知らない者同士が集まり、ひとつのことを成し遂げた「DIYリノベーションスクール」

多くの人が集まった「完成披露会見」。株式会社大都の山田氏と9株式会社の久田氏が、これまでの経緯やリノベーション業界のこと、今後の住宅事情などについて見解を述べていた多くの人が集まった「完成披露会見」。株式会社大都の山田氏と9株式会社の久田氏が、これまでの経緯やリノベーション業界のこと、今後の住宅事情などについて見解を述べていた

大阪・泉北ニュータウン公社茶山台団地の5戸を舞台とした「DIYリノベーションスクール」。2014年10月からスタートし、プロの指導のもとDIYに興味・関心を抱く一般の方々がワークショップを通じて、解体から完成までの全工程を行い、半年間のスクール期間を経て2015年3月に完成した。

「DIYリノベーションスクール」の企画・運営を行った、大阪府住宅供給公社と「DIY FACTORY」を運営する株式会社大都、住宅のリノベーションをはじめ店舗設計など多岐にわたるデザインを手掛ける9(ナイン)株式会社の3社合同で完成披露会見が開かれた。会見では、運営を通して参加者に伝えたかったこと、感じて欲しかったことをはじめ、上手くいった点、そうでなかったことなどが綴られた。

知らない者同士が集まった一般の方たちとプロが、共に力を携えて完成した部屋を拝見しながら、これまでの様子を主催者に伺った。

「DIYリノベーションスクール」開催風景
http://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00160/

回を重ねるごとに、改善を加えた運営内容

壁にブルーのペンキが塗られた居室。部屋の一面だけ色が変わるだけで、おしゃれな雰囲気に!壁にブルーのペンキが塗られた居室。部屋の一面だけ色が変わるだけで、おしゃれな雰囲気に!

開催当初、建築やリノベーション業界はもちろん一般の方々からも注目を集めた「DIYリノベーションスクール」。完成までの苦労と改善点を伺ってみた。「当初は、企画をしたはいいが、応募が無いんじゃないかと内心、心配していました。なので、休日に社員総出で現場の作業をすることを覚悟していたんです」と笑いながら9株式会社の久田氏は語る。ところが、ネットで情報を公開したとたん反響が高まり、用意したチラシ2万枚を配ることなく満席となった。これには、3社とも驚いたという。

「第1回目は、部屋の床や壁を剥ぐ解体作業だったんです。これは、ホコリが舞い汚れるし、体力的にもとてもキツイ作業なので、1回目に参加した人は2回目は来ないんじゃないかと思っていたんです。で、作業が終わったあとに、アンケートを取ったら案の定、『これは、ていのいい作業員集めじゃないのか!』と、お叱りの声をいただき、これではダメだということで、午前中に講義をすることにしたんです。また、回を重ねるごとに形態に変化を加え、途中からは初心者コース、プロを目指す本気コースといった、コースを設けて参加者が作業しやすいように臨機応変に進めました」と株式会社大都の山田氏は運営しながら、内容を改善していったことを話してくれた。その改良が効いたのかは不明だが、参加者の一人が職人作業に魅了され、そのまま大工に転職したというから凄い。そして、通期を通した内容に話しがおよび「全21回すべてに参加する人はいないんじゃないか、毎回新しい参加者を募ることになるんじゃないかと思っていた」と山田氏は漏らす。ところが、結果をみると延べ500名の方が参加し、全21回すべてに参加した人は、全体の6割を超えていたという。

プロと同じレベルに仕上げる!というプレッシャー

シラカバを使ったフローリング、表面は汚れにくいよう塗装されているシラカバを使ったフローリング、表面は汚れにくいよう塗装されている

「すっごい大変だったけど、完成した時の感動も凄かった!」と久田氏は語る。「一般の方々が自分たちでDIYをするということについては、見事に達成しました。が、自分たちがDIYで作った部屋を全く関係のない人に賃貸に出すんです。プロが請け負った工事と同じレベルのものを作らないといけないので、教える方としても、とてもプレッシャーでした」と半年間の心境も教えてくれた。「ワークショップとはいえ、期日までに完成させないといけないし、完成後には検査があるので、それにも合格しなければいけないんです。そう思っていたせいか、僕は職人感覚で厳しく参加者に接することが多くなり、いつしか不人気講師になっていました」と笑いを誘う久田氏。

完成した5つの室内を、解説とともに見学。リノベーションなので、当然なのだが元の部屋と比べるとスタイリッシュな内装に生まれ変わっていた。以前の部屋には、なかったウォークインクローゼットが設置され、壁には白や黄色といったペンキが塗られ洗練されたおしゃれな雰囲気を演出している。床のフローリングは、シラカバの木を使っておりスリッパなしで、歩きたくなる温かみのある仕様になっている。もし、このフローリング工事をリノベーション会社に依頼したら、1部屋あたり(約45m2)約45万円はするそうだが、今回のDIYではその半額以下でできたそうだ。キッチンも、特別発注でコストダウンし、DIYリノベーションにかかった工事費の総額は、リノベーション会社に委託した場合に比べ、1戸あたり100万円以上のコストダウンになったという。

DIYは、消費者が賢くなる第一歩!

使い勝手の良さそうなキッチン、窓の横なので風が通って気持ちいい使い勝手の良さそうなキッチン、窓の横なので風が通って気持ちいい

久田氏いわく、このワークショップの目的は、1)DIYができるようになること、2)工具の選び方と使い方を身に付けること、3)自分でできることと、できないことを把握すること、4)予算感覚を養うことだという。1)と2)は分かるが、3)と4)については、どういう意味なのか聞いてみた。
すると、「午前中の講義の中では、当日の作業手順をはじめ、材料費や人件費といったコストに関することも伝えてきました。そのため、今回の参加者の大半は、この作業にどれだけの作業時間が必要で、コストはどれだけかかる、という予算の感覚が掴めたハズなんです。住居内のDIYは、キッチンや浴室など水道やガス・電気といった設備関係は専門会社でなければできませんが、逆に床貼りや間仕切り壁を作ったり、壁のペンキを塗ることは自分たちでもできます。自分たちでできることと、できないことが分かると、リノベーション会社が見積もりを出したときに、その金額が高いのか、妥当なのか、見極めることができます」と話してくれた。

久田氏は、さらに詳しく見積もりの仕組みを教えてくれた。「リノベーションやリフォームの工事にかかる見積もりは、大きく分けて材料費と施工の手間代、経費、リスク費で算出されます。材料費は、だいたい定価の3掛けか4掛けで仕入れができます。例えば、100万円の商品なら、30〜40万円で購入できるんですが、見積もりでは50〜60万円で出して差額を利益にしていたんです。でも、最近はネットが普及し一般の方でも掛け値が把握できるようになりました。そこで、材料に利益を乗せることが難しくなったので、手間代や経費に利益を乗せるようになったんです」と業界の裏側まで教えてくれた。

「でも、自分がDIYできるようになれば、見積もりをみながらコレは高いとか、この作業は自分でやります、と言って見積もりの費用を下げることができるようになるんです。これは、消費者にとって、大きな特典になりますよね」と、そこまで話していいのかと思う内容まで、語ってくれた。また、リスク費については、解体してみないと分からないことが多く、見た目は大丈夫そうでも、壁や天井・床を剥がして解体したら、中身は使い物にならない、といったことも多々あります。そのためリノベーションやリフォーム業者は、やり直しに掛かりそうなコストを予め乗せて見積もりを出すことが多いんです。追加費用を後で請求するのは、なかなか難しいので、先にリスク費を見積もりに、上乗せしておくのです」とも話してくれた。

これからの住宅事情を考え「空き家」対策の必要性を問う

左から、株式会社大都・数田さん、堺市職員・中川さん、株式会社大都・山田さん、9株式会社・久田さん、大阪府住宅供給公社・大井さん左から、株式会社大都・数田さん、堺市職員・中川さん、株式会社大都・山田さん、9株式会社・久田さん、大阪府住宅供給公社・大井さん

久田氏は、「現在の日本の空き家は、800万戸あります。年間で建設されている新築住宅は80万戸にのぼります。みなさんもご存じの通り、これからの日本は少子高齢化が進み、世帯数も減少していくと予想されています。これらの状況からみると今後、空き家が増加することは間違いありません」と語る。「日本の住宅事情において、これからの空き家対策は必須になります。今回のDIYリノベーションスクールは、その空き家対策にとって有意義なものになると確信しています」と話す。自宅をDIYできたり、リノベーションができる人が増えることで、住宅事情も変わってくるはず!だと言うのだ。

また、株式会社大都の山田氏は「日本でホームセンターが出来たのは約40年前。工具などの商品を棚に並べさえすれば、売れる時代が続いていましたが近年、業界の勢いは低迷し商品が売れなくくなりつつあります。その要因の一つとして、誰も工具の使い方を教えてこなかったことにあると思っています」と話す。「人は工具が欲しくて買いに来るのではなく、やりたいことがあるから、そのために工具を買いに来るんです。でも、どの工具を選びどう使えばいいのか分からない。だから、売れないしDIYも定着しないんです」と熱のこもったトークが繰り広げられた。

建築業界でも注目をあびた「DIYリノベーションスクール」。その第二弾として「DIYリノベーションスクール at ATC」が、今年7月から開校するという。
建築やリノベーション業界に一石を投じるこの活動を、今後も追跡したいと思う。

取材協力
大阪府住宅供給公社:http://www.osaka-kousha.or.jp/
株式会社大都:http://www.daitotools.com/
9株式会社:http://www.ninedesign.jp/

2015年 07月18日 11時03分