国が支持する地域と住居者間のコミュニティ形成

コミュニティを育む「住民交流会」の開催風景コミュニティを育む「住民交流会」の開催風景

大規模な分譲マンションや一戸建てに暮らす知人から「同世代の子どもを持つお母さん達との交流はあるが、それ以外では誰がどの号室・区画なのか分からない」という話しを聞いた。戸数の少ない物件であれば、そこまでではないが数百戸規模の大規模物件となると、住民ひとり一人と交流を持つことは、とても大変なことのようだ。

マンションなどにおけるこうした現代の住民同士のコミュニケーションの欠如に、国も近年対策を行い始めた。

2006年(平成16年)に、国土交通省は中高層共同住宅標準管理規約の改正を行っている。
中高層共同住宅標準管理規約とは、多くの住民が一棟の建物を区分して所有しているマンションにおいて、住民が長い間にわたり快適な生活をおくるために必要な、住民の間でマンションの維持、管理や生活の基本的ルール(管理規約)を定めたものだ。

その中で、マンションを取り巻く情勢の変化を踏まえた改正として、日常的なトラブルの未然防止や、大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものとして、管理組合の業務に地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(単棟型第32条第15号等)が規定された。

この規定を機に販売する側も住民の間でも、コミュニケーションの大切さを少しずつ認識しはじめた頃、2011年(平成23年)に起こった東日本大震災がその重要性を決定的にした。同じマンションに住んでいても隣人を知らないという時代ではなくなり、人付き合いの必要性が一気にクローズアップされたのだ。

リアルなコミュニケーションが求められる時代

ファシリテーターとしてコミュニティデザインに取り組む株式会社シー・ブラッドファシリテーターとしてコミュニティデザインに取り組む株式会社シー・ブラッド

住民同士の交流が希薄な現代において、コミュニティのデザインに取り組む企業がある。それが株式会社シー・ブラッドだ。住民のファシリテーターとして、多様な考えをまとめつつ円滑なコミュニティ形成をサポートするという役目を担っている。今なぜ、住民同士のコミュニティを重要視するのかその理由について、シー・ブラッド代表取締役社長の中澤博司氏に話しを聞いた。

同社が住民同士のコミュニティに着目したのは約15年前のこと。当時はインターネットが分譲マンションの設備として標準化されつつあった頃だという。今でいうFacebookやmixiのように、インターネット上で住民同士のコミュニケーションツールとして入居者専用サイトの企画・制作・運営を行っていた。世間でのネットの普及率は高まるものの、実際にマンション内での活用率は平均20%ぐらいしかなかったという。そこでコミュニケーションとは、どのようなものかともう一度考え直した。その結果、浮かび上がってきたのは住民はバーチャルな世界の交流ではなく、実体験を伴うリアルなコミュニケーションを求めているのではないかという考えだった。それを確定的にしたのは、コミュニティづくりの運営を行っている「彩都」という物件で、リアルな交流イベントを実施した際に得た反響の大きさだったという。その裏付けが今現在、行っているの住民と一緒に作り上げていくコミュニティデザインへの取り組みにつながっているという。

住民同士のコミュニティは、どうやって築くの?

マンション内の共用施設を利用して行われた「子育て交流会」マンション内の共用施設を利用して行われた「子育て交流会」

中澤氏いわく、これからの住宅販売において、分譲の企画・計画段階でコミュニティ形成に関するプランが盛り込まれることが当たり前の時代になるのではないかと話す。

事業主も、株主や投資家に対するだけでなく、顧客や地域社会などに対して、経営方針や活動成果を伝える企業のIR(Investor Relations)活動の一貫として、また利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもつという企業の社会的責任CSR(corporate social responsibility)の概念から、こういったコミュニティ形成に取り組む企業が増え、それが標準化しつつあるという。国の指針として「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」が示された以上、事業主にとっても取り組む重要性が高まったということなのかもしれない。

そこで考える次なる関心事は
「コミュニティ形成って、何をどうすればいいの?」ということだ。

昔はお互いに協力しあって、夏祭り、地蔵盆、みかん狩り、地域の運動会などが運営され、住民同士の交流は自発的に行われていた。地域のコミュニティは、当たり前のように形成されていたのだ。だが、バブル時代を経て核家族が増え周囲と距離をおきはじめ、個人主体の生活がはじまり隣人でさえ知らない世帯が増えた。

今は、そういったことが見直され、古き良き時代を手本とした現在におけるコミュニティの形を作ろうというマインドに変化してきていると中澤氏はいう。

ただ、唯一のネックは小さいころから周囲と交流をもってこなかった若い世代にとって、何をどうすればいいのか分からないことだ。そこで、円滑なコミュニティ形成をサポートするファシリテーター、シー・ブラッドの登場となるのだ。

使いこなせないものは無いのと同じ、入居者しだいではなく一緒に作っていくという理念

物件や地域の特長、入居者の年齢層などを考慮し、年間のコミュニティイベントの計画を立てる。物件や地域の特長、入居者の年齢層などを考慮し、年間のコミュニティイベントの計画を立てる。

著名な人が設計した建築や植栽計画、キッズルーム、フィットネスルームといったコミュニケーションに配慮したバラエティ豊かな共用施設、省エネ効果が期待される可視化システムなど、住宅のスペックが高くても実際に住む人が使い切れなければ意味がない。

そこで同社は、まず販売の計画段階で請け負う物件のコンセプトや周辺環境、想定される入居者の年齢層や家族構成などをイメージし、共用施設・共用部分などを活用したコミュニティ形成のための年間計画を立てる。私たちの親世代が行っていたように、夏祭りやクリスマスパーティ、餅つき大会といった全ての人が参加できるイベントをはじめ、子育て交流会、大人の交流会、ワインを楽しむ会、ヨガサークル、料理サークルなど世代ごとのニーズに応えるサークルを作り、住民同士のコミュニケーションを図ろうというのだ。

事業主は今まで、買い手となるお客様のために物件に様々な工夫を凝らしてきたが、販売後それをどうするかは入居者しだいというスタンスでいた。だが、これからは入居後のフォローといった、きめ細かい対応が求められている。

盛んなコミュニティがもたらすその効果と具体的な事例については、
【国の指針となった住民同士のコミュニティ形成②】で紹介する。


取材協力:株式会社シー・ブラッド
http://www.c-blood.com/

2013年 11月26日 10時01分