太陽光発電装置の普及の一方で設置時の知られていないリスクとは…

「太陽光発電装置」と聞いて一般的に想像されやすいこうしたタイプは、施工時に屋根をあける必要がある。実はその工事が、将来的なリスクにつながるという「太陽光発電装置」と聞いて一般的に想像されやすいこうしたタイプは、施工時に屋根をあける必要がある。実はその工事が、将来的なリスクにつながるという

太陽光・水力・風力などの再生可能エネルギーが注目を集めている。二酸化炭素や有害物質の排出を抑えることができるといったメリットのほか、電力自由化へ向けた動きも伴って、家庭単位でも発電装置を設置する動きが広まっている。

最も一般家庭に普及している再生可能エネルギーの装置といえば、太陽光発電装置だろう。国土交通省が発表した「平成26年度住宅市場動向調査」によると、新築の注文住宅への太陽光発電装置装備率は平成22年度調査の24.6%から42.7%と、4年で2倍弱にまで上昇し、平成27年か28年には半数を超えるのではという勢いだ。
しかし、実はあまり知られていないリスクや、そもそも太陽光発電装置を設置したくてもできない場合もあるのをご存知だろうか。

一般家庭の太陽光発電装置は屋根に取り付けられることが多いが、実は取り付けの際に必要な、屋根に穴をあけることによるリスクもあるという。
そうした太陽光発電装置のもつ課題に着目し、“屋根に穴をあけない”工法を開発している企業があると聞き、株式会社オルテナジーに取材してきた。

数枚の太陽光パネル設置で100個単位の穴があくことも

一般的な施工時に屋根にあける穴。ごく小さな穴だが、この一部分だけでも10個以上があけられている。屋根全体に太陽光パネルを設置するとなると、相当の数になることがうかがえる一般的な施工時に屋根にあける穴。ごく小さな穴だが、この一部分だけでも10個以上があけられている。屋根全体に太陽光パネルを設置するとなると、相当の数になることがうかがえる

通常、一枚の太陽光パネルを設置するために、屋根面に2~4つの金具を付けるのが一般的な工法だ。その際、1つの金具につき4~10箇所をネジで固定していく必要がある。全体で見ると、「太陽光パネルの枚数×金具の数×ネジの数」の穴が屋根にあくと考えると、数ミリ程度の大きさとはいえ結構な数になることがわかるだろう。そして当然ながら、屋根の防水構造や断熱材にも同じ数の穴があくことになる。

「一般の方にアンケートを実施したところ、“太陽光発電装置の設置の際に屋根に穴をあけることを知っている”と答えたのは、わずか13.6%でした」と話すのは、株式会社オルテナジー 営業グループ マーケティングチームの田中圭亮氏だ。新築の注文住宅の約半数にも届く勢いで普及されている太陽光発電装置だが、その施工方法についてはあまり知られていないのが現状のようだ。

さらに、「設置のための穴は構造部分の垂木に向けてあけなければならないのですが、屋根の上から垂木を見つけるのは容易ではありません。もちろん工事はプロによって行われますが、人間が行う以上、誤って必要のない穴をあけてしまう可能性もあるということです」(田中氏)

屋根にあいた穴には、気密性や防水性のためにコーキング材で隙間を塞ぐ対応が施される。しかし、それも万全とは言い切れないと田中氏は話す。
「コーキング材の寿命は、物によりますが約7~8年と言われています。それに対して太陽光発電システムの法的耐用年数は約17年。あまり知られていませんが、実際に報告されている雨漏り被害もありますし、その将来的なリスクは十分にあると考えて良いんです」

また、穴をあけることで水が溜まった場合の排水の都合により、勾配の小さい屋根には設置さえできないケースもあるという。
穴をあけることを知っている人が僅か13.6%だとすれば、こうしたリスクについても知っている人は少ないということではないだろうか。もちろん、そのような被害が将来必ず起こるということではないが、もし雨漏りなどが発生すれば、その被害によって家の資産価値の低下にもつながるだろう。

「大切な家に穴をあける」ということ

同社がこの課題に取り組むことになったのは、創業者であり、現会長の高橋元廣氏が、「作ってその場で使える」という太陽光発電の可能性に魅力を感じてこの領域での事業を開始し、すぐにそれに伴う課題に着目したのがきっかけだという。

「そもそも”大切な財産である家に穴をあける”ということを問題視しました。建築の観点では、建物に穴をあけるのは当然良くないこと。思いの詰まった家に、雨漏りによって家族の健康に影響を与えかねないようなことはするべきではないと考えたことで、穴をあけずに設置できる太陽光発電装置の開発につながりました」と、同社の由布エリ子氏。確かに、屋根は穴をあける前提でつくられていないし、建築後の家に穴をあけるというのは、建築の世界では結構なイレギュラーな出来事だろう。

そうして、屋根に穴をあけずに設置できる太陽光発電装置として開発されたのが「シンプル・レイ」だ。

「シンプル・レイ」は、屋根の形状に合わせて縦横に格子状に架台を組み、それらを雨樋が通してある軒板の部分に固定する。屋根材には一切穴をあけずに、軒の下に数箇所、小さい穴をあけて固定するのみなのだ。
また、メリットは「穴をあけない」ことだけではない。実は太陽光パネルは統一された規格がなく、メーカー毎に大きさが異なる。そのサイズに合わせて設置工事を行うため、将来的に異なるメーカーの最新パネルへ付け替えようとしても金具の位置が合わず難しい場合が多いのだという。「シンプル・レイ」は格子状に設置された架台を可動式にすることで、異なるメーカーのパネルへの付け替えも可能にするのだ。また、穴をあけずに屋根に合う形状で架台を設置するため、そもそも設置できないということも少なくなる。

田中氏は、「家に傷を付けずに守り、せっかく設置した“付加価値”である太陽光発電装置を長く使って、家も太陽光発電装置も、次の次世代に受け継いでほしいという思いを込めています」と話す。

上、左下)屋根の形状に合わせて架台を設置するため、屋根によって太陽光パネルを設置できないということが少ないという</br>右下)架台は軒部分に小さな穴をあけて固定する。そのため屋根材には一切穴をあけずに設置が可能となる上、左下)屋根の形状に合わせて架台を設置するため、屋根によって太陽光パネルを設置できないということが少ないという
右下)架台は軒部分に小さな穴をあけて固定する。そのため屋根材には一切穴をあけずに設置が可能となる

住まいに設備を導入するときは、いろいろな観点での判断が必要

今回お話をうかがった、株式会社オルテナジー 営業グループ マーケティングチーム リーダーの田中圭亮氏(左)と由布エリ子氏(右)今回お話をうかがった、株式会社オルテナジー 営業グループ マーケティングチーム リーダーの田中圭亮氏(左)と由布エリ子氏(右)

太陽光発電装置によって家を傷つけることなく守る。そして、将来の取り替えも可能な自由度も与え、本来の付加価値を一層高める。そのうえでそれらを次世代に残していく。そんな理念の中から生まれた「シンプル・レイ」。普及している穴をあける工法と比較すると、現状でコストは2割程度高くなるという。しかし太陽光発電という設備をより良いかたちで普及したいという思いで改良を進めているという。

「現状、自宅に太陽光発電を導入する家庭の多くは、”いかに売電するか”など金銭的なメリットや収支に視点が行きがちです。しかし、近い将来は売電するよりも自宅で使用した方が得になる時代がきて、収支ではなく”いかに安定した電気を確保できるか”という視点に変わっていくと思います。エネルギーを”地産地消”できるという太陽光発電の基本的な価値を、より多く受け継いでいくため、『シンプル・レイ』の全国への供給体制も拡大中です。皆が安心できて、便利に電気を使える。そんな未来を目指しています」(由布氏)
今後、コストカットや強度を上げるなどの改良、地方の施工会社への研修なども強化して、より安全で使いやすい太陽光発電装置を日本中に広めていきたいと話してくれた。

今後、エネルギーの問題がさらに加速し、太陽光発電に限らず、一般家庭での省エネ設備の設置が増えていくだろう。そうしたとき、目先の設置費用や導入の手軽さにとらわれるのではなく、長期的なメリット・デメリットも調べて考慮したうえで、総合的に判断できる視点をもつことが私たち消費者に必要な姿勢だろう。

2015年 07月10日 11時00分