1日500円で誰でも利用できる木工専門のDIYショップがオープン
名古屋駅から西に1.5キロほどの場所にある新大門商店街。ここは知る人ぞ知る、ちょっとディープなスポットだ。どんな場所なのか、ご興味のある方は以前に書いたこちらの記事
https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00706/
を読んでいただくとして、今回はそんな新大門商店街にできたsoiro building(ソイロ ビルディング)について書いてみようと思う。
スーパーマーケットや衣料品店、喫茶店や居酒屋など約50店舗が並ぶ新大門商店街に誕生したsoiro building 。3階建てのビルを活用し、暮らしに関わるさまざまな品を集めた「くらしのマーケット(仮称)」や、飲食スペース「キッチン soiro(仮称)」を併設した地域のコミュニティスペースを、2021年いっぱいをかけて作る予定だという。
2021年4月、その足がかりとなるDIY ショップ「工房 soiro(ソイロ)」がビルの1階にオープンした。1日たったの500円で誰でも利用できる木工専門のDIYショップ。いったいどんなところなのか、お邪魔してきた。
気軽にモノづくりに触れてもらいたいという想いから生まれた工房。持ち込みもOK
DIY初心者から上級者まであらゆる人が楽しめるモノづくりスペースとしてオープンした「工房 soiro(ソイロ)」。一番の魅力は1日500円という破格な料金で作業スペースを借りられる点ではなかろうか。
運営するsoiro living合同会社の代表、川端風見(かぜみ)さんと松本啓太さんにお話を伺った。
「1時間500円くらいで貸しているところはあると思いますが、1日500円はないと思います(笑)。そもそもDIYってけっこう時間がかかりますし、半日場所を借りるとなると費用がかさみますよね。そうなると作るより買ったほうが安いじゃないか、という話になってしまう。
だからお試し価格で場所や材料を提供できる場所を作りました。僕らの技術とかノウハウも提供しながらDIYのハードルを下げたいと思っているんです」と、想いを語る川端さん。
もっと気軽にモノづくりに触れてもらいたいという想いから生まれた工房。初心者でも川端さんや松本さんが手ほどきをして、木材の寸法の測り方や切り方など、初歩から教えてくれるのだとか。
騒音が気になる、ほこりが立つ、といった理由で、自宅ではやりづらい作業もここでなら気兼ねなくできそうだ。他店で購入した材料も自由に持ち込みができる点もありがたい。創作活動だけでなく、自宅で使っている椅子やテーブルなどを持ち込んでリメイクすることも可能だ。
電動工具も使い放題
木工専用の電動器具を置いているため、自宅ではなかなかできない大物の加工もできる。
川端さんらにお願いして木材の加工をしてもらう場合は、料金はカット・穴開け各50円/1回、厚み変更100円/1回。自分で電動工具を使うのはちょっと怖いという人は、お願いしてみるといい。
工具のレンタル、材料のサイズ調整、組み立て、塗装などワンストップでやれるのはDIYerにとってはありがたい限りだ。
工房の隣にはショップも併設。解体作業で出た廃材やプロジェクトで残った木材をDIY用に販売している。木材は30センチ単位で50円ずつ料金がアップ。幅や長さや形が違うものばかりだが、丸ノコなどを使えば、その場でサイズをそろえることもできる。
「古い材料はそのまま使っても味わい深いものができますし、気になるところを削ればきれいになるものもあります。古いから、余ったから捨てるではなく、新しいものへ変換させて新たな価値を生み出すことの楽しさを感じてもらえたらうれしいです」(松本さん)
材料を見ながらアイデアを練っている時間もまた楽しいものだ。
小さなアップデートを繰り返しながら生活していく心地よさを提案したい
川端さん、松本さんがコンセプトに掲げるのは「暮らしのアップデート」。DIYで新しいものを作り出すだけでなく、今まで使ってきたものを自分の手でリメイクして使う方法も提案している。
「そもそも日本人は我慢強い民族。ちょっとくらいの不便は我慢してしまうことが多いと思うんです。でも、机にしてもちょっと高さを変えるとか、引き出しをつけてみるといったことで使い勝手がよくなって、よりよい暮らしが実現できる。そういった小さなアップデートを繰り返しながら生活していく心地よさを僕らは提案したいんです」と川端さんと松本さんは口をそろえる。
「工房soiro(ソイロ)」の母体である「soiro living(ソイロ リビング)」はリノベーションや家具のリメイクを手がける会社。このコロナ禍において、相談件数が増えているという。
「僕らも驚いているのが、ダイニングまわりの悩みの多さです。テーブルの塗り替えやサイズ変更の相談が非常に増えました。家で過ごす時間が長くなって、よりリラックスできる空間づくりというものに皆さん目を向けているのだなと感じています」と川端さん。
外食する機会が減り、自宅で食事をとる機会が増えた人は多いだろう。今まで気にならなかった、もしくは気にはなっていたが見てみないふりをしていたことが、嫌でも目に入るようになってきた人が多いのかもしれない。
椅子や小さめのテーブルなどは工房へ持ち込んでくる人も多いという。実際に取材させていただいている間にも、ご近所さんがテーブルを持って来店していた。参考までに作業内容を教えてもらったところ
〇サイズカット 〇テーブルの角丸加工 〇既存塗装の剥離 〇オイル仕上げ
を実施して2,000円(税別)となったそうだ。
「古くなったら買い替えるか我慢して使うという2択で考えている人も多いと思いますが、作り替える、直して使うという新しい選択肢を提案できればいいなと思っています。モノには使ってきた人の歴史や思い出がある。それを自分の手で変換させていけたら充実感を得られるし、この先も大切にしたいという想いが生まれると思うんですよね」と川端さんは話していた。
DIYのスキルをかじれるワークショップは誰でもいつでも参加できる
「工房soiro」には誰でも気軽にDIYを体験できるようにと、いつでも好きなときに参加できるワークショップも用意されている。カット、穴開け、塗装などのスキルをちょっとずつかじれる「家型ペン立て」作りやコースター作りなど、子どもでも気軽に参加できるものばかりだ。
ふらりと立ち寄って気軽にモノづくり体験ができて、お二人としゃべっていると、アレもコレも作ってみようとか、壊れたあの家具を直してみようかな、など妄想が膨らみそうだ。
新大門商店街を訪れるひとつのきっかけに
オープンから1ヶ月。商店街の人たちにも少しずつ認知されるようになってきたという。
そういえば、お二人はなぜこの場所に拠点を作ったのだろう。
川端さんは「単純にこの商店街が好きになっちゃったんです(笑)。いくつか商店街を見てまわった中で、いろんな世界観が入り交じっているこのまちの雰囲気に、ほかにはないコミュニティの魅力と可能性を感じてワクワクしたんです」と笑顔で答える。
さらに松本さんは「新大門商店街の面白さを発信していくことができれば、まちとしてもよい循環が生まれるんじゃないかと期待しているんです。まずは『工房soiro(ソイロ)』がまちを訪れるひとつのきっかけになったらうれしいですね」と話してくれた。
暮らしのアップデートからまちのアップデートまで。期待が高まる「soiro building」
ベビー用品店があった築50年以上経つビルをリノベーションした「soiro building」。ここで暮らしてきた人たちの思い出も大切にしたいと、当時から置いてあるベビー服用のトルソーをショーウインドーに飾り、元の店舗の面影を残している冒頭でも紹介したが、soiro buildingには2021年いっぱいをかけて2階と3階にコミュニティスペースやマーケット、飲食スペースがオープンする予定だ。
「古くなった家や家具は使ってきた人の歴史や思い出がある。そこにアイデアをプラスして変換させていけば思い出も残るし新しい生かし方が生まれる」とは、松本さんの言葉。
これはまちづくりに置き換えることもできそうだ。
古くから続く商店街にアイデアをプラスしてまちを循環させる―。
soiro buildingの立ち上げは、「暮らしのアップデート」を掲げるお二人による“まちのアップデート”となりそうだ。
【取材協力】
soiro building
https://www.soiro.net/sb
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