一番多く売れている窓は「樹脂とアルミの複合サッシ+複層ガラス」の組み合わせ

住宅の断熱の大切さが言われるようになって久しい。しかし未だに日本の住宅は、世界的に見て、断熱性能が低いことで有名である。断熱性能が低い家は、外気の影響を受けやすいため、冬に寒く夏に暑い。当然、冷暖房に過大なエネルギーが必要となり、また住む人の健康にも悪影響を及ぼすことが明らかになっている。

住宅の断熱性能で大きなカギになるのが窓である。窓は、屋外の景色や太陽の光、自然の風を採り込む大切な部位だが、その分エネルギーの出入りが大きく、断熱の弱点になりがちだ。窓の性能いかんによって、室内の快適性や家庭でのエネルギー消費量は大きく変わる。

窓の断熱性能は「熱貫流率」と呼ばれる熱の伝えやすさを表す値で表される。これは数字が小さくなるほど性能が高い。経済産業省が定めた「省エネ建材等級表示区分」では、最高等級とされる星4つの熱貫流率は2.33以下であるが、ドイツでは1.3を最低基準としていて、他の欧州各国や中国、韓国と比較しても、日本の基準値はかなり低い。この数字だけ見ても、日本の家の断熱の貧弱さが分かる。

しかも日本では、住宅の断熱性能に関しては、守るべき基準が定められていない。「省エネルギー基準」と呼ばれる断熱性能や住宅設備機器のエネルギー消費の効率性に関する「指標」は存在するのだが、義務化はされていないのだ。実は2020年に新築住宅の省エネ基準への適合義務化の予定があったのだが、現在は延期になっている。先進国において住宅の省エネに関する基準が法律で定められていない国は珍しい。

では実際の住宅建築の現場では、どんな窓が選ばれているのだろうか。窓・サッシメーカーの出荷数からその実態が分かるのではないかと思い、YKK AP株式会社に最新の売れ筋や傾向、人気のデザイン、お勧め製品などについても聞いてみた。

窓は「サッシ」や「フレーム」と呼ばれる枠や框部分と、「ガラス」で構成され、その組み合わせによって断熱性能が異なる。日本で出荷数が多い組み合わせは以下の4種類で、製品やガラスの種類にもよるが、断熱性能を高い順から並べるとおおよそ以下のようになる。
(※YKK APの代表窓サイズの熱貫流率データ/カタログ「樹脂窓シリーズ」より)

1. 樹脂フレーム+トリプルガラス (熱貫流率0.90)
2. 樹脂フレーム+複層ガラス (熱貫流率1.31)
3. 樹脂とアルミの複合サッシ+複層ガラス (熱貫流率2.33)
4. アルミサッシ+複層ガラス (熱貫流率4.65)

最近の出荷数で一番多いのは下から2番目の性能の「樹脂とアルミの複合サッシ+複層ガラス」で、全体の約39%を占めるそうだ。次が、1番性能が低いアルミサッシ+複層ガラスの組み合わせで34%、上位性能の樹脂窓2種類は2つ合わせて27%程度とのことだった。

窓はガラスだけでなくフレームの性能も重要となり、樹脂フレームはアルミサッシに比べて熱の伝わり方が1,400分の1程度とされている。ガラスに関しては単板ガラスを選ぶ人はほとんどいないそうだが、最新の出荷状況でも断熱性能が低いアルミサッシの販売数が多いのが目につく。

上:出荷数が多いフレーム+ガラスの組み合わせ4種。一番売れているのは下から2番目の性能、図では左から2番目の「樹脂とアルミの複合サッシ+複層ガラス」<BR>
下:お話を伺ったYKK AP株式会社広報室の清水宏則氏と南雲歩氏。品川にある「プロユーザー向け「体感ショールーム」にて上:出荷数が多いフレーム+ガラスの組み合わせ4種。一番売れているのは下から2番目の性能、図では左から2番目の「樹脂とアルミの複合サッシ+複層ガラス」
下:お話を伺ったYKK AP株式会社広報室の清水宏則氏と南雲歩氏。品川にある「プロユーザー向け「体感ショールーム」にて

樹脂窓の普及が遅れる日本。海外では樹脂が安く、日本ではアルミが安い

これは家造りの際に、どこに費用をかけるかという話につながる。日本では概して便器やキッチンなどの設備機器類にはお金をかけるが、住宅の性能、特に断熱に関しては効果が見た目に分かりにくいためだろうか、優先度が落ちるきらいがある。

簡単に言えば、樹脂窓は高性能ではあるがアルミサッシより値段が高いため、窓のすべてを樹脂窓にするとなると、費用がかさむのだ。しかし樹脂窓の普及が遅れた理由のひとつに、日本の技術力の高さがあるとYKK AP株式会社広報室の清水宏則氏は言う。

樹脂窓はドイツが発祥国といわれているが、寒さが厳しいヨーロッパやアメリカでは既に半数以上が樹脂窓であり、韓国においては80%、中国でも30%の普及率となっている。それに対し日本での普及率は未だ20%(※図表を参照)にとどまっている。

実は多くの国では、樹脂窓はアルミサッシよりも安価に製造ができるという。安いうえに断熱性能が高いのだから、樹脂窓の普及がスムーズに進むのは当然と言える。

しかし日本では、優れた加工技術で、精度が高いアルミサッシを安価に量産できるようになったため、安く高品質なアルミサッシの普及が爆発的に進んだ。現在でも、樹脂窓はアルミサッシより値段が高い。このような事情も、日本で樹脂窓の普及が遅れた原因のひとつとなっているという。

YKK APでは2009年に樹脂窓の全国展開をスタートさせている。当初は話題にもならなかったそうだが、ここ数年、住宅の断熱の大切さが叫ばれるにつれ、樹脂窓の出荷が急激に伸びているとのこと。樹脂に対する品質面でのイメージ、例えば劣化、色落ち、変形などへの不安が払拭されることで、積極的に樹脂窓を選ぶ人が増えているとのことだった。

世界の標準となりつつある樹脂窓。日本での普及は遅れている(資料提供YKK AP株式会社)世界の標準となりつつある樹脂窓。日本での普及は遅れている(資料提供YKK AP株式会社)

断熱性能は数字で聞いても分からない、5種類の窓の部屋を体感できるショールーム

では実際に窓でどれだけ室内環境が変わるのか、品川にあるYKK APのプロユーザー向け「体感ショールーム」で体験をしてきた。

窓の性能といっても、数字や話だけではイメージが湧かない。そこでこのショールームでは真夏の日差しを受けた際の遮熱性能や、窓の開き方によって異なる風の流れなど、窓に関するさまざまな体感ができるよう工夫されている。消費者が快適な住まいを実現するためには、設計・建築するプロが窓を理解することが重要であるというコンセプトで作られたショールームだ。

なかでも圧巻は、窓が室内環境へどのような影響を与えるのかを体感できる、AからEまでの5つの部屋である。それぞれ断熱性能が異なる窓が取り付けられていて、部屋の外は0~5度程度に設定されている。5つの部屋はそれぞれ22度設定の暖房室と非暖室に分かれていて、冬の寒い日に家の中で暖房をつけた部屋と、そうでない部屋を想定した空間になっている。

1つ目の部屋、Aは昭和55(1980)年の省エネ基準で作られていて、窓はアルミサッシと単板ガラスの組み合わせ、天井、壁、床はその時代の断熱材が入っている。エアコンで暖房されている部屋にもかかわらず冷気を感じる。サーモグラフィで温度分布を見ると、暖房室のガラス面は10.5度、非暖房室に至ってはガラス面は3.1度、窓枠は1.8度、室温は10.0度であった。

Bは平成28(2016)年省エネ基準で、C、D、Eと進むに従って、部屋の断熱性能が上がっていくのだが、暖かいと感じることができたのはD以降の部屋だった。Dは樹脂フレームにLow-E複層ガラスの組み合わせで、天井、壁、床の断熱材は平成28年基準よりさらに追加をしている。サーモグラフィで見ると、暖房室のガラス面は16.9度、非暖房室であってもガラス面は12.2度、窓枠は10.8度、室温は16.2度であった。

数字だけでは具体的にイメージしにくいかもしれないが、実際に体感すると驚くほどの差がある。Aの部屋ではコートを脱いでいたら、冷気でぞくっとするほどであり、特に窓のそばに近寄るとあまりの寒さにすぐに逃げ出したほどだった。D以降の部屋ではごく普通に過ごすことができた。

このショールームは、検討・契約中の建築、設計関係者と同行することが必要で予約が必須だが、建築、設計関係者の推薦があれば同行者がいなくても予約は可能とのこと。窓の大切さを身体で知ることができるので、新築やリフォームを検討している人は、ぜひ体感してほしい。

窓の断熱の大切さを身体で知ることができる5つの部屋。Bの平成28年の省エネ基準の部屋でもかなり寒い。日本の住宅は、設備は一流だが、断熱性能に関してはかなりお粗末であることを実感させられる窓の断熱の大切さを身体で知ることができる5つの部屋。Bの平成28年の省エネ基準の部屋でもかなり寒い。日本の住宅は、設備は一流だが、断熱性能に関してはかなりお粗末であることを実感させられる

性能向上で中古に新築以上の価値を与える、「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」

今後、住宅の断熱性能の向上を図っていくためには、消費者へのさらなる周知はもちろんのこと、事業者側にも深い理解と技術が必要となる。YKK APでは2017年から、全国各地の事業者と連携し、“古くなった建物に、新築以上の価値を与える”をコンセプトにした「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」に取り組んできた。

新築においては少しずつではあるが断熱に関する理解が深まり、性能も向上している。しかしリフォームではまだまだ進みが遅いため、まずは事例を作るところから始めようということでスタートしたプロジェクトだそうだ。

実証プロジェクトでは、これまで新築を中心に手がけてきた工務店などとタッグを組み、高性能樹脂窓や開口部耐震商品などを使って、一般的な新築住宅の性能を超えるレベルへ再生する試みがなされている。2019年には、北海道、神奈川、京都、神戸、福岡の5物件を手がけ、全国の建築関係者と性能向上の技術やノウハウを共有するために、さまざまな見学会が開催された。

この試みが高く評価され、2019年にはリノベーション協議会で実施されているリノベーション・オブ・ザ・イヤーの無差別級部門最優秀を受賞している。

なかでも京都の物件「京都 醍醐の家」は、なんと築100年を超える木造町家住宅で、景観保全の規制に配慮しながら、高性能な住宅へと再生された。そこで使用されたのは樹脂窓の木目仕様で、断熱性能は改修前の7倍以上に向上している。

住宅の省エネ化は現在の日本の住宅建築において重要な課題であり、各地でさまざまな取り組みがなされている。しかしながら、2020年に予定されていた住宅の省エネルギー基準の適合義務化の延期は、この流れに水を差すことになってしまった。日本の住宅性能の向上のためには、消費者と事業者が一体になって知識を蓄え、広めていくことが重要になるだろう。

左上:リノベ前、左下:工事中、右:完成<BR>
古くなった建物に新築以上の価値を与える「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」、2019年に計画竣工した「京都 醍醐の家」
左上:リノベ前、左下:工事中、右:完成
古くなった建物に新築以上の価値を与える「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」、2019年に計画竣工した「京都 醍醐の家」

ステンカラー人気から自分らしい選び方へ、黒色サッシの人気が復活

さて窓に関しては、デザインが気になる人も多いことだろう。今人気の窓のカラーやデザイン、おすすめの窓についても聞いてみた。

窓のカラーには流行がある。シルバー1色だった時代から、ブロンズ色が人気となり、黒や白、最近はグレーをよく見る。清水氏によると、最近は今までのような偏ったブームはあまり感じられないという。

直近までは圧倒的にステンカラー(シャイングレー)が人気で50%ほどを占めていたそうだが、最近はステンが少し減少傾向にあり、黒色が復活、その他の色もバランスよく増えているそうだ。最近はインテリアでも同じような傾向が見られ、流行に沿って右へ倣えをするのではなく、自分らしさや個性を大事にする人が増えている。

人気の窓デザインは、庭に向かって大きく開く「大開口テラス戸」だそうだ。できるだけフレームの存在を感じさせないようシンプルでモダンなフォルムが特徴的で、下枠がフラットな形状なので床の段差が小さく、内外の一体感を演出してくれる。

最後に、窓のプロから見て、どの程度の性能の窓を選ぶといいかを聞いてみたところ、「樹脂窓+トリプルガラス」との答えが返ってきた。予算があると思うので、全部とは言わないが、せめて健康に関わる水まわりだけでも性能を上げてもらえればとのことだった。

確かに浴室リフォームの際、せっかく素晴らしいシステムバスが取り付けられているのに、なぜか窓だけは昔のままという家を何度か見たことがある。浴室の寒さが原因で起きているヒートショック現象を防ぐためにも、窓も忘れずに見直すことが肝心だ。

日本の家は窓が大きい。大きいからこそ性能が大事である。至極単純なことなのだが、性能は目に見えないためこれまで後回しにされやすい部分だった。清水氏も、窓の断熱性能の大切さをどうやって伝えるか、日々苦心をしていると言う。

まずは冬の寒い日に窓際に立ってみてほしい。暖房しているのに窓際だけが寒かったり、冷たい空気の流れを感じたり、足元が寒かったりしたら、それはわが家の窓を見直すサインなのである。

取材協力:YKK AP株式会社

家の内と外をゆるやかにつなぐ人気の大開口テラス戸。窓が大きくなればなるほど性能が重要になる家の内と外をゆるやかにつなぐ人気の大開口テラス戸。窓が大きくなればなるほど性能が重要になる

2020年 02月22日 11時00分