざまな融資に影響する金利なので、これ以上の引き下げは財務の悪化に直結してしまうためだ。

ただし、ネット系の銀行など一部では変動金利の引き下げ競争が起こり、最優遇金利を0.5%前後とする攻防が続いてきた。さらにここにきて三井住友信託銀行とりそな銀行が最優遇金利を引き下げたことから、都市銀行や信託銀行に変動金利の引き下げ競争が飛び火する可能性も出てきている。

一方、10年固定や35年固定の基準となる長期金利は上下動を繰り返している。長期金利の指標である10年国債の金利は昨年2月にマイナス金利政策の影響でマイナス水準となり、英国によるEU離脱決定など世界的な先行き不透明感から夏にはマイナス0.3%近くまで低下した。

だがその後、9月に日銀が短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入したこともあり上昇に転じている。以降は米国のトランプ政権発足や中東情勢の悪化懸念などで長期金利が下がる局面もあったが、基本的には日銀が目標とするゼロ%近くで推移している状況だ。

長期金利の動きに伴い、昨年夏にかけて10年固定や35年固定金利も低下した。その後、フラット35金利は長期金利の動きにほぼ連動しているが、10年固定は都市銀行などが金利競争を強めたためほぼ横ばいで推移。年度末の住宅ローン書き入れ時が終わった今年4月にいったん1%強に跳ね上がったが、5月には一部の銀行がすぐに引き下げている。

長期金利、フラット35金利、10年固定金利の推移長期金利、フラット35金利、10年固定金利の推移

欧米で長期金利が上昇に向かう中、日銀は金融緩和を固持

日本では日銀が金融緩和を解除する兆しはなく、超低金利が今後も続く見通しだ日本では日銀が金融緩和を解除する兆しはなく、超低金利が今後も続く見通しだ

今後の住宅ローン金利がどう動くかは、ひとえに日銀による金融緩和策にかかっているといえる。日銀は物価が2%程度で安定するまでは金融緩和策を続けるとしているが、当の日銀の予想では目標達成は「2019年度ごろ」になる見通しだ。少なくともあと2年程度は現状の超低金利が維持されることになる。

だが、世界情勢を見渡すと、欧米では長期金利が上昇基調に転じつつあるようだ。2008年のリーマンショック以来、欧米でも中央銀行による金融緩和策で低金利が続いてきたが、いち早く米国では2015年末から利上げが進められている。また景気回復が進む欧州でも、欧州中央銀行(ECB)をはじめ各国の中央銀行が金融緩和の縮小へ向けて地ならしを進めつつあるとされる。

こうした動きを受けて、日本でも7月上旬に長期金利が一時0.1%を超えて上昇する場面が見られた。だが、すぐに日銀が指定価格で国債を無制限に買い入れる指し値オペを実施するなど、国債の買い入れ増額を発動したため、現状では0.1%を下回る水準で推移している。

今後はこのように長期金利が上昇するたびに日銀が力づくで抑えにかかる展開がしばらく続きそうだ。欧米の金利上昇が先行して日本の金利との差が開けば円安傾向が進み、日本の景気にはプラス要因となる。その結果、デフレ脱却が実現して物価が上昇することで、金融緩和が解消に向かうのが日銀の理想とするシナリオだろう。実現の見通しは不透明だが、長期金利や住宅ローン金利がちょっとしたきっかけで上昇しやすい状況が続くことになりそうだ。

2017年 07月31日 11時03分