手持ち花火、打ち上げ花火……日本人の夏の楽しみ

最近は家庭で楽しめる花火もバリエーションが増えてきた最近は家庭で楽しめる花火もバリエーションが増えてきた

日本の夏といえば花火……。
家庭で楽しむ花火といえば、線香花火などの手持ち花火が人気である。近頃は、水の上に置いて火をつけると、泳ぐように水面を走る金魚花火や、本格的なナイアガラ、50個ものパラシュートが飛び出す落下傘花火など、ユニークな花火もたくさん出てきた。

また、昔から庶民に親しまれてきた線香花火は、コストと手間の問題からか国産品は1998年頃から一時期姿を消した。つい最近まで、線香花火の生産地は中国が当たり前のようになっていたが、最近、新たに純国産品をつくろうとまた国産の線香花火も増えつつある。国産線香花火は高価な分、火花が大きく飛び散るうえ火玉が落ちにくいので、はかなく美しい花火を長く楽しみたい人には人気のようだ。手持ち部分を花びらのように仕上げた高級線香花火もあり、バリエーションも増えつつある。

しかしなんといっても、夏の風物詩といえば打ち上げ花火だろう。
この時期、全国津々浦々で花火大会が開催されており、多くの人々が楽しむイベントとなっている。もっとも歴史の古い隅田川花火大会は、100万人近い観客を動員しているし、そのほか、東京では江戸川のエキサイティング花火大会の人気が高まっている。また、大阪でも天神祭りの奉納花火に130万人もの観客が集まっている。北は北海道の道新納涼花火大会、南は沖縄の浦添てだこまつりと、全国で毎年1000前後の大会が開催されているようだ。

花火はいつから楽しまれていた?

花火の歴史は、どのようなものなのだろうか?
ルネッサンスの三大発明といわれるのは、羅針盤・火薬・活版印刷だが、実はこれらすべて、中国から伝来したもの。ヨーロッパで改良されてはいるが、端緒は中国にある。花火も6世紀ごろの中国で生まれ、ルネッサンス期のイギリスで発展した。中国で発明された当初の花火はロケット花火のようなもので、武器として使用されたとの説もある。その後どのように花火が進化したのか、詳細はわからないが、イギリスのヘンリー8世は水上花火を楽しんだというから、16世紀にはすでに、現代の花火に近いものになっていたのかもしれない。

日本で花火の製造が始まったのは、鉄砲伝来とほぼ同時期のようだ。どちらも火薬を使用するから、花火の技法も鉄砲と一緒に輸入されたのだろう。
新しいもの好きで知られる織田信長が花火を目にしていたのかもしれず、もし、本当にそうであればさぞかし喜んだであろう。『信長公記』第十四巻の冒頭、天正九年辛巳に「御爆竹の事」という記事があり、これが日本で初めての花火大会だという説もある。ただし「正月八日、御馬廻御爆竹用意致し、頭巾装束結構に致し、思ひ貼の出立にて、十五日に罷り出づべきの旨、御触れあり」とあり、小正月の時期であるため、左義長(とんど)が開催されただけだとも考えられ、花火だとしても、どのようなものか一切わからない。

現在見つかっている資料から考察して、私たちが見ている打ち上げ花火に近いものを初めて見た日本人は、徳川家康と考えるのが定説らしい。『駿府政事録』の中に「二之丸立花火」の記事があり、英国王ジェームズ1世の使者・のジョン・セーリスが、駿府城で披露したと伝えられている。

「玉屋」「鍵屋」、江戸庶民に愛された花火

江戸時代になって戦がなくなり、火薬の使い道が激減すると、火薬屋たちは花火を扱うようになる。日本最古の花火大会である、隅田川花火大会が始まったのは、享保18年(1733)。当時は「両国川開き」と呼ばれていた。このときに花火を打ち上げたのは、日本最古の花火業者である鍵屋で、万治2年(1659)に売り出した玩具花火のヒットで、繁盛していたという。約150年後の文化5年(1808)、鍵屋の番頭が独立して始めたのが玉屋。これ以降は、両国の川開きで、両国橋の上流を玉屋、下流を鍵屋が担当するなど、ライバルとして、さらに発展したようだ。
しかし、江戸庶民が見ていた花火は、現在のように様々な色のあるものでなく、白っぽいものだったらしい。
マグネシウムなどの金属粉を利用した、色鮮やかな花火が登場するのは大正時代になってからで、現在では炭酸ストロンチウム(赤)や硝酸バリウム(緑)、タンサンカルシウム(黄)、酸化銅(青)などを組み合わせ、さらに華やかな花火が生み出され続けている。

日本最古の花火大会は、享保18年(1733)に始まった両国川開きだった日本最古の花火大会は、享保18年(1733)に始まった両国川開きだった

花火には、鎮魂の意味もある

京都五山の送り火のひとつ「大文字」。2016年は8月16日20時に点火予定京都五山の送り火のひとつ「大文字」。2016年は8月16日20時に点火予定

しかし花火は、ただ美しいだけのものではない。日本人にとって火は、鎮魂の意味を持つからだ。
意外に思われるかもしれないが、お盆の迎え火や送り火を思いだせば、納得いただけるだろう。炎は不浄なものを焼き尽くし、闇を照らすものなので、古来神聖なものとされてきた。「日」も「火」も同じく「ひ」と読むように、太陽に等しい存在でもあり、人々が文化的生活を送るために不可欠なものでもある。だから日本人は、死者を尊び、慰めるために、特別な炎を燃やしたのだ。

実際に、鎮魂を目的に始められた花火大会も少なくない。
たとえば、隅田川花火大会が始まったのは倹約を旨とする享保の改革真っ只中。そんな折に贅沢な花火大会が始められたのは、大飢饉と疫病の流行で亡くなった人の魂を鎮めるためだった。
また福島県では、東日本大震災で犠牲になった人々を慰霊するため、震災の年から毎年8月16日に、四倉鎮魂・復興花火大会を開催している。
花火大会がお盆前後に開催されることが多いのは、日本人にとって特別な意味ももっている。

花火を通じたまちの活性

また、花火は楽しむだけでなく、まちづくりにも一役買っている。
花火の生産地をみてみると、玩具花火の全国生産の約16%を西三河地域の企業が占めており、打ち上げ花火の生産日本一は長野県だという。西三河は徳川家康が三河にのみ火薬製造を許したから、長野県は気候が乾燥しており、山間部には人家が少なく、危険な火薬を扱うのに都合が良いからなど、それぞれに事情が違うが、両自治体にとって花火は、大切な地場産業となっているようだ。その品質の良さから、海外のイベントなどでも日本の花火は人気が高いらしい。

さらに、花火大会には、近年日本人だけでなく外国人観光客などたくさんの人が集まるようになった。まちおこしや観光誘致にも役立っているようだ。こうしてみると、花火や花火大会は、日本の景気回復にも少なからず寄与しているのかもしれない。

夜空に花開く美しい光と音を楽しめ、多くの人々を呼び込める花火大会……。
今年はすでにいくつかの花火大会が開催されているが、関東なら神宮御苑花火大会や藤沢市の納涼花火大会、関西なら、いたみ花火大会や守口市の花火大会など、お盆を前に、まだたくさんの大会が開催が予定されている。

花火の歴史や意味を知ると、楽しみ方もまた拡がるかもしれない。地域によってはこれからの花火大会もあるようなので、ぜひ、花火見物に出かけてみてはいかがだろうか。

※8/15以降の全国の花火大会の一例(2016年8月4日調べ)
8/15 福山夏まつり2016 あしだ川花火大会(広島県福山市)
8/15 諏訪湖祭湖上花火大会
8/16 とうろう流しと大花火大会(福井県敦賀市)
8/20 神宮外苑花火大会
8/21 映画のまち調布“夏”花火2016
8/27 大曲の花火(秋田県大仙市)
8/27 しまんと納涼花火大会(高知県四万十市)

夜空に花開く美しい光と音に、多くの人々が集まる夜空に花開く美しい光と音に、多くの人々が集まる

2016年 08月08日 11時07分