市民公園「学びの森」にリニューアルした、“インスタ映え”する人気カフェ

取材先が気に入って、後日改めてプライベートでも出かける場所がいくつかある。
今回の【KAKAMIGAHARA STAND(かかみがはらスタンド)】もその1つになった。

ここは岐阜県各務原市にある「学びの森」。2005年に岐阜大学農学部の跡地に整備された広大な都市公園だ。
樹齢半世紀以上の大イチョウをはじめとする木々が根を張り、手入れの行き届いた青い芝生広場が続き、池や小川が陽光にきらめく同園は、全方向からアクセスできる開かれた憩いの場として親しまれている。緑の豊かさや公園の広さ、整然とした美しさも、街中にあるとは思えないほど伸びやかで、訪れた多くの人が「こんな公園が近くにあるとイイなぁ~」と感じるのではないだろうか。

園内には、雲が舞い降りたような屋根が印象的な「雲のテラス」という建物があり、当初は市民ギャラリー兼カフェテラスとして利用されていたのだが、そのシンボリックな建物を活かしてリニューアルさせたのが、2016年11月オープンの【KAKAMIGAHARA STAND】。いわゆるインスタ映えするスポットとして人気を集め、休日には長蛇の列ができるほどだとか。
そして、その人気ぶりは単にお洒落な佇まいのカフェであるだけにあらず、公園に賑わいを呼ぶ“基地”のような役割を担うところが大きいようなのだ。

旧岐阜大学跡地を整備した「学びの森」は、豊かな木々や芝生広場、池や小川などがある自然豊かな美しい公園。イチョウやメタセコイヤが続く並木道は、以前「冬ソナストリート」としても注目を集めた。各務原市役所からほど近い地にあり最寄りの名鉄「各務原市役所前」駅からは徒歩5分。3時間無料の駐車場があることも利用しやすさに繋がっているのだろう旧岐阜大学跡地を整備した「学びの森」は、豊かな木々や芝生広場、池や小川などがある自然豊かな美しい公園。イチョウやメタセコイヤが続く並木道は、以前「冬ソナストリート」としても注目を集めた。各務原市役所からほど近い地にあり最寄りの名鉄「各務原市役所前」駅からは徒歩5分。3時間無料の駐車場があることも利用しやすさに繋がっているのだろう

テイクアウトが基本のカフェスタンドで、公園の“日常使い”を提案

大規模公園「学びの森」内にあった特徴的な外観の建物をリニューアルし、市民運営のカフェとして2016年11月にスタートした【KAKAMIGAHARA STAND】。SNSで広がりをみせ、若い世代を中心とした人気スポットになっている大規模公園「学びの森」内にあった特徴的な外観の建物をリニューアルし、市民運営のカフェとして2016年11月にスタートした【KAKAMIGAHARA STAND】。SNSで広がりをみせ、若い世代を中心とした人気スポットになっている

航空宇宙産業などでも知られる各務原市は工業・ものづくりが盛んな街。
「学びの森」を見ても同市のものづくり力を感じとることができるし、他にも同規模ほどの公園が市内に幾つかあるという。

とは言っても、それらの公園を利用するのは散歩やランニングなどで立ち寄る・通り過ぎる人であったり、休日やイベント開催時に訪れる人たちが大半。曜日や時間に関わらず普段からたくさんの人が留まっているということはない。

多くの人が良いと思う公園があっても日常的に活用しきれていないのではないか?「ハードは整っていてもソフトが弱い」現状を受けて、公園をもっと“普段使い”してもらうことを目的としてカフェスタンドを作ることになったのだとか。
カフェスタンドと謳っているのは、テイクアウトしたドリンクやスイーツを公園内で楽しみながら、思い思いに・自由に過ごして欲しいとの考えから。
みんなの場所である公園だからこそ、各々が好きな時間を過ごすのが面白い!休日やイベント時だけではなく普通の日でも楽しめるようにしよう!と、公園を日常的に使いやすくするための起爆剤としてカフェを設けた。

「つくる」ことが得意な街の財産を、「つかう」ことも上手にしていこう---
そんな想いで、“公園の使い方”を提案するためのスポットとして公共財をリノベーション。【KAKAMIGAHARA STAND】は誕生した。

運営は、社団法人かかみがはら暮らし委員会

【KAKAMIGAHARA STAND】を展開するのは、一般社団法人「かかみがはら暮らし委員会」。
公園の持ち主である各務原市に家賃を払って土地と建物を借用し、企画からデザイン、運営やプロモーションに至るまでを担っている。
理事の5人は、もともとは各務原市の市民企画委員として行政に関わっていた同士で、美容院・セレクトショップ・飲食店・デザイン会社を営んでいるメンバー。
委員活動での出会いを機に「まちをもっと面白くしたい」「各務原市で新しい楽しさを生みたい」という共通の想いが重なり、毎年11月3日(文化の日)には「学びの森」一帯をメイン会場に、多種多様なジャンルの店舗が集結する「マーケット日和」を開催。同イベントは、各々が得意分野やセンスを持ち寄り、人を巻き込みながら加速。これまで4回行われ、2017年には市外・県外からも合わせて240店舗が出店し公園内は大いに盛り上がったと聞く。賛同者・参加者も年々増加し、官民連携で行われる“各務原市の魅力づくりイベント”として成長を続けている。

そんな、市民発の公園革命とも言える「マーケット日和」を皮切りに、「学びの森」を会場とするイベントを他にもさまざま展開してきたメンバーだが、2年程前に市役所主催のワークショップに参加した際、驚いたことがあったと言う。

「ワークショップ参加者に向けて、各務原市の魅力について質問がされました。
すると、9割の人が『某大型ショッピングセンターが市内にある』ことを挙げたんです。
僕もよく利用する商業施設ですし、自分の街にあるのは便利でその気持ちはよく分かります。でも…ダントツ1位はちょっと寂しいなと。
だからこそ、各務原市の財産である公共スペースの魅力を高めていくことが大事だな、そうしたいな、と思ったんですよね。」(理事長の長縄尚史さん)

イベント開催時や休日の賑わいは、公園にとっていわば“ハレの日”の風景。
でも自分たちが目指すのは、“普段からの公園利活用”なのだと。

こうして、人と人・人と物・人とコトをつなぎながら活動を展開しようとの想いをあらたにしたそうだ。

一般社団法人「かかみがはら暮らし委員会」理事のみなさん一般社団法人「かかみがはら暮らし委員会」理事のみなさん

公園の日常が少しずつ変化

【KAKAMIGAHARA STAND】ではドリンクやお菓子のメニューも好評で、特に日替わりで何種か登場する“蒸しぱん”が人気のよう。ほとんどのメニューをテイクアウトできるが、店内奥にはイートインスペースもあって、イベントやワークショップなどが積極的に行われているのも特長【KAKAMIGAHARA STAND】ではドリンクやお菓子のメニューも好評で、特に日替わりで何種か登場する“蒸しぱん”が人気のよう。ほとんどのメニューをテイクアウトできるが、店内奥にはイートインスペースもあって、イベントやワークショップなどが積極的に行われているのも特長

オープンからはや1年半となる【KAKAMIGAHARA STAND】だが、美しい都市公園とフォトジェニックな建物、そして、味も“見た目”も好評のドリンクやスイーツなどがSNSで拡散したこともあって連日多くの人が集まっている。

公園利活用のためのスポットとして、ここを拠点とする様々なイベントも開催中だ。
毎月第1水曜夜の『寄り合い』では、理事メンバーをはじめ地域・年齢・業種問わず集まった人たちが、自分のやりたいことを話し、聞きながら繋がりがうまれている。各種「部活動」として、海外の人も参加して日本酒を愉しむ『STAND SAKE部』、『カカミガハラ読書部』、子どもだけ参加可能な『かわいい子にはカメラをさせよ』、『世界異文化研究会』、新しい出会いのBAR(場)を提供する【en counter(エンカウンター)】などなど…。文化を通じて人が繋がる催しも好評だ。会場も公園内に限らず課外活動として出かけるなど、“各務原発”の活動が外に向かって広がっている。

そんな積極的な打ち出しもあって公園利用者は増え、テイクアウトしたドリンクを片手にのんびりピクニックをしたり、テントを張って昼寝をしたり…日常の公園風景も変わってきたという。
その証拠に【KAKAMIGAHARA STAND】の定休日である木曜日は公園を訪れる人が少なめ、とのデータもあり、「ウレシイことですね」と理事長の長縄さんは笑う。

「各務原のため・市民のための公園ですが、地域外の人が活動に参加するのもウェルカムです!
だって『イイ!』と思う・見つけるのは、あって当たり前になっている内部の人よりも、外部の人の方が敏感だったりしますよね。
外の人が関わることでより良くなるし拡がるとも思うので、身内で完結せずに進めていきたいと思っています。」(長縄さん)

次は公園隣接の空き家をリノベーション。公園から拡げる街づくり

【KAKAMIGAHARA STAND】のテラス席で、街への想いを語る代表理事の長縄尚史さん【KAKAMIGAHARA STAND】のテラス席で、街への想いを語る代表理事の長縄尚史さん

「誰もが知っている有名店を誘致して話題をつくるのもいいですが、そのエリアだから・その地域だからできることや拡げ方があると思うんです。カフェという一つの『点』をつくって終わりではなく、『点』を増やし、繋げていくことで公園からいろいろなことが拡がっていくはずです。」(長縄さん)

次なる展開は、公園に隣接した空き家の活用。
各務原市のDIY型空き家リノベーション事業として「かかみがはら暮らし委員会」主導で和の飲食施設にリノベーションし、さらに公園の魅力を高める予定なのだとか。

個人の飲食・物販店が厳しい状況にある昨今、「学びの森の近くでお店を出したい」と言ってくれる人を増やしたい、とも話してくれた。そして、このエリアに人が集まるようにしたいと。

「公園を何とかしたい」から始まった活動が「公園から何とかしたい」に発展し、【KAKAMIGAHARA STAND】は各務原市の魅力発信拠点として存在感を増している。

確かに、公園を上手に使える街は楽しそうだし、何より心豊かな暮らしがありそうだと感じる。
何年後かのアンケートでは、「各務原の魅力は『公園が楽しい』こと!」そんな回答が大半を占めるようになるかもしれない。

■取材協力/かかみがはら暮らし委員会 http://mktbiyori.com/

2018年 05月06日 11時00分