若者が多くて元気なまち・福岡市を支える2つのまちづくり協議会

左から「We Love天神協議会」の小林 誠さんと「博多まちづくり推進協議会」の谷川 麻裕子さん左から「We Love天神協議会」の小林 誠さんと「博多まちづくり推進協議会」の谷川 麻裕子さん

“まちを豊かにしたい”というとき、昔はまちの中心部に大きな施設を建てていた。目新しくて面白い施設がひとつできると、その周りに活気が生まれ、人々が集まって来る。もちろん今も、そのやり方は十分に通じる。ただ、そのやり方ができる地域とできない地域があるのは明白だ。お金や土地の問題など、様々な問題が生じてくる。

住民主体による地域環境や価値を維持、向上させる取り組みのことを「エリアマネジメント」というが、2016年11月、公共空間の活用をテーマに「エリアマネジメントシンポジウム2016 in 福岡~九州からの発信~」が福岡で開催された。九州や山口県でまちづくりを行なっている人たちを招き、事例の紹介や課題共有を行う内容だ。

今、日本は人口の減少に加え、近年では全国的に都心回帰の動きが見られるなど、地方が抱える課題はますます深刻になっている。その中でも福岡市は、平成22年10月~平成27年10月の人口増加数が政令都市の中で1位、人口増加率は5倍と、全国的に見ても珍しい顕著な数字を出している(平成27年度の国勢調査・福岡市のホームページより)。法政大学の教授であり「全国エリアマネジメントネットワーク副会長」の保井 美樹さんは「福岡市は全国の中でも若い人たちの流入人口が多く、郊外への人口移転が低い」と話しているが、なぜ福岡市はこのような評価を得ているのだろうか。

当日、シンポジウムに登壇した福岡市の中心部でまちづくりを担っている団体「WeLove天神協議会」の小林 誠さんと「博多まちづくり推進協議会」の谷川 麻裕子さんに話を伺った。

「“歩いて楽しいまち”を目指して」――We Love 天神協議会

2016年7月29日(金)~8月17日(水)の間、実施した「天神涼園地」2016年7月29日(金)~8月17日(水)の間、実施した「天神涼園地」

地場の商業施設など、各企業の社員や住民たちが連携して様々な仕掛けをつくり出している「WeLove天神協議会」(以下「WeLove天神」)。天神地区の掃除を行なう「天神クリーンデー」や大名校区「落書き消したい(隊)」、「おしチャリ運動」など日頃から行なっている活動や季節ごとのイベントなど、参加メンバーがグループに分かれて各プロジェクトを進めている。

毎年夏に実施している、まちをまるごとテーマパークにした「天神こどもまるごとワンダーランド」というイベントがある。これは福岡の将来を担う子どもたち向けの内容だが、水とミストで楽しめる「天神涼園地」は約4万1000人を動員(20日間実施)、職業体験企画「天神ワーク体験」は67施設・526名参加(応募総数は5416名)、都会の中心部でのキャンプ体験企画「天神キャンプ」は18組が参加と賑わいを生み出している(以上、すべて2016年実施)。
夏のイベントは子ども向けだが、春はファッション、秋は音楽、冬はクリスマス企画と「歩いて楽しいまち」をコンセプトに、天神は大人も子どもも楽しめる企画が目白押しだ。

「WeLove天神」は、設立をする以前から社会実験として公開空地・公共施設の活用や歩行者天国の取り組みを積極的に行ってきた。数年前は少し薄暗かった警固公園も、みんなで協力をした結果、見晴らしの良い憩いの場へと変化を遂げた。束の間の休憩を過ごすスーツ姿の会社員や、お弁当を食べている人、ひなたぼっこをして遊ぶ親子など、年齢を問わず様々な人たちが利用している。

天神は若い人たちのまち!? 高齢者や子育て中のパパもママも、“まち”を楽しみたい!

きらめき通りを歩行者天国にし、グルメやストリートパフォーマンスなど”わくわくするもの”を集結させた「FUKUOKA STREET PARTY」。2016年11月19日(土)~20日(日)に実施きらめき通りを歩行者天国にし、グルメやストリートパフォーマンスなど”わくわくするもの”を集結させた「FUKUOKA STREET PARTY」。2016年11月19日(土)~20日(日)に実施

しかし、一方で昔からこんな声もある。「天神は若い人が楽しめるまちで、高齢者や子育て中のパパやママにはあまりやさしくないまち」だと――。

そこで「天神地下街」や「新天町」など、人通りが多い商店街や通路にベンチやイスを設置をする実験を開始。各商業施設では、天神地区におけるベビーカーの無料貸し出しや、おむつ交換台、ベビーチェア設置トイレ、授乳室などを紹介した「ママ&パパmap」を配布するなど(インターネットでのダウンロードも可)、みんなにやさしいまちづくりに取り組んでいる。

プロジェクトを企画して実行する、だけが「WeLove天神」の役割ではない。企画と同時に、わたしたちの目には見えないところで警察や行政との協議も進めていく。これらの事業を継続していくには大変だと思うが「今でこそ理解をしてもらえるようになりましたが、設立当初は『なぜ、こういう企画を始めたいんですか?』と色々質問を受けました」と小林さんは語る。例えば、公園を使って賑わいづくりばかりすると、地元住民や寛ぎを求めに来た人たちに対して迷惑になってしまう。この公園をどういう公園にしていきたいのか、日頃から行政を交えてみんなで話し合うことで、イメージを共有していく。民間として調整できるところはしていき、行政には規制を緩和してもらう。この微妙なバランスを図るのが難しいのだそうだ。

「空港、港、駅に近い福岡の玄関口」――博多まちづくり推進協議会

「はかた駅前”どんたく”ストリート」の様子「はかた駅前”どんたく”ストリート」の様子

毎年冬になると、ブルーのイルミネーションが博多駅博多口の広場に出現。夜になるとスマホや一眼レフカメラを持って撮影をする人たちで賑わっている。いつの間にか冬の名物詩となった「冬のファンタジー・はかた」も2016年で7年目になる。

もともとは、九州新幹線の全線開業や新博多駅ビルの開業を見据えて、2007年にまちづくり推進の組織準備会を設立。その後、博多駅エリアに新しいビルがどんどん増え、それとともに「博多まちづくり推進協議会」(以下「博多まちづくり」)もプロジェクトをどんどん立ち上げている。

天神エリアとは異なる特徴を尋ねると、谷川さんは「“博多部”と呼ばれる古い歴史と街並みを抱えているところだと思います」と答えた。博多部とは、一般的に那珂川から東側を指す。江戸時代から町人の町として栄えた場所で、夏の祭事・山笠は博多部の文化の象徴だ。このエリアには寺社仏閣が多く、先祖から受け継いだ土地で暮らす住民もたくさんいる。「WeLove天神」に比べ、立ち上げの時期が少し遅かったが、天神とは異なる色を持つエリアのため、差別化をしたコンテンツづくりの伸びしろは大きいと言える。毎年5月になると、はかた駅前通りでは「どんたくパレード隊」による「はかた駅前“どんたく”ストリート」を開催するなど、伝統文化と公共空間を生かした活動も行っている。

2020年、福岡が変わる!? 地下鉄延伸で訪れる新たな転機とは

2016年9月24日(土)~30日(金)に藤田公園で実施した「HAKATA 朝カフェ&夜バル」2016年9月24日(土)~30日(金)に藤田公園で実施した「HAKATA 朝カフェ&夜バル」

歩道空間に設置したコンテナによる飲食店「ハカタストリートコンテナ」や「はかた駅前マルシェ」、博多駅前広場や公園を利用した「朝カフェ・夜バル」などデザイン性を取り入れたイベントも生み出してきた。2016年11月18日(金)から10日間は、新しいプロジェクトとして、はかた駅前通りの歩道に長さ30mのカウンターを設置して、イタリアンやカフェなどが参加する「HAKATA STREET BAR」を開催する予定だった。しかし先日の、はかた駅前通りの陥没事故で中止せざるを得なかった。「陥没事故では、イベントができなくなったというショックもありましたが、天災・人災問わず災害が起きたときの対策など新たな課題にも思いを巡らすこととなり、チャレンジするべきことはまだまだあると実感しました」と谷川さんは語る。

2020年には、福岡市営地下鉄七隈線の延伸事業が終了する。天神南駅と博多駅がつながることで利便性が増し、天神も博多も人の流れが変わっていくことが予想される。

福岡が都市として元気な理由。それは地場の企業やディベロッパーが元気で、積極的にまちづくりに参加していることも要因のひとつであると思うが、何よりも新しいモノや面白いモノが大好きな福岡県人の企画力とパワーがまちを照らし、楽しい雰囲気を生み出すことで人々が集まってきているのではないか。公共空間を“ただそこにある場所”に留めず、流れを生み出していく。“福岡って、なんかいいよね”と他県の人たちを惹き付けるまちづくりの楽しさが、人口増にもつながっているのかもしれない。

2017年 01月19日 11時05分