規制緩和の方向性が明確に
~厚生労働省"『民泊サービス』のあり方に関する検討会"~

現在、法的にグレーゾーンを残したまま広がっている民泊だが、規制緩和に向けた議論が速いペースで進んでいる。ひとつは、国家戦略特区における規制緩和。すでに東京都大田区では特区を利用した民泊が始まっている。現状では、特区に指定され条例を制定した行政区以外ではあいまいなルールのまま運用が続けられており、特区の中でも許可(特定認定)を得ずに民泊を行っている物件が依然としてある。こういった状態を解消するため、民泊について全般的な議論を進めているのが、厚生労働省の"『民泊サービス』のあり方に関する検討会"だ。

2015年11月27日に第1回会合が催されたこの検討会では、民泊を取り巻く課題について検討し、ルール作りを行うために幅広い議論が行われてきた。構成員は大学教授、弁護士、観光業界団体や不動産業界団体の役員等、座長は東京大学大学院工学系研究科教授の浅見泰司氏が務めている。新経済連盟やAirbnbといった、民泊のメリットを強調する団体や企業にもヒアリングが行われた。2016年3月15日までに7回の会合を持ち、早くも"『民泊サービス』のあり方について(中間整理)"がまとめられている。

検討にあたっては、下記の3項目が「基本的な視点」に掲げられた。

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1.衛生管理面、テロ等悪用防止の観点から、宿泊者の把握を含む管理機能が確保され、安全性が確保されること

2.地域住民とのトラブル防止、宿泊者とのトラブル防止に留意すべきこと

3.観光立国を推進するため、急増する訪日外国人観光客の宿泊需要や、空きキャパシティの有効活用等地域活性化などの要請に応えること
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安全性やトラブル防止という観点で見ると、貸し出されるすべての物件が同じ課題を抱えているのではないことがわかる。例えば、ホストが住んでいる家の一室を貸し出すような民泊であれば、近隣からのクレームに素早く対応でき、ゴミ捨てのようなマナーが問題になることも少ないと考えられる。そこで検討会では、民泊を一律にとらえるのではなく、家主や管理者の有無、戸建てか共同住宅か、個人所有か法人所有か、など、その形態や特性に応じて整理する必要があるとしている。

区分けのポイントは、その物件にホストが住んでいるか否か。ホストの住居の一室を民泊で貸し出すケースを「ホームステイ型」、ホストが別の場所に住んでいるケースを「ホスト不在型」として、それぞれの規制緩和の方向性を解説しよう。

民泊の形はさまざま。その形態や特性を整理して議論を進める必要がある民泊の形はさまざま。その形態や特性を整理して議論を進める必要がある

「ホームステイ型」は届出制の方向

ホストが住んでいる自宅の一部を貸し出す「ホームステイ型」の民泊は、安全管理がしやすく、近隣住民からの苦情への対応も行いやすいことから、問題が起こりにくいと考えられている。ホストとゲストの関わりが国際交流へ発展することも期待できる。このことから検討会では、「ホームステイ型」は「ホスト不在型」よりも規制を緩和し、"届出制"とする方向性を打ち出した。

もちろん「ホームステイ型」であっても一定の要件を満たすことが前提になる。詳細はこれから検討される部分だが、営業日数の上限、宿泊人数、居室の広さなどが論点になるだろう。宿泊者名簿の備え付けや衛生管理についても、ある程度の規制が行われ、立入検査のような、行政処分が可能な枠組みも設けられることになりそうだ。

しかし、民泊が先行している大田区では、民泊条例に沿って運用されているため、「ホームステイ型」の実施が難しくなっている。許可を得るには、宿泊者専用のトイレ・風呂・台所の設置が必要とされているのに対し、「ホームステイ型」ではこれらの設備はホストと共用であることが多い。このように、特区民泊と検討会が打ち出した方向性とでは要件にズレがある。今後、特区民泊は"実施状況を検証し議論していく"とされている。

「ホスト不在型」は「簡易宿所」として許可制に

旅館業法では、旅館業を「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の4種に分類している旅館業法では、旅館業を「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の4種に分類している

「ホスト不在型」の民泊は、管理面の懸念や近隣住人からのクレーム対応等に不安があることから、"早急に取り組むべき課題"として議論が進められてきた。そのため、現行制度の枠組みの中で対応できる旅館業法の「簡易宿所」として、旅館業法の営業許可取得を促進する方向性が打ち出された。

旅館業法では、旅館業を「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の4種に分類している。「簡易宿所」は宿泊する場所を多人数で共用するもので、山小屋、スキー小屋、ユースホステル、カプセルホテルがそれにあたる。

ただし、現状の旅館業法をそのまま民泊に当てはめるのは難しく、要件緩和が討議される見通しだ。すでに緩和の方向性が明確になっているのは、客室面積の基準。簡易宿所では客室の延床面積は33m2以上と規定されているが、ゲスト1人あたり3.3m2を基準とする方向である。

用途地域についても、旅館業法の現状の規制では住居専用地域等で営業できないため、見直しの必要性が指摘されている。宿泊者の本人確認や、緊急時の対応体制の確保を前提に、フロント設置の義務も緩和の方向。また、旅館業法では「宿泊させる義務」が定められており、風紀を乱す恐れのある者や伝染病患者を除き、宿泊を拒むことができない。民泊にこの規定は馴染みにくいという指摘が出てはいるものの、どうなるか現時点では不透明である。

マンションでは管理規約で民泊禁止も

このような規制緩和が実現したとしても、マンション等の集合住宅では管理規約に従うことが求められる。管理規約で民泊が禁止されていれば、その物件では民泊を行うことはできない。
検討会では、民泊禁止を管理規約に明文化した都内の大型マンションへヒアリングも行われた。そこでは、不特定多数が出入りすればオートロックの意味がなくなりセキュリティへの懸念があること。共用部はルールを熟知している住人が使うことが前提であり、旅行者が使用するとルールが守られない可能性があること。区分所有者全員が負担している共用部の管理費にフリーライド(ただ乗り)していることになる…などの指摘があがった

今後の「マンション標準管理規約」には、このような意見がどう反映されていくのだろうか。国土交通省が「マンションの管理の適正化に関する指針」を2016年3月14日に公表した際、民泊については「"『民泊サービス』のあり方に関する検討会"において検討を行っているところ」とあり、この件についても検討会で話し合われるようだ。

また、賃貸物件で民泊を行う場合は別の制約があることに注意したい。賃貸借契約を結んでいる人がその部屋で民泊を行うことは「無断転貸」、いわゆる又貸しにあたる恐れがある。賃貸借契約には無断転貸を禁止する条項があるのが一般的。所有物件を賃貸に出しているオーナーは、その部屋が民泊に使用されないような賃貸借契約の遵守を求めることも必要になってくるだろう。

民泊の全国的な解禁に向け、検討会による規制緩和の方向性は明確になってきた。まだ詳細や実施時期については不明点も多いが、「中間整理」の資料には"スピード感をもって検討を進めていく"と書かれている。次なる動きに注目していこう。

※この記事は「民泊JAPAN」クローズに伴って、同社にて運営するLIFULL HOME'S PRESSが著作権を引き継ぎ、使用許諾権に基づいて公開しています。情報は「民泊JAPAN」掲載当時(2016年4月11日)のものとなります。

セキュリティや共用部利用の問題などから、マンションでは管理規約で民泊を禁止するところもセキュリティや共用部利用の問題などから、マンションでは管理規約で民泊を禁止するところも

2016年 04月11日 11時00分