話題のコンセプト賃貸、家具・家電と同様に
“もれなく猫が付いてくるマンション”
家具・家電と同じように、もれなく猫が1匹付いてくる…そんな『猫付きマンション』が話題を呼んでいる。
この『猫付きマンション』は、様々な事情で飼い主に飼育を放棄されてしまった猫や、保健所で殺処分となりかけた猫たちをシェルターに保護し、里親探しをおこなうNPO法人『東京キャットガーディアン』(山本葉子代表)の発案でスタートしたコンセプト賃貸マンションだ。
レポート2回目の今回は、実際に『猫付きマンション』で暮らしている入居者の方と、『猫付きマンション』のアイデアに賛同したマンションオーナー氏にお話をうかがった。
※【猫付きマンション①】1回目のレポート記事はこちら。
http://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00037/
最初は『猫付きマンション』と知らずに賃貸マンションを契約
「入居して3ヶ月経つまで、このマンションが『猫付きマンション』とは知らなかったんです」と語るのは、目黒区内にある約36㎡の1LDKマンションに暮らす森下恵子さん。
『東京キャットガーディアン』のシェルターからレンタルされたルナちゃん(メス・2歳)と共に猫とのマンション生活を送っている。
「おそらく仲介会社さんが『猫付きマンション』の意味をちゃんと理解していなかったんでしょうね。入居を検討している時に仲介担当者からもらったチラシのスミに“猫はレンタルです”と小さく記載されているのを見つけて、入居した後もずっと気になっていて…“猫?レンタル?なんのことだろう?”と思って、問い合わせ先の『東京キャットガーディアン』へ電話をしました」(森下さん談)。
問い合わせをして初めて、猫を保護する目的で生態貸与契約を結ぶ『猫付きマンション』の仕組みを理解した森下さんは、もともと家族そろって猫好きだったこともあり、すぐに『東京キャットガーディアン』の大塚シェルターを訪れたという。
「シェルターには、片足を無くしたり目が不自由だったり、ハンディキャップを背負った猫たちもいると聞いていたので、本当はそういう子を借り受けようと思っていたんですが、シェルターを見学していたら、突然私の膝の上にちょこんと乗ってずっと離れない子猫がいたんです。それが生まれて9ヶ月のルナでした。本来『東京キャットガーディアン』のルールでは、1歳以上の成猫から優先して貸与するという規則があるのですが、代表の山本さんから『彼女(猫)が森下さんを選んだんだから、これは運命ですね』といって貸し出しを快諾してくださって…ルナとの新生活がスタートしたんです」と森下さん。
現在は、ルナちゃんが万一けがや病気をした時に備えてコツコツ500円玉貯金をしたり、ペット保険に加入するなど、我が子同然の存在として“猫との2人暮らし”を楽しんでいるそうだ。
猫と一緒に暮らすことで“気軽に引っ越しをしようと思わなくなる”点も、
オーナーにとっての大きなメリット?!
「シェルターでは、トイレや爪研ぎなど猫たちのしつけをおこなってくれていますから、ルナもとてもお行儀が良くて、ちゃんと決まった場所でツメ研ぎをし、決まった場所でトイレをします。それと、シェルターの中でたくさんの仲間たちと一緒に過ごしていたせいかわがままな性格ではなく、“猫としての社会性”がちゃんと身についているような気がしますね(笑)。そういう点で『猫付きマンション』は、猫初心者の方にもオススメだと思います」(森下さん談)。
しかし、森下さんが嘆くのは“猫の飼育”に対する賃貸マンションオーナーや仲介会社の理解不足だ。
「今回、引っ越しをして改めて感じたのですが、『ペット可』を謳っている賃貸マンションの中でも“犬はOKだけど、猫はNG”という物件がとても多かったんですよね。猫はクロスや柱でツメを研ぐから部屋が汚くなるとか、外へ勝手に出かけてご近所におしっこをしたりしてトラブルになるとか、そういうイメージをお持ちの方が不動産業界にはとても多いんだなと感じました。
最近は『室内飼い』をする猫がほとんどですし、しつけもちゃんと身についています。もちろん私たち飼い主の意識も大切ですが、不動産業界全体の“猫と暮らすこと”への偏見がなくなり、今後『猫付きマンション』が全国へ広がっていくと良いですね」(森下さん談)。
筆者も森下さんのお宅にお邪魔してみたが、猫特有の臭いはまったくしないし、壁や柱に爪研ぎの跡も見当たらない。とてもキレイに部屋を使っているのがわかる。確かに、オーナーや仲介会社が“猫を飼育することへの理解”をさらに深めれば、『猫付きマンション』に続く新しいコンセプト賃貸マンションの展開が待ち受けているかもしれない。
もうひとつ、森下さんがヒントを教えてくれた。
「猫は環境の変化に弱いので、猫のストレスを考えると他の物件へ引越しをしようとはなかなか思いません。これは、マンションのオーナーさんにとってもメリット大だと思いますよ(笑)」(森下さん談)。
「マンション貸します」ではなく、
「猫を救っています」という想いで『猫付きマンション』に賛同
「“猫を救っています”という山本さんの言葉が、胸に刺さりましたね。“賃貸マンションで猫を飼育する”ということに対しての偏見は、僕の中ではまったくありませんでした」。
『猫付きマンション』の企画に賛同する後藤専さんは、東京都内で多数の賃貸マンション経営をおこなっており、『東京キャットガーディアン』の大塚シェルターが入っているテナントビルのオーナーでもある。
「テナントへ挨拶回りをしているときに『東京キャットガーディアン』の活動内容を知り、代表の山本さんから“いま考えている『猫付きマンション』の企画に協力していただけませんか?”と相談を受けたのがきっかけでした。
マンション1部屋につき猫が1匹救えるなら…と2棟・32戸を提携したのですが、いざ『猫付きマンション』がスタートしてみると、マスコミからの反応がすさまじかった(笑)。テレビ、新聞、週刊誌など様々なメディアに取り上げられたので、あっという間に満室になりました。
メディアに登場した後は、“すでに猫を飼っているが、猫の飼育に理解のあるオーナーさんのマンションなら、そちらの物件へ引っ越したい”といった問い合わせが圧倒的に多かったため、全戸がシェルターの猫たちの保護活動につながらなかったことは残念でしたが…」と後藤さん。
賃貸マンションを経営するオーナーとして、『猫付きマンション』の魅力をどのように感じているのだろうか?
「賃貸マンション経営は、“空室を作らずに少しでも長く住んでいただくこと”が課題となりますが、『猫付きマンション』はその課題をクリアする好条件が整っています。『猫付きマンション』を謳うことで入居の問い合わせが倍増したのは素晴らしい反響でしたし、『引っ越し時には猫を返却』というルール(※)は“このマンションに住みつづけたい理由”につながりますよね。(※引っ越し後も猫を飼い続けたい場合は『譲渡契約』を結ぶ方法もある)
僕の経験から感じたことですが、“動物と一緒に生きる人”は、動物だけでなく住まいへの愛着や愛情も深い方が多いので、“ここに長く住みつづけます”という方が多いんです。そういう意味で『猫付きマンション』のアイデアというのは、入居者の方にとっても、オーナーにとっても、猫たちにとっても、ハッピーなシステムと言えるのではないでしょうか」(後藤さん談)。
「これからはオーナーだけでなく、行政や自治体を巻き込んで『猫付きマンション』のシステムが広がっていくと良いですね」と後藤さんが語るように、今後は“1匹でも多くの猫を救うための幅広い物件展開”が課題となりそうだ。
空室でお悩みのオーナーさん、猫との暮らしを考えている引っ越し検討中の皆さん、ぜひ『猫付きマンション』の“ハッピーな暮らし”を体感してみてはいかがだろうか?
■東京キャットガーディアン『猫付きマンション』ホームページ
http://www.tokyocatguardian.org/news/news110306.html
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