国内・海外の照明技術を一斉展示。最新照明事情はどうなっているか?

国内外の約222社が出展した。各企業が趣向を凝らしたブースを展開し、会場はとても賑わっていた国内外の約222社が出展した。各企業が趣向を凝らしたブースを展開し、会場はとても賑わっていた

2015年3月3日から3月6日の期間、東京ビッグサイトにて開催された「ライティング・フェア2015 第12回国際照明総合展」に参加してきた。国内・海外のメーカー約222社が一同に会し、住宅・店舗などに向けた最新の照明製品や、機能を向上させるシステムなどを展示するイベントだ。国内外の照明業界関係者や店舗の照明を考える小売業者、自宅の照明を検討する一般ユーザーなど幅広い参加者で賑わった。

住まいにおける照明は様々な種類があり、単純に明るくするだけでなく部屋を演出する役割も持っている。最新の照明事情はどうなっているのか?
「ライティング・フェア2015」の様子をレポートする。

天野浩氏の講演に見る、LED普及の課題と可能性とは

講演する名古屋大学大学院の天野浩教授。講演では、本題の他にも青色LED開発に至る経緯やノーベル賞の授賞式についても話してくれた講演する名古屋大学大学院の天野浩教授。講演では、本題の他にも青色LED開発に至る経緯やノーベル賞の授賞式についても話してくれた

イベントのオープニングとして、青色LEDの開発で2014年のノーベル物理学賞を受賞した、名古屋大学大学院教授の天野浩氏による特別講演が行われた。テーマは「LEDの可能性と照明の未来」だ。

省エネ性能の高さが広く評価されるLEDだが、その効果と今後の普及について天野氏はこう説明する。

「アメリカのエネルギー省によれば、米国内では2030年までのLED化率が約74%を超えると予測されています。それによる省エネ効果は、300TWh。これは、現在稼働停止している日本の原発48基(全発電量の30%)に置き換えられます。日本での普及はさらに進んでおり、2020年までにLED化率が70%を超えると予測され、これは国内の全発電量のうち7%の省エネ効果と試算できます」(天野氏)

ただし、それを実現するためには「いかにコストを下げられるかが重要」と続ける天野氏。
現在の価格では、途上国での利用拡大も含めた普及は難しいということのようだ。そうした地域での発展の可能性を示唆するものとして、天野氏はモンゴルの教育大臣と対面した際のエピソードを話した。

「放牧の生活を維持している人が現在も80%超と言われているモンゴルですが、維持することが難しくなっているのも現状です。しかしLEDによる簡易照明が普及したことで、LEDと太陽電池とバッテリーの組み合わせで放牧生活を維持でき、子どもたちも夜に勉強したり本を読んだりすることが可能になったそうです。“LEDがモンゴルの文化を守ってくれた”と、大変感謝されました。その他にも今後、アフリカや中央アジア、東南アジア等で電力の恩恵を受けられない地域の人たちにも提供できるようにしていきたい」(天野氏)
LEDは、単なる照明という役割を超えて文化にも影響を与える可能性をもつということを示した。

無線のライトは、「話す」「押す」「触れる」などの動作がスイッチに

ライティング・フェア2015の展示では、各社が様々なブースで自社製品やシステムの紹介を行う。その中でも気になったものを紹介したい。

ローム株式会社は、建築家の海法圭氏とのコラボレーション企画を展示していた。通常、電球と配線スイッチによってオン/オフを切り替える照明の操作を「押す」「話す」「触れる」などの動作によって可能にする技術を紹介するものだ。
例えば、バッテリーを搭載しないスイッチを「押す」、鳥の形をした小さな金属のパネルに優しく「触れる」、スマートフォンに向かって「話す」といった簡単な動作で、照明の切り替えが可能なのだ。これらは、その動作によって起こる電流を利用して照明器具に直接信号を送ることで、オンオフや明るさの切り替えを可能にしているという。

配線無しで明かりをコントロールできるため、建物に手を入れる電気工事が必要無くなる。これまで天井や壁に取り付けた照明は、配線があるため後からの工事が難しく、照明の位置を変えるという発想になりにくかったと思うが、この機能を利用すれば好みに応じて照明の配置を変えることもできる。照明をインテリアの一部として自由に扱うことができる他、リフォーム工事の際などにも有効だと感じた。

このテーブルにある全てが「スイッチ」だ。カラフルな丸いものが、電源を搭載しないスイッチ。</br>携帯電話に話しかける、白い棒を丸い輪に通すなどの動作で電気をコントロールするこのテーブルにある全てが「スイッチ」だ。カラフルな丸いものが、電源を搭載しないスイッチ。
携帯電話に話しかける、白い棒を丸い輪に通すなどの動作で電気をコントロールする

照明を変えることで住まいの変化を演出する

株式会社YAMAGIWAでは、有名ブランドのコンセプト開発や日本航空のファーストクラスのシートを手がけるデザイナー、ロス・ラヴグローブ氏とコラボしたLED照明を提案。電球と傘という従来の照明のあり方を覆す、電球自体の形状を変えたものをそのまま設置するデザインだ。
それ自体がオブジェのように、高いデザイン性でインテリアの役割を持ちながら、大きさや配置の工夫でシーンに応じて明かりに変化を出すことができる。その他にも様々なデザインの照明を展示するブースが多く、照明におけるデザイン性が重要な要素であることが実感できる。

今回各社の展示を見てまわり、LEDや節電効果をアピールする製品が多くを占めている印象を受けた。住宅と同様に、照明の市場でも省エネ効果が注目されていることがわかる。他には、次世代の照明として注目されている有機ELや、最新の照明制御システム、活用事例などが紹介されており、これから新しい効果を持った照明器具やシステムの登場を感じさせられるとともに、同じ照明でも用途などによって想像以上の種類がある事にも改めて驚かされた。

明かりは、室内を照らすといった役割以外にも、その空間を演出するものでもありながら、天野氏の講演にあったように文化をかたちづくるものでもあるという可能性の大きさを実感できた。技術を駆使して、各メーカーも多岐に渡った特長の照明を開発している。住まいについては、省エネ効果、団らんや勉強に適した明かりなど、部屋の役割に適した照明機器を利用するなど、もっと積極的に明かりを取り入れて部屋ごとの変化を楽しんでみても良いかもしれない。

(左上)染色体の増殖と細胞分裂をイメージしたというデザインの「systemX versionS」。</br>吊るタイプ、壁にかけるタイプなど複数のバリエーションが展開されている</br>(左下)LEDのペンダントライトも各メーカーごとに多数のデザインが展示されている</br>(右)ローム株式会社のスイッチの一つ。この鳥のモチーフに触れることで電気の切り替えができる。</br>子ども部屋などで利用したい仕組みだ(左上)染色体の増殖と細胞分裂をイメージしたというデザインの「systemX versionS」。
吊るタイプ、壁にかけるタイプなど複数のバリエーションが展開されている
(左下)LEDのペンダントライトも各メーカーごとに多数のデザインが展示されている
(右)ローム株式会社のスイッチの一つ。この鳥のモチーフに触れることで電気の切り替えができる。
子ども部屋などで利用したい仕組みだ

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