快適な住まいのための技術

ご案内いただいた大和ハウス工業 総合技術研究所 江頭佳奈氏ご案内いただいた大和ハウス工業 総合技術研究所 江頭佳奈氏

大和ハウス工業の総合技術研究所で住宅技術を学ぶの後編。前回の記事では、生活者目線にたった住宅関連の技術についてお届けしたが、今回は実際に総合技術研究所で体感した“住まいを守る・住まいを快適に過ごす”技術について紹介したい。

ギャラリーは7つのテーマでゾーン分けされており、今回紹介したいのが「暮らしの安全・災害への備え」ゾーンと「快適な暮らし」ゾーンだ。特に、「暮らしの安全・災害への備え」ゾーンは、地震大国日本に住む私たちにとって必ず知っておきたい内容の展示だ。東日本大震災直後の1年間では、マグニチュード5以上の地震が日本で年間700回以上もあったという。数字だけ見てもなかなか脅威だと感じる。大和ハウス工業ではどういった災害対策技術を開発しているのだろうか?“身”を守る技術について取材してみた。

震度7の地震が4回きても損傷がほとんどないD-NΣQST

Σの形で地震エネルギーを吸収Σの形で地震エネルギーを吸収

「暮らしの安全・災害への備え」ゾーンでは、地盤工法や建物の構造工法、そして耐震、免震システムなどの展示が並んでいた。
一つ一つ説明したいが、ここでは特に耐震+免震システムについてお伝えしたい。

耐震化した建物といっても大地震がくるとダメージを受けて部分的な損傷をし、新築時の耐震性能を保てないケースがほとんどだという。東日本大震災後でも余震の数は多かったが、余震を考えると1度の大地震を考えた耐震化ではなく何度地震が起きても新築時の耐震性能を期待することが望ましい。

そんな地震大国日本の状況に対応する住宅が、「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」。大和ハウス工業が2014年1月より販売した自社の耐震構造を進化させた住宅。「D-NΣQST(ディーネクスト)」というエネルギー吸収型耐力壁を装備している。その性能を実証するため実大実験を行い、震度7クラスの地震の地震波4回加えても、初期性能を維持することを確認した。耐震性能を持続させるカギはΣ形のデバイスだ。楽器のアコーディオンのヒダを思い浮かべてほしい。そのヒダのようなΣ形の断面形状がエネルギーを吸収するという仕組みになっている。

また、免震についてもふれたい。
ちなみに耐震と免震、皆さんはこの違いをご存じだろうか?耐震の言葉の意味を調べると『建物などがかなり強度の地震に耐え、壊れたり傷んだりしないこと』で、免震の方は『地震による振動が伝わるのを軽減すること』だという。皆さんのまわりでも耐震化されている建物が多いと思うが、それがイコールで地震の時揺れないということではない。耐震化した建物の場合、大きな地震のとき建物自体の損壊の心配はほぼないが、揺れることは揺れるため室内での事故は起こる可能性がある。
日本建築学会「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」によると、阪神淡路大震災のときに震度7の地域では住宅の全半壊をまぬがれたにもかかわらず、全体の約6割の部屋で家具が転倒したというデータがある。家具転倒防止も必要だが、そもそも住宅自体がそんなに揺れなければ、内部での事故は軽減できると考える。そのような意味でも住宅の耐震+免震の技術革新は重要だ。

耐震と免震を体験!

耐震、免震ブースを体験耐震、免震ブースを体験

同じ揺れでも、耐震仕様のものと免震仕様のものがどのくらいの差があるのか。総合技術研究所では実際に体験できるため、編集部も体験してきた。

体験ブースの上に立ち、まず耐震化された建物を想定して体験。阪神淡路大震災相当のマグニチュード7の地震の揺れは、手すりをしっかり持たないと立っていられないほどだった。次に免震化された建物を想定して体験。ブースの床は一部ガラス張りになっていて、免震装置がどのように動いているか確認できる。パンタグラフ式減衰装置という、地震エネルギーを吸収する免震システムが床下でガシガシ動いて揺れを軽減するため、ブース自体は手すりにつかまらなくても立てるほどであった。

実際、耐震と免震の2つの状態を体験するとやはり耐震だけではどんなに建物が壊れないといっても、室内での横転や家具の転倒などが心配になる。今後住宅を建てる人は、免震についても考えておきたいところだ。

騒音、近所トラブルを防ぐ!

四隅の「コーナーチュン」を開くだけで、響きがスッキリする四隅の「コーナーチュン」を開くだけで、響きがスッキリする

“身”を守るという意味で、耐震化免震化と少し違うかもしれないが近所トラブルなどを防ぐ「奏でる家」を紹介したい。

ギャラリーに設置された窓のある普通の10畳程度の部屋。まず、窓と扉を閉めた状態で内部で大音量の音楽を流す。外から様子を観察していると、窓に極至近距離で近づけばさすがに音はするが、ほぼ聞こえない。窓を少し開けると大音量が飛び込んできて、遮音性について実感できる。

しかし、この家は防音室機能だけでなく、大和ハウス工業の特許商品だという「コーナーチューン」を備えている。防音室は音が逃げにくいため、音や声が反響してエコーがかかってしまう。耳も中耳炎の状態のようにぼわっとしているが、扉を開けて部屋の四隅に設置された「コーナーチューン」を露出させると、通常のクリアな音になる。特別な何かを起動させるわけではなく、その扉を開けるだけで一瞬にして音が全く違うのだ。

「当社のオリジナル商品で、三角形のスポンジ状のものを部屋の四隅に置くことで、音を吸収してくれます。4枚開くと、全てのエコーを吸収して響きがない部屋になりますが、ピアノやフルートならコーナーチュンを2枚開けた状態が最適です。楽器にあわせて響きの調節ができるので、音にこだわりがもてます」(今回、展示物を説明していただいた大和ハウス工業の江頭佳奈氏)

こちらの商品はリフォーム製品としても販売しているという。通常、防音室を買うと10畳程で約500万円するというが、こちらはスタンダードタイプで130万円。音にこだわりのある人、悩みがある人は是非一度体験してほしい。

日本の住宅はスゴイ

展示されていたモーグル展示されていたモーグル

今後の日本住宅市場を考えるとき、ロングライフ住宅や中古住宅の流通市場活性化は切っても切り離せないものになりつつある。その中で、ギャラリーにあった狭小空間点検ロボット「moogle(モーグル)」は今後重要な役目を担っていくものではないかと感じ、最後に取り上げたい。
人が入り込めない場所でももぐりこめ、基礎のひび割れ、土台の腐食、シロアリ被害などの点検に活用できるという。モーグルなどを使い「住宅診断」が容易にできるような環境になれば、日本の住宅市場もさらに活性化するのではないかと思う。

今回、総合技術研究所を見て、住まいに関する様々な技術を知るとともに日ごろの暮らしの安全や防災について改めて考える機会となった。ギャラリーのほかに子供も楽しめる世界の住まい環境を展示したミュージアムがあるので、家族で訪れてみるのもいいのではと感じた。

この総合技術研究所では昨年あたりから海外からの見学者も増えているという。日本は住宅のエネルギー性能などで一部欧米に比べて遅れていると言われているが、住宅単体においては他の国よりも圧倒的な技術があるのではないかと思った。今後の住宅研究にも期待したい。

2014年 04月22日 10時34分