2015年“大都市・名古屋”の誕生?!駅前高層ビルが同時竣工予定
「いま名古屋の駅前で何が起こっているんだ?!」
久々に名古屋を訪れた方はそう驚かれることだろう。
名古屋駅前の桜通口ロータリーに降り立つと、巨大な工事現場が目に飛び込んでくる。現在、名古屋駅前は高層ビルの建設ラッシュとなっており、
●大名古屋ビルヂング(2015年10月末竣工予定・地上34階建/三菱地所)
●JRゲートタワー(2017年春竣工予定・地上46階建/JR東海)※名古屋駅新ビルプロジェクト
●JPタワー名古屋(2015年秋竣工予定・地上40階建/日本郵便・名工建設)※名駅一丁目計画
の3つのビッグプロジェクトが同時進行しているため、駅周辺には巨大なクレーンが林立し、多数の工事車輛がせわしなく行き交う。
この3プロジェクト間で事前調整をしたわけではなかったそうだが、偶然にも2つのビルの竣工予定が2015年秋に集中(JRゲートタワーは当初の2015年末竣工目標から2017年4月に延期/2014年2月付発表)。長年“大いなる田舎”と呼ばれてきた名古屋が、全国へ誇る大都市へと生まれ変わる瞬間が訪れることになりそうだ。
そこで今回は、3プロジェクトの中でも(筆者を含め)名古屋人にとって特に思い入れが強い『大名古屋ビルヂング』の建設計画について、事業主である三菱地所の担当者に話を聞いた。
2015年、名古屋駅前はいったいどのように変わっていくのか?
『大名古屋ビルヂング』の建替えによって、名古屋駅前の人の流れに変化が!

半世紀の間、“名古屋駅前の顔”として市民から親しまれていた『大名古屋ビルヂング』。その取り壊しを惜しむ声は多数聞こえたが、2009年12月に三菱地所から建替え計画が発表された。
「築47年が経って館内の設備が老朽化したことが計画スタートのきっかけでした。もちろん、建物としては頑丈でまだまだ使用可能ではあったのですが、名古屋駅前の一等地だからこそ、今後は環境問題や防災計画にも配慮した次世代型のビルを建設し“新たな名古屋の顔”として市民の皆様にご利用いただきたいという想いからプロジェクトがスタートしたのです」(三菱地所名古屋支店プロジェクト推進室・有光さん談)
名古屋駅前のビジネスエリアには、伊勢湾台風(昭和34年)直後に建てられた古いビルがひしめき合っている。そのため名古屋市では、名古屋駅周辺を『特定都市再生緊急整備地域』と位置付け、都市機能の向上を促進するとともに、老朽化したビルに関しては速やかな建替え・更新が望ましいと呼びかけている。
「旧『大名古屋ビルヂング』は、知名度は抜群だったのですが、オフィスビルのイメージが強かったせいか“存在は知っているけど、一度もビルの中に入ったことがない”という一般市民の方からのご意見を多数頂戴いたしました。そこで、新『大名古屋ビルヂング』は、広く地域の皆様にご利用いただける施設となるよう、グルメやファッション雑貨店などが入るテナントフロアを充実させたり、低層基壇部の屋上に庭園を設けるなどの工夫を採り入れています。
また、従来は駅前ロータリーから東へ延びる幹線道路『桜通り』の存在が、名古屋駅と周辺商業施設を行き来する人の流れを分断していたため、駅と周辺ビルとの回遊性の低さが大きな課題になっていたのですが、新『大名古屋ビルヂング』の地下にコンコースを整備することで、駅~地下街~商業施設のアクセスがかなりスムーズになります。竣工後は、名古屋駅前の人の流れが大きく変わるのではないかと期待しています」(三菱地所名古屋支店プロジェクト推進室・出雲さん談)。
今後は駅前ビルが地域の防災拠点としての役割も担う

『大名古屋ビルヂング』の性能に目を向けてみると、全国的にも珍しい中部圏初の大規模地下機械式駐輪場(約960台)が整備される点も注目ポイントのひとつ。事前に登録をおこなえばICカードをかざすだけで約30秒以内に入出庫の操作ができる先進システムで、名古屋駅前の美観上の課題となっている放置自転車対策としても期待が集まっている。
また、名古屋駅周辺は海抜2mと低いため水害が懸念されるエリアであるが、近年増加している集中豪雨等の水害対策として、非常用発電機の一部を本来ならばテナントスペースとして活用すべき中層階に配置。防災用備蓄倉庫や地下1階と1階出入口に防潮板を設けるなど、地域の防災拠点としての役割も果たすことになりそうだ。
「巨大な駐輪場を整備したのは、放置自転車問題を解消するお手伝いをしたいという想いがありましたが、もう1点、名古屋駅周辺は土地がフラットで、エリア全体がコンパクトにまとまっていて、自転車移動が快適におこなえる街であることから、自転車の活用を促す目的も含んでいます。名古屋駅周辺で暮らす人や働く人たちの自転車利用率が増加すれば、駅前の渋滞解消にもつながり、スマートシティとしてのイメージも確立できるのではないでしょうか」(有光さん談)
名古屋駅前の再開発とリニア開通により、
VS大阪の『都市間競争』が激化?!

この『名古屋駅前同時再開発』を受けて、一部のメディアでは『大阪と名古屋の闘い』といった報道もおこなわれている。
これまで“大いなる田舎”と呼ばれてきた名古屋が大都市として生まれ変わることにより、関西から中部へ拠点を移す企業が増えることが想定されるからだ。
もちろん、2027年に予定されているリニア新幹線の開通も“大都市・名古屋誕生”に欠かせない重要な要素となっている(大阪までの延伸は2045年目標)。
「私共としては、都市間競争についてはまったく視野にはなかったのですが、結果このような形でメディアの注目を集めることにより、双方の都市の活性化につながっているならば嬉しいことだと考えています。ただし、ここ名古屋では、東京や大阪のノウハウを生かして“似たような大都市”を作るのではなく、名古屋独自の需要を反映したオリジナルの街づくりを進めていきたいですね。今後、2015年の名古屋駅前の再生をぜひご期待ください」(出雲さん談)
再開発後は郊外都市でも"名古屋駅直結"のキーワードがエリアバリューに!
新しいオフィスビルが誕生することによって、
その街で働く人が増え、周辺で暮らす人たちが増え、人の流れが変わる。
現在、名古屋駅周辺は再開発への期待感もあって、地価の上昇傾向も続いている。
従来は、名古屋市東部丘陵エリアが“人気の住宅地”とされてきたが、2015年の駅前再開発プロジェクト竣工を受け、名古屋市内および郊外で住まいを探す人たちの意識も大きく変わることになるだろう。
今後は“名古屋駅から遠い名古屋市内”よりも“名古屋駅直結の郊外都市”に注目が集まりそうだ。
2014年 03月05日 11時35分