京情緒と涼感がたっぷり味わえる「川床」

「川床」は、暑さのなか、エアコンなどの電化製品が無かった時代から受け継がれてきた、建物と自然を利用して涼をとる先人の知恵だ「川床」は、暑さのなか、エアコンなどの電化製品が無かった時代から受け継がれてきた、建物と自然を利用して涼をとる先人の知恵だ

京都の「川床」は、夏の風物詩である。
うだるような暑さのなか、ひとときの涼を求め、川べりでゆったりとした宴を楽しむ。これは、エアコンなどの電化製品が無かった時代から受け継がれてきた先人の知恵である。

「川床」の呼び方は地域によって違い、京都の奥座敷である貴船では『かわどこ』、鴨川では『かわゆか』、さらには『納涼床(のうりょうゆか)』とも呼ばれている。いずれも京都の歴史情緒が感じられて人気が高い。京都に行くなら、川床で涼感とともに鮎や鱧、京野菜などの膳を味わいたいと思う人も多いのではないだろうか。

京の町衆文化として受け継がれてきた夏の川床。そもそもいつ頃から始まったのだろうか?

川床のはじまり

川床のおこりは、戦国の世が終わり、豊臣秀吉によって天下統一がなされた頃。三条や五条橋の架け替えなどを経て、鴨川の河原に見世物や茶屋を開いたことにはじまる。

京都市は三方を山に囲まれる盆地で、昔も今も夏は蒸し暑い。一節によると、夏に鴨川で涼む習慣は平安時代からあったといわれるが、折り畳みの腰掛である床几(しょうぎ)を並べて夕涼みを楽しむようになったのは江戸時代に入ってからのことだ。

鴨川納涼床が年中行事として、最初に文献に登場するのは寛永2年(1662年)。当時のガイドブック『案内者』(中川喜雲・著)には、にぎにぎしく繰り出す人々の様子が描かれている。祇園祭の神輿洗いの時は、神輿が鴨川で禊ぎをするのにあわせて人々が集まり、目早い茶屋が大繁盛。中洲にも多くの床几が出されるようになった。現代の鴨川の姿は、昭和の改修工事によって形づくられたもの。昔の鴨川は、川幅が今よりももっと広く、中洲をぬうように水が流れていたようだ。

江戸時代の中頃には、茶屋は400軒を数え、話し合って床几の数を決めたり、費用を出し合って雑踏の整理などを組織的に行っていたことが記録されている。当時は、張り出し式の床や床几を並べただけのもので“河原の涼み”と呼ばれていた。

鴨川納涼床の様子は、円山応挙の眼錦絵や安藤広重の浮世絵にも描かれ、京の夏を彩る年中行事として全国的にも知られるようになっていく。

明治時代になり、現代の屋形から床を張り出す形へと確立されていったようだ。

京の夏座敷いろいろ

大正時代になると、京都随一の避暑地として知られる「貴船」での川床がはじまる。茶屋が貴船川に床几を出したところ、客が川に足をつけて涼めるようにしたことに由来するらしい。その後、京風の料理でもてなす現代のスタイルが定着していく。

木々が生い茂る自然豊かな貴船は、市内中心部よりも気温が低く、真夏ではその差がマイナス10度ほど違うともいわれる。
清流・貴船川の流れに沿って立ち並ぶ料理旅館や茶屋は、滝や岩などの地形を活かして川床をつくっている。貴船の川床は、川の真上に桟敷が出ているところが多く、その高さは水面より数十センチ。“天然のクーラー”ともいえる清涼感を求めて訪れる人が後を絶たない人気のスポットでもある。

京都の川床には、有名な「鴨川」「貴船」のほか、もみじの景勝地として名高い「高雄」や、広大な日本庭園を縫うように流れる「鷹ヶ峯」の溪涼床(けいりょうゆか)など、地形を巧みに利用した夏座敷が多く点在している。

京都随一の避暑地として知られる「貴船」の川床。</br>水面より数十センチ上のところに桟敷が出ていることが多く、清涼感を求める人で人気のスポットだ京都随一の避暑地として知られる「貴船」の川床。
水面より数十センチ上のところに桟敷が出ていることが多く、清涼感を求める人で人気のスポットだ

自然のなかで涼み、くつろぐ楽しみを

「川床は格式が高くて、いきにくい」。
そういったイメージを持っている人もいるのではないだろうか?
実はうれしいことに、若い人でもカジュアルに楽しめる店が増えているのだ。

昨今の鴨川納涼床では、100年を超す老舗料亭や旅館からイタリアンやフレンチ、アジア料理、カフェなど多彩な店が軒を連ねる。京の伝統と多文化の融合で様々な川床の風情が味わえるようになってきた。
これらの背景には、京都鴨川納涼床協同組合が組織され、川床営業の基準を定め、鴨川の美化に取り組むなどのたゆまぬ努力があるようだ。

風土を活かした都会の水辺といえば、遠く海外のフランスにもある。パリのセーヌ川沿いに、期間限定で人工ビーチを設けた「パリ・プラージュ(Paris Plage)」が人気を集めているらしい。
古今東西、川のせせらぎや水面を渡る風に癒されるのには変わりがないのだろう。

五感を研ぎ澄まし、自然のなかで涼み、くつろぐ楽しみを体験してみてはいかがだろうか。

2015年 08月28日 11時06分