大阪にあった!都心でくつろぐレトロモダンな“川床”

北浜テラスの参加店から中之島を望む。水と緑に映える赤レンガの大阪市中央公会堂は、近代大阪の芸術・文化の発展に大きくかかわってきた国指定の重要文化財北浜テラスの参加店から中之島を望む。水と緑に映える赤レンガの大阪市中央公会堂は、近代大阪の芸術・文化の発展に大きくかかわってきた国指定の重要文化財

「川床」といえば、京都の鴨川にせり出した床をイメージする人が多いかもしれない。
しかし、大阪市中心部のビジネス街に「北浜テラス」と呼ばれる川床があることをご存知だろうか?

ちなみに、川床の呼び方は地域によって違い、
北浜では『かわゆか』、京都の奥座敷である貴船では『かわどこ』、鴨川では『かわゆか』さらには『納涼床(のうりょうゆか)』とも呼ばれている。

大阪市中央区北浜は、五代友厚像が立つ有名な大阪取引所があり、関西を代表する金融ビジネスのメッカである。また、土佐堀川に面し、都会のオアシスといわれる中之島の対岸に位置する。

その「北浜テラス」の川床から望む景色は、絵葉書に見るパリのセーヌ川のように美しく、
都会のど真ん中にいるとは思えないほどの解放感がある。

従来、河川敷地は自治体などの管轄になり自由に使うことはできない。
だが、北浜テラスは「大阪ならではの風物詩をつくりたい」というさまざまな人の願いのもと、いくつもの困難を乗り越えて生み出された。水辺を愛してやまない人たちの想いは、いかに?

北浜テラスを主催する北浜水辺協議会の理事である末村 巧さんにお話を伺った。

水の都・大阪の魅力を伝え続けたい

大川を目の前に望むビルの最上階が末村さんのオフィス。背後には剣先公園の大噴水が見える大川を目の前に望むビルの最上階が末村さんのオフィス。背後には剣先公園の大噴水が見える

かつて大阪は、“東洋のベニス”と呼ばれ、舟運を支える河川とともに発展してきた。
古くの北浜は、多くの船が行き交い、川辺に軒を連ねる旅館や料亭に小舟を着ける粋な光景があったという。しかし、時代は流れ、いつしか川と人は遠い存在になっていた。

「私は生まれも育ち大阪ですが、市内の水辺はここ数年で見ちがえるほど美しくなりました。昔、水辺といえば薄暗くて近寄りがたく、危険な場所と感じていましたから」と、末村さんは大阪の水辺イメージについて振り返る。

そもそも、北浜に「川床」ができたきっかけは何だったんだろうか?

「北浜テラスは、川と街の連続性をつくり、水辺の魅力を広く伝えたいという思いを『水都大阪2009』という機会に結実させ、民の思いに官が応えた民都大阪らしい取組みなんですよ」と、説明する。

『水都大阪2009』とは、水の都・大阪の復興をめざしたイベントで、2009年に官民協働で行われた。大川の中洲にあり、水との親和性が高い中之島公園や水の回廊を中心とした市内各所において、川と人をつなぎ、水辺の楽しさを再発見できるプログラムが展開された。

北浜テラスは、その一つとして生まれた社会実験であり、“期間限定の川床”だった。
恵まれた立地にあるにも関わらず、建物が川に背をむけ、その価値を生かしきれていない現状を再認識したのだと言う。

「2009年のイベントをきっかけに“もっと多くの人に心地よい川床を味わってほしい”という願いが募ってできたのが、北浜水辺協議会なんです。集まったメンバーは、水辺の活性化をめざすNPOやビル・飲食店のオーナー、地域の連合町会や住民などさまざま。“川床の常設許可を”と団体組織を超えて連携し、行政に働きかけていった経緯があります」。

こうして北浜水辺協議会は、民間の任意団体として全国で初めて河川敷の包括的占用者としての許可を受け、「北浜テラス」が生まれた。

昼も夜も、魅力的な水辺空間

末村さんは、大阪の水辺にある物件だけを扱う「水辺不動産」の代表であり、水辺のある暮らしをこよなく愛する一人だ。

「水辺も公共空間のひとつで、その様子は大きく様変わりしたと感じています。大川や土佐堀川沿いを歩いてみると、犬の散歩をする人やランチを楽しむカップル、野外ヨガレッスンやトラッンペット練習にはげむ姿など、思い思いに川辺を楽しんでいることを感じます」(末村さん)

うれしいことに、水面の活用として、船舶が通らない時間帯に限り、ゴムボートやカヤックなど手漕ぎボートを楽しめる「手こぎ天国(テコテン)」も実現している。

「水上から街を見上げると、いつもとは違う新しい発見があります。刻一刻と変わりゆく景色が素晴らしく、青い空と迫るビルのコントラストに感激しました」と、魅力を語る。川に対するネガティブな印象はすっかり消え、「今では水辺にどんどん近づいています」と、ほほえむ。

左上/天神橋から見た中之島公園  夜はライトアップされ、違う顔を見せる水辺空間
右上/難波橋と大阪取引所 左下(提供:末村氏)/水上から見た中之島フェスティバルタワー 左上/天神橋から見た中之島公園  夜はライトアップされ、違う顔を見せる水辺空間 右上/難波橋と大阪取引所 左下(提供:末村氏)/水上から見た中之島フェスティバルタワー 

「北浜テラス」を大阪ならではの風物詩に

カジュアル・レストラン 「OUI」のマネージャー・北條真菜美さん。テラス席は、大阪市中央公会堂や大阪市役所を望む絶好のロケーションにあるカジュアル・レストラン 「OUI」のマネージャー・北條真菜美さん。テラス席は、大阪市中央公会堂や大阪市役所を望む絶好のロケーションにある

現在、北浜テラスは、カフェやビストロ、イタリアン、カジュアル和食、スペインバルなどバラエティ豊かな11店舗がテラス席を有するまでに広がり、オフィス街の新たな名所になりつつある。

北浜テラスの参加店であるカジュアル・レストランOUI(ウィ)のマネージャー・北條真菜美さんは、「テラスの目的は、いかにお客様に水辺の心地よさを感じてもらうかです。天候がよいと、予約はテラス席から先に埋まってしまいますが、店内のお客様でもテラス席が空き次第、ご要望を叶えるようにしています」というほど好評だ。
しかも、川床のチャージ料もかからず、リーズナブルである。

ゆるやかな川の流れを身近で感じられる環境は、優雅でぜいたくだ。
自然の風が通り抜けるテラス席は、そこにいるだけで心地よく癒される。

いにしえより“水の都”と呼ばれていた大阪。現代風にアレンジされたことによって、その魅力は増しているようにさえ思う。これからの「北浜テラス」と水辺の新たな利活用に注目したい。

2016年 07月18日 11時00分