駐車場は地方都市でも供給過剰な状態

昨今、都市部を中心に駐車場の過剰供給が問題となっている。日本は人口減の時代に入り、街中に小さな穴が不規則に開くように低・未利用地が生じている。このような土地は駐車場として活用されることが多く、都市の利便性を低下させたり行政サービスの非効率化をもたらす。そして地域の活気がなくなっていく。いわゆる「都市のスポンジ化」だ。

全国の駐車場供用台数は年々右肩上がりで増え続けており2015年時点で約500万台となっている。一方で自動車の保有台数の伸び率は顕著に鈍化しており、近年は約8,000万台でほぼ横ばい状態だ。それゆえ過剰供給によって稼働率が低下した駐車場が街のいたるところに見られるようになった。その結果、街の賑わいが失われている地域が増えているのだ。駐車場の過剰供給は、全国レベルで取り組まなければならない問題となっている。

また、住みやすい街づくりには、駐車場の「量」とともに「質」のコントロールも重要だ。このような背景から国土交通省は『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)』を策定した。

全国の駐車場供用台数は現在も増え続けている(赤線)。一方で自動車の保有台数は、ほぼ横ばい(青線)。駐車場は過剰供給の状態(出典:『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)』(国土交通省))全国の駐車場供用台数は現在も増え続けている(赤線)。一方で自動車の保有台数は、ほぼ横ばい(青線)。駐車場は過剰供給の状態(出典:『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)』(国土交通省))

駐車場施策ガイドラインの8つの方策

同ガイドラインは、賑わいのある歩行者中心の街づくりのために取り組むべき8つの方策を中心に、59ページにわたって駐車場施策を提言している。

8つの方策の概要は以下のようなものだ。

1.都市が目指すべき将来像の検討
都市部の駐車場は、人と自動車を結ぶ重要な装置だ。供給量と配置の両面で街づくりと密接に関係している。そこで駐車場施策を検討する際には、まずその都市の目指すべき将来像を明確にするべきだ。たとえば、自動車の交通だけでなく歩行者や鉄道などほかの交通手段のあり方も含めて駐車場の存在価値を検討する必要がある。またその際は、各交通に関する実態の把握・分析や土地利用などのさまざまな調査結果も踏まえるべきだろう。

2.歩行者中心の街路空間を構築すべきエリアの検討
都市の目指すべき将来像を明確にするには、人口減少に伴う公共施設の再編や来訪者が安心して快適に移動できるように一定地域を歩行者優先エリアとすることなどの検討が有効だ。自動車、公共交通機関、歩行者などのさまざまな交通が適切にコントロールされた上で、歩行者志向の街路空間整備と駐車場の移転・集約などによる歩行者中心の街づくりを進めることで都市に賑わいが生まれると考えられる。このような検討には、地元関係者との意見交換や調整などが必要だ。

3.街路ごとの性格付け
歩行者中心の街路空間を構築するエリアでは、街路ごとの性格付けをする必要がある。たとえば幹線街路や環状道路は、都心部への自動車の流入を迂回・抑制する性格を持たせるべきだ。そこでこのような街路は、たとえばフリンジ駐車場の移転・集約先とすることなどが考えられる。(※フリンジ駐車場:都心部への自動車乗り入れを抑制するために都心周辺に配置する駐車場。駐車した人は路線バスなどの公共交通機関で都心の目的地まで行く。)また、公共交通機関が走行する街路空間(いわゆるトランジットモール)や歩行者専用として賑わいを生み出す街路などの性格付けも検討するべきだろう。このような性格付けは、街路単体で検討するのではなく、周辺の建築物の景観や用途、一般市民の活動なども踏まえて幅広い視点から行うことが重要だ。

街路ごとの性格付けのイメージ図。幹線街路や環状道路は、都心部への自動車の流入を迂回・抑制する性格を持たせ、その内側に公共交通機関が走行する街路空間(いわゆるトランジットモール)や歩行者専用として賑わいを生み出す街路を設ける(出典:『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)』(国土交通省))街路ごとの性格付けのイメージ図。幹線街路や環状道路は、都心部への自動車の流入を迂回・抑制する性格を持たせ、その内側に公共交通機関が走行する街路空間(いわゆるトランジットモール)や歩行者専用として賑わいを生み出す街路を設ける(出典:『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)』(国土交通省))

具体的な調査項目や有用性の検証方法などにも論及

ガイドラインでは、具体的な調査項目や有用性の検証方法などにも触れている。

4.多角的な状況分析を行う上で必要となる調査・分析
歩行者中心の街路空間の構築を進めるには、以下のようなデータの取得や実態調査を行う必要がある。

・駐車場の需給状況(利用台数など)
・土地利用の状況(用途別施設の分布状況など)
・交通の状況(自動車、歩行者、自転車、公共交通機関の利用状況など)
・社会経済動向(人口や高齢化など)
・来街者動向(アクティビティ(行動)調査など)
・民間活動の実施動向(民間街づくり団体の活動など)

5.駐車場の配置の適性化
街路の性格付けを行ったうえで、駐車場配置の適正化を計画する。たとえば幹線道路や環状道路などでは、フリンジ駐車場の移転・集約などの駐車場の再配置を進める。歩行者中心エリアでは、土地利用施策との連携を通じた駐車場の裏通りへの配置・集約化や出入口コントロールなどを進める。

6.歩行者中心の街路空間の構築に向けたさまざまなアプローチ
歩行者中心の街路空間を構築すべきエリアでは、歩行者の利便性・安全性の確保や連続的な街並みの形成はもちろん、人口減少に伴う公共施設の再編などの視点から公共空間の適切な管理と利用が必要だ。また、街路空間は一般市民の活動の場として構築していくことも重要だろう。そこで歩行者中心の街路空間を構築するには、地区レベルで民間と公共が話し合い、地区のあり方を共有する仕組みを導入することが考えられる。

7.駐車場の有用性の検証
既存の駐車場に関しては、引き続き利用するのか、ほかの用途への利用転換を図るのかの検証を行う必要がある。駐車場の有用性の検証を行う際は、公営と民間の適切な役割分担を考慮して検討を行うことが重要だ。

8.民間駐車場も含めた有用性の検証と土地利用転換・利活用の促進
民間駐車場で有用性の少ないものは、イベントスペースとして提供するなど街の賑わい創出への活用も考えられる。特に通学路へ出入りするなど安全性に課題があるものや街路の賑わい形成の妨げになるものなどは有用性が少ない駐車場として、土地利用転換を勧めることも必要だろう。

駐車場の有用性の検証の流れ。エリア内の駐車場が足りているかどうかから検証をはじめ、現状の街づくりの動きの有無、街づくりに対する支障の有無、有用性の有無といった流れでそれぞれの駐車場の活用方法を判断する(出典:『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)』(国土交通省))駐車場の有用性の検証の流れ。エリア内の駐車場が足りているかどうかから検証をはじめ、現状の街づくりの動きの有無、街づくりに対する支障の有無、有用性の有無といった流れでそれぞれの駐車場の活用方法を判断する(出典:『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)』(国土交通省))

公的制度・支援を利用しつつ地域住民の積極的参加が成功のカギ

以上のように8つの方策では、取り組むべき順番に沿って分かりやすく駐車場施策を紹介している。また同ガイドラインでは、このほかにも一定規模以上の建物に義務として設置しなければならない附置義務駐車場の制度緩和の事例や駐車場の再配置(リロケーション)に活用できる「改正都市再生特別措置法」、駐車場整備に対する支援制度(社会資本整備総合交付金など)等にも触れている。駐車場施策を推進するには、こういった制度や公的支援を活用することが有効だろう。

とはいえ、自治体頼みだけの駐車場施策では活気ある街づくりは実現できないはずだ。当然ながら「活気がある」「住みやすい」と感じるのは地域の住民だ。ならば上記方策「1」にあるように、まずは「都市が目指すべき将来像」を地域の住民一人ひとりが明確に想像し、そのことを発信・議論していくことが必要だろう。
ガイドラインには空き地をまちづくりに生かした例も掲載されている。

このように街の駐車場を有効に活用するには、地域住民が施策の立案・実施などに対して積極的に参加することが必須となるはずだ。

■まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編):国交省
http://www.mlit.go.jp/common/001245799.pdf

有用性の低い駐車場の活用方法は、オーナーや行政任せにせず、街ぐるみで検討することが重要有用性の低い駐車場の活用方法は、オーナーや行政任せにせず、街ぐるみで検討することが重要

2018年 09月08日 11時00分