建て替えかリフォームか、我が家はどちらを選ぶべき?

一戸建てで築30年を超える頃になると、建て替えかリフォームで住み続けるか、そろそろ悩み始める人も多いことだろう。
筆者は長年、住宅展示場で住まいづくりの相談を受けてきた。展示場には、最新の性能と間取り、設備を有したモデルハウスがたくさん並んでいる。それらを見て、我が家もリフォームすればこんな風にできるのか?そのためには費用はいくら掛かるのか?築何年までならリフォームでいいのか?何年を過ぎたら建て替えるべきなのか?など、漠然と悩んでいる人に数多く出会ってきた。

しかし建て替えかリフォームかを決断するためには、築年数はもとより、現在の家屋の状況や家族の将来設計など、様々な要素を複合的に検討する必要がある。そこで、建て替えかリフォームを判断するために、押さえておきたいポイントを数回に分けてご紹介しよう。

住宅展示場に並ぶ最新のモデルハウスを見て、我が家もリフォームすればこんな風にできるのか?それとも建て替えるべきか?漠然と悩んでいる人は多い住宅展示場に並ぶ最新のモデルハウスを見て、我が家もリフォームすればこんな風にできるのか?それとも建て替えるべきか?漠然と悩んでいる人は多い

こんな古い家に費用を掛けて大丈夫?リフォームは結果がわかりにくい

こんな古い家に費用を掛けて大丈夫か?まだ住めるのに建て替えるのはもったいないのでは?という思いのはざまで悩んでいるこんな古い家に費用を掛けて大丈夫か?まだ住めるのに建て替えるのはもったいないのでは?という思いのはざまで悩んでいる

まず初めに、なぜ建て替えかリフォームかで悩むのかというところから考えてみよう。相談者たちの多くは、「こんな古い家に費用を掛けて大丈夫か」という不安と、「まだ住めるのに建て替えるのはもったいないのではないか」という思いのはざまで悩んでいる。ようは今の家が持つポテンシャルがわからないため、何をどうすればどんな家になるか、それが建て替えと比べてどうなのか、よくわからないため決断することができないでいる。
またリフォームが大型化するに従って「そんなに費用が掛かるならいっそ建て替えたほうがいいのではないか」という不安の声が増える。建て替えればすごくいい家ができるけれど費用が高い、リフォームは建て替えより劣り、我慢して暮らすことになるけれど費用は安いというイメージを持つ人が多いためだ。

しかしリフォームのメリットは費用以外にも様々あり、例えばまんべんなく費用を掛けて全てを新しくする建て替えより、同じ予算内でもこだわりの部分にめいっぱい費用を掛けることができるリフォームの方がその後の暮らしの満足度が高いケースも少なくない。
このような漠然とした不安をひとつひとつひも解いていくと、建て替えに比べ、リフォームは得られる結果がわかりにくいというところに突き当たる。
建て替えの場合は、いちから建てるため坪いくら、1軒いくらというグロス単位で考えることができるので、費用対効果が掴みやすく、性能のレベルも予算に合わせて選びやすい。また住宅展示場に行けば、実物を見て体験することができるので、いくら費用を掛ければどんな家が建つかイメージしやすい。

しかしリフォームの場合は、元の家の状況が千差万別のため、工事内容や掛かる費用はケースバイケース、見積もりが出てもそれが安いのか高いのかよくわからないという状況がある。またいくら掛けたらどんな家ができるのか、この先何年もつかが具体的にわかりにくいため、費用を掛けたわりに思ったような結果が得られなかったらどうしようと不安になるのも当然だろう。

そこで建て替えかリフォームかを判断するための第一歩として、まずはそれぞれにいくら掛かるのか、単純な費用の比較からご紹介しよう。

費用の単純比較ならリフォームに軍配

住宅リフォーム推進協議会による試算によると、建て替えとリフォームに掛かる90年間のトータル費用は、建て替えの場合は総額7,800万円、リフォームの場合は5,200万円としている。

内訳は、まずそれぞれ新築時に2,000万円。建て替えは、修繕・メンテナンスのリフォーム300万円を10年おきにしつつ、30年ごとに2,000万円で建て替え×2回、90年間のトータルで7,800万円。リフォームは、長寿命化リフォーム1,000万円×1回、修繕・メンテナンスのリフォーム300万円を10年おきにしつつ、30年ごとに大規模リフォーム400万円×2回を行ってトータルで5,200万円。
修繕・メンテナンスのリフォームは、外壁やシロアリ、防水、屋根、給湯器や水栓金具、パッキンの交換、内装補修など、大規模リフォームは加えて水まわり設備の交換や内装工事などが含まれる。
長寿命化リフォームというのは、住宅性能の向上、構造部や外壁屋根などの長寿命化、また全ての世代が快適に暮らせるようバリアフリー化する工事など、本来の木造住宅の寿命であると考えられている100年を快適に暮らすためのリフォームのことを言う。

筆者の試算より修繕・メンテナンスリのフォームが高く、大規模リフォームの費用が安いと感じるが、あくまでも概算であり、押しなべて計算すればだいたいこのようなものだろう。

このように、費用の単純比較では、リフォームは建て替えに比べて3割以上安く済み、金額にすると2,600万円安いという結果がある。これはこれから新築する人や築浅の家の人には大いに参考にして頂きたい試算ではあるが、既に築30年以上を過ぎている場合は、なかなかこう上手くはいかない部分がある。

と言うのも、リフォーム費用は現状や間取り変更の有無により大きく変わるため、同じ築30年目のリフォームでも、最初から90年住むつもりで設計され維持管理されてきた家と、そうでない家とでは大きな開きがあるからだ。

一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会による「長寿命化リフォームの提案、ストック時代の新たなビジネスモデル」を参照して作成。建て替えとリフォーム、それぞれの住居費負担累積額の比較一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会による「長寿命化リフォームの提案、ストック時代の新たなビジネスモデル」を参照して作成。建て替えとリフォーム、それぞれの住居費負担累積額の比較

健康診断をした時点で、建て替えかリフォームか判断がつくケースも

まずは我が家の健康診断を。その時点で、建て替えかリフォームか判断がつくケースもあるまずは我が家の健康診断を。その時点で、建て替えかリフォームか判断がつくケースもある

そこで築30年を超えて、建て替えかリフォームかで悩んだら、まずは今の我が家の現状を把握するところからスタートしよう。最初は健康診断だ。健康であれば、後は未来に向かって性能向上や間取り変更のリフォームを考えていけばいいが、腐食などがあった場合は、その補修費用が必要になる。

健康状態は今までのメンテナンスの状況に大きく左右され、定期的に手入れをしている家は大概、状態は良好で、補修費用が少なくて済む。しかし必要な時期にメンテナンスをしていない家は、雨漏りや水もれによる腐食、シロアリ被害などの補修費用がかさむことが多い。我が家は雨漏りはしていないという家でも、見に行くと、確かに家の中には漏れていないのだが、軒先や壁内に流れていたため気付かないまま放置されていたということも少なくないため注意が必要だ。

シロアリに関しては、筆者が実際に手がけたケースで、築25年ほどの木造一戸建て住宅で、防蟻処理は最初の1回だけ、その後、羽アリを見ることもなく安心していたら、屋根の葺き替え時に屋根の下地組からシロアリが発見されたことがあった。調べてみると、シロアリが土台から柱を通り、屋根の下地組に到達するまで食い荒らし、広範囲にわたって蟻害にあっていることがわかった。その際に掛かった補修費用は約700万円で、当初予定をしていたリフォームができなくなってしまったことがある。

他にリフォーム費用が必要以上にかさむケースとして、大きな基礎の沈下や家の傾きがある。これらは地盤を含む大掛かりな補修工事が必要になるため、リフォームより建て替えを勧めるケースが多い。
このように、リフォームは現状によって、工事内容や費用が大きく変わり、専門家による診断で初めてわかることも多いため、建て替えかリフォームかを考え始めたら、まずは専門家に点検を依頼、我が家の健康状態を知るところから始めるといいだろう。その時点で、補修は手間と費用が掛かり過ぎるので建て替えたほうがいい、リフォームで十分にいい家にできる、と判断がつくことも少なくない。

実際に古い基礎で傷みもひどいため、高額な補修費用が掛かることはわかっていたが、屋根が素晴らしい瓦で葺かれていて、健康状態は良好で、同じものを再度作るとなると、屋根だけで1,000万円は掛かるため、あえてリフォームで基礎を補強し、住み続けたケースもある。
点検費用の目安は5万円~10万円程度で、依頼先は信頼できる近隣の工務店やリフォーム会社の他に、今後は平成26年に国交省によって創設された「住宅リフォーム事業者団体登録制度」の登録団体に所属しているかなども目安になるだろう。

さてこの点検時に、健康状態と共に知っておきたいのが、我が家のポテンシャル、つまり住宅性能である。次回は、築年数が古い家の弱点とも言える、性能についてご紹介しよう。

2017年 02月08日 11時06分