5年間で26%増えた首都圏の屋外駐車場

首都圏整備計画の策定と実施の状況を毎年国会に報告している首都圏白書。この2018年版に昨今顕在化してきているコインパーキングの増加に対する懸念が記載された。たしかに最近は、駅前だけでなく住宅地の中でもコインパーキングを見かけることが多いと感じる。

首都圏のコインパーキングの増加は、データにもはっきりと表れている。国土交通省が定義する低・未利用地は、空き地だけでなく屋外駐車場や資材置き場も含まれる。首都圏における世帯所有の低・未利用地は、2008年から2013年の5年間で49%増加しており、全国平均の43%を上回っている。その中でコインパーキングを含む屋外駐車場は26%増で全体の31.6%を占めており、こちらも全国平均より高くなっている。また、首都圏の法人所有の低・未利用地も同様の傾向があり、屋外駐車場は2008年から2013年の5年間で23%増えている。

では、なぜコインパーキングが増えることが不安視されているのかを考えてみよう。

首都圏における世帯所有の低・未利用地は、2008年から2013年の5年間で49%増加しており、その中でコインパーキングを含む屋外駐車場は26%増で全体の31.6%を占めている(出典:「平成29年度首都圏整備に関する年次報告(首都圏白書)要旨」(国土交通省))首都圏における世帯所有の低・未利用地は、2008年から2013年の5年間で49%増加しており、その中でコインパーキングを含む屋外駐車場は26%増で全体の31.6%を占めている(出典:「平成29年度首都圏整備に関する年次報告(首都圏白書)要旨」(国土交通省))

「相続したが利用する予定がない」土地の増加

そもそも首都圏のコインパーキングが増加し続けている背景には、「都市のスポンジ化」がある。日本の人口は2008年にピークを迎えて減少の局面に入った。首都圏の人口はまだ増加傾向にあるが、数年後には減少に転じると見られている。人口減の時代に突入すると、都市内に小さな穴があくように低・未利用地が生じてくる。このような土地はあちこちに不規則に発生するという特徴があり、都市の利便性を低下させたり行政サービスの非効率化をもたらす。そして地域の活気がなくなっていく。この現象が「都市のスポンジ化」だ。

首都圏では若年層の運転免許保有率や世帯当たりの自動車保有率が低下しているにもかかわらず、コインパーキングは「都市のスポンジ化」の進行とともに増加している。そのおもな理由としては、相続したがその後活用されていない低・未利用地が増えていることがあるようだ。

首都圏白書の「世帯の所有する空き地の取得方法」を見ると、もっとも多いものは「相続・贈与で取得」で、その面積は2003年から2013年の10年間で57%も増えている。そして「所有する土地を利用していない理由」は、「相続したが今のところ利用する予定がないため」が圧倒的に多く約50%になっている。

手軽にはじめられるが甘くないコインパーキング経営

都市部の空き家や土地を相続した人がその活用を検討する際、初期投資額の少なさや運営の手軽さなどからコインパーキング経営に乗り出すケースは珍しくない。たとえば空き家を解体してアパート経営をしようとすれば、建物の建築費などで数千万円以上かかる。一方でコインパーキングなら運営会社との契約次第で初期投資ゼロ円ではじめることも可能だ。しかも一括借り上げ契約を結べば、日々の運営にはほとんどノータッチで収入を得ることもできる。

この手軽さから低・未利用地のオーナーだけでなく、投資目的のサラリーマンなどもコインパーキング経営をはじめるケースが多い。

しかし、それほどコインパーキング経営は甘くない、というのが現実のようだ。手軽にはじめられるということはライバルも多くなる。ライバルが多くなれば価格やサービスの競争も激化する。「あそこが100円下げたからウチは120円下げよう」「あそこがカーシェアリングをはじめたからウチは電気自動車の充電器を設置しよう」といった競争が日常茶飯事になるのだ。それは一括借り上げ契約をしている場合も同じで、周辺パーキングとの競争が厳しければ、契約の更新のたびに値下げなどの条件を突きつけられることになる。

土地さえ確保できれば比較的手軽にはじめられるコインパーキング経営。しかし、黒字を継続させることは簡単ではない土地さえ確保できれば比較的手軽にはじめられるコインパーキング経営。しかし、黒字を継続させることは簡単ではない

「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」を利用する手も

このように安易なコインパーキング経営への参入は非常に危険だ。やはり事前に立地条件や競合の有無などを見極める必要があるだろう。また空き地や空き家を周辺環境を考慮せずに無秩序にコインパーキングとして整備することは、街並みの分断を生み地域の賑わいを阻害する。さらに駐車場に出入りする自動車と歩行者の行き来が錯綜し、安全な街づくりの支障となることも考えられる。

では、相続などによって土地の活用に悩む人はどうすればいいのか。その一つのヒントが2018年4月に公布された「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」だ。これは「都市のスポンジ化」対策を推進するもので、たとえば低・未利用地の地権者と利用希望者を行政がコーディネートし、必要に応じてコインパーキングなどの移転を促して土地を集約することで地域の分断を解消することも可能にしている(「低・未利用土地権利設定等促進計画制度」)。都市部での土地活用に悩む人は、このような制度も視野に入れ、行政に相談してみてはいかがだろう。

「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」によって、必要に応じてコインパーキングなどの移転を促して土地を集約することで地域の分断を解消することも可能になった。画像はそのイメージ(出典:「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案(概要)」(国土交通省))「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」によって、必要に応じてコインパーキングなどの移転を促して土地を集約することで地域の分断を解消することも可能になった。画像はそのイメージ(出典:「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案(概要)」(国土交通省))

2018年 07月31日 11時05分