2017年に誕生したFGN、次なる10年に向けて

写真上:リニューアルしたFGNはまわりの壁がなくなり、オープンな雰囲気に。エントランス前のロゴ看板「fgn」が印象的だ/右下:施設内の廊下には随所にソファやイスが置かれ、ゆったり過ごしやすくなった/左下:FGN事務局長の内田雄一郎さん写真上:リニューアルしたFGNはまわりの壁がなくなり、オープンな雰囲気に。エントランス前のロゴ看板「fgn」が印象的だ/右下:施設内の廊下には随所にソファやイスが置かれ、ゆったり過ごしやすくなった/左下:FGN事務局長の内田雄一郎さん

2017年4月、福岡市中心部に誕生した「Fukuoka Growth Next」(通称FGN)。廃校となった140年の歴史ある旧大名小学校を活用し、福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設として注目を浴びてきた。起業家を対象としたインキュベーション施設にコワーキングスペース、起業について相談できるスタートアップカフェ、誰でも利用できるカフェやバーなどが集結。およそ2年で、入居企業のうち31社に対して総額82億円ほどの資金調達が行われ、130人ほどの新規雇用を創出するなど、福岡のみならず九州のスタートアップのムーブメントを牽引してきたといえる。

そんなFGNがリニューアルして、2019年5月末に第2期がスタートした。全10年のうち前半5年間の運営者としてコンペで選ばれたのは、地元最大のディベロッパー・福岡地所株式会社など全3社。1期目からFGNの運営に深く関わり、第2期は事務局長に就任した福岡地所の内田雄一郎さんに話を伺い、現地を案内してもらった。

行政と民間が一体となりスタートアップを支援

福岡市は高島宗一郎市長のリーダーシップのもと、2012年に「スタートアップ都市・福岡」を高らかに宣言。国家戦略特区の指定を受けて、ベンチャー支援に力を入れてきた。その象徴となるのがFGNだ。内田さんは「インキュベーションの施設は世界各地にあるけれど、FGNほど行政と民間が一体となって取り組んでいる施設は他にないと思います。福岡市がコミットしているということで、いろいろな企業や有名な方々からも応援していただいて、とてもありがたい」と語る。

第1期の大きな成果は「スタートアップのコミュニティが構築できたこと」と内田さんは胸を張る。福岡にはもともとITやデザイン系のコミュニティがいくつかあったが、200社ほどがFGNに集まって入居したことで、ランドマーク的な存在に。国内外への発信力が高まったという。また「ベンチャー企業はFGNに入居すると社会的な信頼を得やすくなり、それまで相手にしてもらえなかった銀行や企業、人とも話ができるようになったとずいぶん喜ばれました」と話す。

左上:エントランスを入ると、福岡のまちをモチーフにしたイラストが目を引く。ちょうどFGNの場所からエネルギーが噴き出している/右上:起業について相談できる「スタートアップカフェ」/左下:アートとデザインをコンセプトにしたコーヒーショップ「Howlt Coffee」/右下:お酒を片手に交流を楽しむことができて、人と人をつなぐ役割を担う「awabar fukuoka」
左上:エントランスを入ると、福岡のまちをモチーフにしたイラストが目を引く。ちょうどFGNの場所からエネルギーが噴き出している/右上:起業について相談できる「スタートアップカフェ」/左下:アートとデザインをコンセプトにしたコーヒーショップ「Howlt Coffee」/右下:お酒を片手に交流を楽しむことができて、人と人をつなぐ役割を担う「awabar fukuoka」

未来のユニコーン企業を10年で100社創出したい

第1期を振り返って、特に内田さんの印象に残っているのはどんなことだろうか。一番は「入居者同士で互いに助け合っていたこと」という。「FGNに入居している皆さんは日々、会社の存続と成長のために緊張感を持って仕事をされています。どうしても資金繰りがうまくいかず、倒れそうになった会社もあるのですが、まわりの人たちが『彼・彼女をどうにかしよう』と人を紹介したり親身になって奔走する姿を何度も見て…そして数社は復活しました。FGNという一つ屋根の下で仕事をしたからこそ仲間意識が強くなり、絆も深まっていて、本当に感動しました」と打ち明ける。FGNはベンチャーが働く場として機能するだけでなく、互いに助け合える関係性までも育んでいるのだ。

FGNが第2期目にあたって掲げた目標は「未来のユニコーン企業を生むために、まずは企業価値10億円程度のスタートアップを100社創出する」こと。そのために、主に4つのプログラムを展開する。目玉の一つは「アクセラレーションプログラム」で、国内外のアクセラレーター(ベンチャー企業の成長を支援する組織)と連携し、3ヶ月ほどで集中的にビジネスをブラッシュアップする機会を作る。ほかに、FGNを拠点とするスタートアップファンドを組成したり、独自の伴走型プログラムを提供したり、エンジニアを育成するプログラムも第1期以上に充実させていく。

広々としたフリー席のコワーキングスペースや仕切られた固定席、個室タイプのオフィスなど、1階から3階までにさまざまな空間がそろう。200社ほどが入居が可能だ広々としたフリー席のコワーキングスペースや仕切られた固定席、個室タイプのオフィスなど、1階から3階までにさまざまな空間がそろう。200社ほどが入居が可能だ

スタートアップはもちろん地元企業の成長も促す

そしてもう一つ、第2期の新しい取り組みとして、スポンサー制度を導入した。現在22のスポンサー企業がFGNを支えている。入居企業からの賃料にスポンサーの資金が加わることで、ハード面もソフト面もさらに充実させられるというわけだ。「スポンサーはお金を出すだけでなく、スタートアップに理解があり、入居企業と積極的に関わりたいという企業ばかり。その証として、スポンサー側は総務ではなく、新規事業や経営企画といった部署の方が担当になっています。先日ミートアップのイベントを開催したところ、さっそく新たな展開が生まれそうな予感があります」

官民が連携してFGNから未来のユニコーン企業を生み出しつつ、スタートアップのみならず地元企業にも新たなチャンスを提供し、都市としての成長を目指している福岡市。お互いが支え合い成長をサポートし合う「福岡流エコシステム」(エコシステム=業界や企業の枠を超えて手をとり合い、共存共栄する仕組み)が構築される日は、そう遠くないかもしれない。

左上・右上:エントランス右側のボードにはスポンサーの名前が並んでいる/左下:1階の廊下には、FGNのオープンにあたり高島市長が書いた書「未来創造」が掲げられている。まさにここから福岡の新しい未来が創られていく/右下:奥に見えるのがFGN。小学校の校庭だったところは再開発でホテルなどが建設される予定左上・右上:エントランス右側のボードにはスポンサーの名前が並んでいる/左下:1階の廊下には、FGNのオープンにあたり高島市長が書いた書「未来創造」が掲げられている。まさにここから福岡の新しい未来が創られていく/右下:奥に見えるのがFGN。小学校の校庭だったところは再開発でホテルなどが建設される予定

2019年 07月17日 11時05分