駅近でもない。利便性が高いワケでもない。大らかに“味のある暮らし”を楽しむ賃貸マンション
賃貸物件を探す際、「駅徒歩5分以内」など最寄駅の近さを条件に挙げるケースは多いのではないだろうか。
生活施設が周囲に揃っているかも然り、立地の利便性や住設備の先進性、また居住者のプライバシー性や防犯性にも重きをおいた物件探しが一般的な中、その真逆を行くように、敢えて“面倒な”場所であり入居条件の下で個性を放っている賃貸マンションが名古屋にある。
暮らし&つながりを大切にする、がコンセプト
「最寄駅から 徒歩24分」。
2014年夏、名古屋市西区大野木に誕生した【アトリエ379】は、決して便利な場所にある物件ではない。名古屋市内にありながら、今でも豆腐売りのお父さんが街を訪れ、近くの公園には魚商がトラックでやってくるような昔ながらの住宅地に建つ賃貸マンションだ。
同物件は、『DIY可能』『壁のカラーセレクトOK』『無垢フローリング』『みんなで使えるレンタルスペース』『ペット応相談』で、一般的な賃貸住宅ではご法度とされるようなものを奨めているのが特徴。
例えば、打ち放しコンクリート壁と白い壁になっている室内壁は、白い壁の方を「自分好みに塗る」ことが入居条件となっている。しかもDIY専用の手作り塗料を使用することが決められていて、ニュアンスのあるカラーバリエーションの中から色を選んだ上で入居者自らが塗る。無垢フローリングも半年毎に指定のワックスで手入れをすることが案内される。
素人が塗る壁はムラもあるかもしれないし、白い壁のままの方が美しいかもしれない。でも、それが「味」。無垢フローリングは傷も付きやすいし(ペット同居なら尚更)、手入れが必要で面倒だろう。でも、キズも「味」になる。そんな「味」を大らかに愉しめるように、敢えて“住まいに手をかける”ようにして愛着を深めるようにしているのだ。
リノベ好きも暮らせること・コミュニティ参加型であること
偶数月の第2土曜日には「みんなで晩ごはん」を開催していて、先日はクリスマス会が行われたばかり。ホットプレートで焼肉をしたり、チョコフォンデュをしたり…自分達で作る時もあれば、ケータリングをする場合も。冷蔵庫などの家電や食器類も揃っているので気軽に集えるようになっているそのように、住まいを自分色に染めていくDIYやリノベ好きも暮らせる賃貸マンションであることに加え、気軽に声を掛け合い、お醤油を借りにいけるような“長屋的つながり”の距離感の近い関係を入居者に推奨している。
同じ建物に住む人同士であっても、仲良くなるキッカケはなかなか作りにくいもの。
1階にはシェアスペースとなる『みんなのリビング』があり、パーティーやイベント、ワークショップなど交流の場が設けられている。ウッドデッキが続くミニキッチン付きリビング・ダイニングは入居者が自由に使うことができ、2ヶ月毎に開催される「みんなで晩ごはん」をはじめ、入居者同士でパーティーしたり、乳幼児と一緒でも気兼ねなくママ会をしたり、ワークショップで間伐材の床を貼ったりと、交流を行ってきた。
しかも、この『みんなのリビング』は、入居者に限らず地域の人も利用できるレンタルスペースとしての顔も持つ。現在も、ヨガ教室が定期的に開講されているなど、外に開けた空間でもある点も特徴だ。
気軽に人が来る、『住み開き』をするマンションを目指して
外に開けている、という事は、不特定多数の人がマンション内を訪れる事にもなる。
プライバシー性や防犯性を重視すると、それは懸念材料にもなり兼ねないが、同物件では『住み開き』の考えを持っているのだとか。
住み開きとは、気軽に人を自分の家に招くことで人との距離が縮まるという考え方。昨今の暮らし方で希薄になっている、“人が来る・人が集まる”ことで生まれるコミュニティを大切に想い、その心地良さやあたたかさを愉しむ物件であることを入居希望者には事前に伝え、それに賛同できる人を受け入れているのだ。
人が集まることを「面倒くさい」「うるさい」と感じるのではなく、参加するか否かは別として「よし」とすること。DIYで敢えて手を掛けることも、愉しむ音も「容認」できること・・・それを入居基準としているのはとてもユニークに感じる。
素敵な人が集まり、素敵な友人・知人を呼ぶそして街も素敵になっていく・・・その幸せな連鎖を作りたい
【アトリエ379】の入居者から「大家さん」と慕われる明福興産の伊藤さんは、この街の“豊かさ”に惚れ込んでいる。2016年春からは、もっと楽しく・もっと安心して暮らせる街にしようと同エリアの活性化プロジェクトも起ち上げて街の魅力を発信中とのこと。
「空がキレイで夕陽がキレイ。夕方になるとお豆腐やお魚売りが来て、近所のお母さん達が立ち話をしているような昔からある住宅地。そんな大らかなこの街だから、便利さよりもゆったりとON・OFFのある暮らしができるのだと思います。
賃貸物件は駅近が重要ポイントではあるけれど、それに悶々すると言うか…利便性だけの価値ではないものを大切にしたいですし、設備や駅からの距離にこだわらない賃貸物件がもっと出てきても良いと思うのです。」(伊藤さん)
18戸の同物件は現在満室で、退去待ちの人もある状況。
入居者の中には、駅近の都心生活を手放してここでの暮らしを選んだ方もいるのだとか。
「家賃をお値打ちにしている分、生活や心の豊かさに廻してもらえたら嬉しいです」と微笑む伊藤さんの顔が印象に残った。
■取材協力
私たちらしく暮らす 賃貸マンション「ATELIER379(アトリエ379)」
http://atelier379.jp/
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