高齢者や障がい者が快適に移動できるための法律

「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」をご存じだろうか。これは高齢者や障がい者が肉体的・精神的に負担なく移動できるように、街や建物をバリアフリー化するものだ。病院やデパートなど不特定かつ多数の人が利用する建物を対象とする「ハートビル法」と鉄道やバスなどの公共交通機関を対象とする「交通バリアフリー法」を統合する形で2006年12月に施行された。

同法のおもな特徴の一つは、市町村による重点整備地区の設定だ。たとえば駅からバスに乗って病院へ行くといった頻繁に利用されるルートを想定し、その動線上のバリアフリー化を推進する。急激な高齢化が進む日本において、無くてはならない法律といえるだろう。

ところが施行後12年が経ち、いくつかの課題も顕在化してきた。そして2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。国内外から日本の高齢者や障がい者に対する配慮が注目されるだろう。つまり今、日本全体のバリアフリー化は急務といえる状態だ。そこで政府は2018年11月、バリアフリー新法の一部を改正した。

重点整備地区のイメージ。建物や公共交通機関だけでなく、それらを結ぶ移動経路などもバリアフリー化する<br>(出典:国土交通省中国地方整備局HP)重点整備地区のイメージ。建物や公共交通機関だけでなく、それらを結ぶ移動経路などもバリアフリー化する
(出典:国土交通省中国地方整備局HP)

バリアフリー新法のおもな3つの課題

バリアフリー新法の顕在化してきたおもな課題は以下の3つだ。

1.ハード・ソフト両面の課題
未だ既存の施設に対するバリアフリー化(ハード面)が足りないことに加えて、高齢者や障がい者の利用を支援する人材(駅員やバス乗務員など)の教育等(ソフト面)を推進する必要がある。

2.地域の取り組みの課題
そもそも重点整備地区の設定の前段階である市町村の基本構想が作成されていないことで、地域のバリアフリー化がなかなか進んでいない。基本構想を作成している市町村数は全市町村の約2割(1,741中294)、1日3,000人以上の旅客施設がある市町村の場合は約半数(613中268)(2016年度末時点)に留まっている。

3.利用しやすさの課題
・観光立国の実現に向け、貸切バスや遊覧船もバリアフリー化が必要。
・公共交通機関に加えて建築物等に関するバリアフリー情報の積極的な提供が必要。
・バリアフリー施策の評価等に障がい者などの参画や視点の反映が必要。

新法をより実践しやすくするための改正

上記の課題に対し、今回は以下のような改正を行った。

①基本理念の規定
通常、法律に基本理念はあまり設けない。しかし、今回の改正では「共生社会の実現」と「社会的障壁の除去」といった基本理念を掲げている。

②公共交通事業者等によるハード・ソフト一体的な取組の推進
ハード(施設等)対策に加えて、事業者側の接遇・研修のあり方を含むソフト対策のメニューを国土交通大臣が新たに作成する。事業者はハード・ソフト計画を作成し、取組状況の報告と公表を行う。

③バリアフリーの街づくりに向けた地域における取組強化
市町村がバリアフリー方針を定めるマスタープラン制度(基本構想の前段階に当たるもの)を創設。協議会における調整や都道府県によるサポート、制度作成経費の支援などを行う。

④さらなる利用しやすさに向けた様々な施策の充実
・貸切バスや遊覧船等の導入時におけるバリアフリー適合基準を義務化
・建築物等のバリアフリー情報の提供を新たに努力義務化
・国が主導して障がい者などが参画する施行内容の評価等を行う会議を開催

上記のように今回の改正は、バリアフリー新法をより実践しやすくするための具体策を示したものとなっている。

具体的な目標(主要業績評価指標)を設定

国はこれらの改正を行うことで、次のような目標(主要業績評価指標)を掲げている。

・利用者が1日3,000人以上ある旅客施設の段差解消率を87.2%(2016年度末)から約100%(2020年度)にする。
・国が示す先進的な研修(様々な障がい特性への対応充実等)を行う東京オリンピック・パラリンピック大会関連交通事業者の割合を100%(2020年度)にする。
・バリアフリーのマスタープランを定める市町村数(現在0)を300(2023年度)にする。

このような目標が達成されれば、高齢者や障がい者が暮らしやすい世の中になることはもちろん、これらの人々を支援する具体策を知る人材が増えるので、より暖かみのある社会になるのではないだろうか。それこそが世界に誇れる日本社会だろう。目標として設定された2020年以降に期待したい。

改正されたバリアフリー新法がうまく活用されれば、高齢者や障がい者が快適に移動できるだけでなく、<br>より温かみのある社会になるはずだ改正されたバリアフリー新法がうまく活用されれば、高齢者や障がい者が快適に移動できるだけでなく、
より温かみのある社会になるはずだ

2019年 01月17日 11時05分