住環境の変化に対応した改正

建築基準法は、一戸建てやマンションも含め、ほぼすべての建築物にかかわる法律だ。同法は、「国民の生命、健康および財産の保護」を目的に、建築物の守るべき最低限の基準を定めている。

しかしながら、私たちの住環境は日々変化している。最近では、密集して建てられていた木造建築物が大規模火災を引き起こす惨事があった。主な例としては2016年12月に発生し、120棟を全焼させた新潟県糸魚川市の大規模火災などがある。この火災が広範囲にわたった要因の一つには、木造建築物の老朽化もあった。
また、空き家の数はここ20年で1.8倍に増加しており、用途の変更などによる利活用も検討する必要が出てきている。
さらに昨今の間伐などをせずに放置された人工林は、日光が地面に差し込まないために下草が生えず、土砂崩れなどの原因となっている。したがって、建築物への木材の積極的な活用も必要だろう。

このような背景から、建築基準法が2018年6月に一部改正されることが公布(公表)された。一部は同年9月にも施行されているが、全面施行は2019年6月25日だった。この改正によって私たちの住環境にどのような影響があるのか考えてみよう。

今回改正されたのは7項目

2019年6月に施行された改正建築基準法の内容は次の7項目だ。

1.密集市街地等の整備改善に向けた規制の合理化
防火地域や準防火地域における延焼防止性能の高い建築物について、建ぺい率を10%緩和するとともに、技術的基準を新たに整備する。

2.既存建築物の維持保全による安全性確保に関わる見直し
既存不適格建築物に関わる指導・助言の仕組みを導入する。また、維持保全計画の作成が必要となる建築物等の範囲を拡大する。

3.戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化
耐火建築物等としなければならない3階建の商業施設、宿泊施設、福祉施設等について、200 m2未満の場合は、必要な措置を講じることで耐火建築物等とすることを不要とする。また、200m2以下の建築物の他用途への転用は、建築確認手続きを不要とする。

4.建築物の用途転用の円滑化に資する制度の創設
既存建築物について二以上の工事に分けて用途の変更に伴う工事を行う場合の全体計画認定制度を導入する。また、建築物を一時的に他の用途に転用する場合に一部の規定を緩和する制度を導入する。

5.木材利用の推進に向けた規制の合理化
耐火構造等としなくてよい木造建築物の範囲を拡大するとともに、中層建築物において必要な措置を講じることで性能の高い準耐火構造とすることを可能とする。また、防火・準防火地域内の2m超の門・塀について一定の範囲で木材も利用可能とする。

6.用途制限に係る特例許可手続の簡素化
用途制限に係る特例許可の実績の蓄積がある建築物について、用途制限に係る特例許可の手続において建築審査会の同意を不要とする。

7.その他所要の改正

耐火性の低い建物の建て替えを後押し

上記7項目の中でも、特に多くの人に関係しそうな「1」と「3」について詳しく説明しよう。

1.密集市街地等の整備改善に向けた規制の合理化
大都市の中心部など、多くの建物が密集し火災が発生すれば大惨事になりかねないエリアは、防火地域として建築物の構造が制限されていることが多い。そしてその周辺部などは、防火地域ほど厳しい制限はないが、火災を防止するために準防火地域として指定されている。これらの地域で建物を新築する場合の多くは、耐火建築物または準耐火建築物にすることが求められている。
耐火建築物とは、柱や梁など主要構造部に耐火性能があり(鉄筋コンクリート造など)、火災が発生しても一定の時間、倒壊しない建物。そして準耐火建築物とは、耐火建築物からは1ランク低くなるが耐火性能を有したものだ。しかし、昔からある耐火性の低い建物が残っていれば、大火災の心配は消えない。つまり、耐火性の低い建物は、耐火性能の高い建物に建て替えることがまちの安全につながる。

そこで今回の改正では、従来、「防火地域内の耐火建築物は、建ぺい率を10%緩和する」としていたものに加えて、「準防火地域の耐火建築物・準耐火建築物」も緩和対象となった。建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことだ。たとえば100坪の敷地に対して建ぺい率が50%までと制限されていれば、建築面積50坪までの家しか建てられない。しかし、10%緩和されれば60坪の家も建てられるわけだ。これは一般人だけでなく、より広い、または多くの部屋数を求めるアパートなどの賃貸物件オーナーにとっても朗報だろう。

また、今まで耐火性の高い建物として認定されるには、外壁など外側だけでなく、柱など内側も耐火性の高い部材が求められていた。しかし今回の改正によって、外側の耐火性を高めることで今までと同等の安全性を確保できるのならば、内側は特別な仕様にしなくてもいいことになった。たとえば、今までは石こうボードなどで覆わなければならなかった美しい木目の柱や梁をそのまま見せるインテリアも可能になるのだ。
これらの改正によって、古い建築物の建て替えが進むことが期待されている。

今回の改正によって準防火地域内の耐火建築物と準耐火建築物の建ぺい率も10%緩和されることになった。また、延焼防止性能の高い建築物の技術基準も新たに整備された(出典:国土交通省「平成30年建築基準法改正の概要」)今回の改正によって準防火地域内の耐火建築物と準耐火建築物の建ぺい率も10%緩和されることになった。また、延焼防止性能の高い建築物の技術基準も新たに整備された(出典:国土交通省「平成30年建築基準法改正の概要」)

空き家を飲食店や民泊施設に転用しやすく

3.戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化
昨今は空き家の増加が社会問題となっている。その原因の一つが「親の家を相続したが使い道がない」といった、利活用に関する課題だ。たとえば従来、一般の住宅を飲食店や宿泊施設に用途変更する場合は、耐火建築物にする、非常用照明を設置するなど高いハードルがあり、住居以外に転用することが難しく、放置されてしまうケースもあった。

そこで今回は以下のように改正された。

・3階建てで200m2未満の建物ならば壁や柱を耐火構造にする改修は不要
ただし次の措置は必要
・就寝用途と医療・福祉施設の場合は、自動火災報知機等の設置と階段の安全措置(間仕切り壁など)(飲食店などは不要)
・非常用照明の設置

また今までは、100m2以下の他用途への転用は建築確認手続きが不要だったが、改正後は200m2以下まで不要になった。このことで空き家の飲食店や民泊施設などへの転用がしやすくなった。

これらの改正は、該当する物件の所有者だけでなく、その物件を購入して賃貸物件や民泊施設として利活用したい投資家などにとってもメリットは大きいはずだ。それらの人たちがまちの活性化を担い、より安全で活気ある日本になっていくことを期待したい。

今回の建築基準法の改正は、住宅密集地に立つ老朽化した木造建築物の延焼防止など、都市が抱える様々な問題の解決を目指している今回の建築基準法の改正は、住宅密集地に立つ老朽化した木造建築物の延焼防止など、都市が抱える様々な問題の解決を目指している

2019年 08月01日 11時05分