世田谷区が行ってきた空き家等の地域貢献活用事例とは?

当日配布された資料類。様々な取り組みが行われることがよく分かる
当日配布された資料類。様々な取り組みが行われることがよく分かる

今回のフォーラムは4部構成。最初に世田谷区における空き家等の地域貢献活用事例の紹介、続いて、モデル事業に採用された団体の報告、そして区外の空き家等地域貢献活用の事例紹介、そして最後はここまでの登壇者全員によるパネルディスカッションである。

まず、最初の世田谷区における空き家等の地域貢献活用事例は大きく2種類。ひとつは今回のフォーラムの共催者である一般財団法人世田谷トラストまちづくりが行っている「地域共生のいえ」、そしてもうひとつが世田谷区社会福祉協議会が行っている「ふれあいの家」(1室の場合はふれあいルーム)。前者は空き家、空き部屋、家の一部などを地域に開放、子育て中の親子が集まったり、高齢者施設に入居する人がおしゃべりをしたり、地元のサークル活動の場になったりと多彩な用途で幅広い年代に利用されているというもの。運営はオーナーの発意の元、地元のサポーターによって支えられているのだとか、現在、区内に13軒設けられている。

後者は区に寄贈された住宅などを利用、社会福祉協議会に登録する地域支え合い活動団体が支え合い活動拠点として使われているそうで、具体的な使い方としては高齢者向けのサロン、ミニディサービス、子育てサロンなど。現在、区内には23カ所の活動拠点が整備されているという。

また、2013年7月に開設された空き家等のオーナー向けの相談窓口の利用状況(*)も報告された。それによると、オーナーからの活用相談案件は28件あり、うち対応中の案件が6件。活用希望者からの問い合わせは38団体とのこと。現在、一戸建てだけでも6000戸の空き家があるという状況を考えると、潜在的に活用してもらいたい人はもっといるはず。もっとPRが必要だろうと思う。

(*)平成25年7月~平成26年2月末まで

資金面以外での空き家等活用の問題点は?

子どもの悲しみに寄り添い、立ち直りを手助けする事業を行うグリーフサポートせたがや。マンションの一室を改修して活動を行う予定
子どもの悲しみに寄り添い、立ち直りを手助けする事業を行うグリーフサポートせたがや。マンションの一室を改修して活動を行う予定

続いて行われたのは、昨年10月にモデル事業として採用された3団体の活動報告。3団体の内容については過去の記事を参考にしていただくとして、興味深かったのは助成金支給決定から契約までに時間がかかり、交渉が大変だったというグリーフサポートせたがやの報告。

それによると、モデル事業として採用された時点で建物のオーナーと話はしたものの、その後、間に不動産会社が入って以降、意志の疎通が難しくなったという。今回のケースのように特殊な状況下での契約の場合、一般的な契約はこれですからといった、画一的な進め方は馴染まないと、グリーフサポートせたがや側は思っていたというが、不動産会社にその点がうまく伝わらなかったようだ。

今後、空き家等を活用していくとしたら、契約期間や費用、原状回復の条件などを柔軟に考えた上での契約が必要になるだろうと思う。今回のモデル事業ではオーナー、借りる側、行政は関係者として当初から関わってきているが、不動産会社は契約が決まってからの参加で、契約の意義、目的について区やトラストまちづくりから充分な説明が不足していたと思われる。だが、そうした課題が報告されたのであれば、今後はもっと関係者を広く考え、総力で活用を考えていく必要があるのではないかと思う。

我が家の一角を街に開かれた図書館に。西国図書室の例

続いては区外での空き家等地域貢献活用の事例紹介。ここでは東京都国分寺市で我が家の一角を週に1日地域に開放、地域分散型、持寄り型の図書館を作ったという篠原靖弘さん、高島平団地の空室・空き地をサービス付き高齢者向け住宅、ディサービスや温浴施設などを備えたコミュニティ空間に再生したコミュニティネットの事例が紹介された。

このうち、個人でもできるという意味で面白かったのが篠原さんの事例。夫婦ともにシェアハウス暮らしの経験があり、暮らしの中に他人がいるのが普通だったという篠原さんは「家は街とつながっていたほうがいいと思う」とコメントした。知らない人ばかりの街に暮らすより、知っている人がいて緩やかに繋がっている街での暮らしのほうが楽しい。東日本大震災以降の今なら、そうした暮らしのほうが安心だということも多くの人が感じているはず。プライバシー、個人情報ももちろん大事ではあるが、それ以上に街やそこに住む人との交流は生活を楽しくしてくれるはずなのである。この西国図書室について後日記事でご紹介する予定。

ちなみに篠原さんは街を知ることの大事さを実感した結果、まち暮らし不動産なる不動産会社を作り、月に2回、街を発見するディスカバリーツアーを国分寺、阿佐ヶ谷で開催しているとか。最初に物件ありきではなく、住みたい街ありきから始まる住まい探し。私も一度参加してみたいと思う。

空き家等を、職場、家庭に次ぐ第三の場に

世田谷区長(写真左から2人目)も混じってのパネルディスカッション。世田谷区では来年以降も同種の施策を行っていく予定という世田谷区長(写真左から2人目)も混じってのパネルディスカッション。世田谷区では来年以降も同種の施策を行っていく予定という

最後はここまでの登壇者が参加してのパネルディスカッションが行われた。多彩な顔ぶれが揃っただけに様々な話が出たのだが、中で面白かった点をいくつか。ひとつはシェア奥沢の主宰者である堀内正弘さんの「シェア奥沢は職場、家庭以外の第三の場である」という言葉。

昨今は職場からも、家庭からも離れ、孤立して生きる高齢者が増えている。たとえ、経済的には困っていなくても、その寂しさが死に向かうこともある。それを考えると、これからの社会には職場、家庭以外の第三の場が必要である。しかし、公共の都市計画にそれを作ることはできない。であれば、シェア奥沢のような存在が必要なのでは。かいつまんで書くとそんなところだろうか。かつてあったご近所付き合いがなくなりつつある今、空き家等を活用することで人が集う場を作ることが、孤立を防ぐ手立て。そのように解釈した。

※シェア奥沢についても前回の記事参照

これについては西国図書室の篠原さんも「お父さんや放課後の子どもたちの居場所、子育ての場など、第三の場は高齢者以外にも必要。ニーズは高い」と指摘。空き家を第三の場に生まれ変わらせることができれば、高齢化に限らず、様々な社会の問題を軽減、解消する糸口になるかもしれないというわけである。

また「行政は空き家等の活用の阻害要因を取り除くのが役目で、活用自体は民間のやることではないか」というパネルディスカッションのコーディネーターを務めた小林秀樹教授の言葉にも共感した。例えばシェアハウスは現行の建築基準法的にはグレーゾーンにあり、国土交通省は寄宿舎という対応を助言(空き家活用フォーラム後に寄宿舎基準を撤回)しているが、小林教授は「公共が条例等で規制、対応すれば建築基準法に抵触しなくて済む。シェアハウス、グループホームといった使い方も可としなければ、一戸建ての活用は難しくなる」とも。

一方で活用については必ずしも行政がやる必要はない。たとえば、現在、自治体に寄贈された住宅は世田谷区のように、公共性の高い施設に使われるケースが大半だ。その場合、建物自体は費用を払わずに取得しているが、維持、利用に関しては税金が投入される。だが、これを民間に貸し出すなどして利用料が得られるようにしたらどうだろう。税金を投入しなくていい分、もっと活用例が増えると思うが、難しいのだろうか。増え続ける空き家等を考えると、柔軟な対応が望まれるところだ。

2014年 04月06日 18時06分