その1「南海トラフ地震は、約4~5分揺れが続く」と肝に銘じるべし

▲名古屋市港防災センターの「地震体験室」では、過去に起きた震度7の大地震の揺れを体験できる。地震が来ると『あれ、揺れてる?』と様子をうかがってしまうが、「スグ身を守る」という瞬発力が大事!▲名古屋市港防災センターの「地震体験室」では、過去に起きた震度7の大地震の揺れを体験できる。地震が来ると『あれ、揺れてる?』と様子をうかがってしまうが、「スグ身を守る」という瞬発力が大事!

3月上旬の未明、名古屋市で震度3の地震があり、慌てふためいた。東京と名古屋を住み比べてみると、名古屋は震度1ですらあまり起きないため、心の準備ができていない人は多いと思う。そこで「名古屋市港防災センター」を訪れ、身を持って大地震の備えを学ぶことにした。

案内してくれたのは、名古屋市港防災センター・センター長の吉村隆さんと、副センター長の大場玲子さん。
「南海トラフ巨大地震が発生すると、名古屋市では震度7・震度6強・震度6弱の揺れが想定されています。しかも揺れは4~5分続くと言われています」(大場さん)

東日本大震災も3分ほど揺れが続いたと言われるが、より広域で起こる南海トラフでは、それを上回ると予測されている。震度6弱とは「大半の家具が移動したり、倒れるものもある」地震のため、揺れている最中は何もできない。とにかく命を守ることが先決だという。

「昔は『揺れたら火を消す!』というのが鉄則でしたが、今のガスコンロやファンヒーターはマイコンメーターが設置されていて、自動消火します。やけどの恐れがあるため、無理して火の元には近づかないでください。
小さな揺れを感じ始めたら、即、机の下などにもぐって身を守ってください。揺れが収まったら、『ガスの元栓を閉める』『窓やドアを開けて避難路を確保する』、避難する時には『ブレーカーを落とす』こと。ブレーカーを落とすのは、復旧後に通電されたときに、漏電による火災を防ぐためです」(大場さん)

さっそく大場さんのアドバイスを胸に、地震体験室で「阪神・淡路大震災 震度7」の揺れを体験してみることに。わずか1分弱だったがとてつもなく長く感じ、机の脚につかまるのに必死。周りを見る余裕もなかった。
これが4~5分も続くなんて…我が家の強度や家具は大丈夫なのだろうか。

その2 寝ている時間が一番長い。『寝室』の対策を重んじるべし

▲タンスの正面で寝ている場合は、タンスが転倒する黄色のゾーンから頭を離すことが大切。ベッドで寝ている人は、素早く下に降りて、ベッドにくっついて身を守ると、モノが倒れてきた時に直撃を受けにくいのだとか▲タンスの正面で寝ている場合は、タンスが転倒する黄色のゾーンから頭を離すことが大切。ベッドで寝ている人は、素早く下に降りて、ベッドにくっついて身を守ると、モノが倒れてきた時に直撃を受けにくいのだとか

さて、家の中でどこを一番安全な場所にすればいい? 「家の中で長く過ごす場所は、寝室です。ですから、寝室こそ安全な場所にしてほしい」と吉村さんは話す。

「洋服を詰め込んだタンスは、だいたい100㎏の重さがあり、下敷きになると身動きできません。タンスが倒れる方向は長辺方向と決まっていますので、タンスの正面で寝るのは避けたいところです。せめて頭だけでも、タンスの倒れてくる危険ゾーンから離してください」(吉村さん)

震度6弱を超えると、不安定な家具は倒れ始める。
「もしタンスの正面で寝ている場合は、タンスが倒れてこない やや安全ゾーンまで這って逃げてください。ベッドで寝ている場合は、床へ降りてベッドのすぐ脇で横向きになり、枕や布団をかぶって頭と心臓を守ってください」(図参照)

熟睡していると、とっさの避難行動が取りにくくなるもの。住宅事情が許せば、「タンス部屋」をつくって重たいタンスや本棚などを集約するのが、一番効果的だそうだ。

その3 家具は倒れる。倒れるまでの時間を稼ぐべし

大震災では、家具が武器になる、とよく耳にする。だから我が家も「つっぱり棒」で食器棚を固定しているのだが、吉村さんは「つっぱり棒だけでは、揺れが大きいと倒れてしまうことがあります」と話す。

「つっぱり棒を2本立てて、タンスを固定したとします。タンスが100㎏ある場合、天井との小さな接地面には、50㎏ずつの負荷がかかることになります。ところが天井は、薄い化粧ボードが貼ってあることが多いため、つっぱり棒のように1点に力が集中すると、天井が壊れてしまい、家具が倒れてしまうことも予測できます」(吉村さん)

家具を固定するのは「逃げるまでの時間を稼ぐというのが主な目的です」と、吉村さんはきっぱり。そこで今回「ホームセンターで1000円以内で買える」手軽な固定方法を伝授してくれた。

1 断熱材の「スタイロフォーム」を購入し、45センチ×90センチにカットする。
2 タンスと天井との空間に合わせた、空の段ボール箱を用意する。
3 タンスの上に、スタイロフォームと段ボール箱をのせて、隙間をぴったり埋める。
4 天井との間に隙間があいたら、段ボールをはさんで調整する。
(下の写真を参照)

つまり、家具の固定は「点ではなく、面で固定する」ことが、より有効。
リフォームや新築の場合は、あらかじめ『壁面収納』を造作して、天井までぴったりと備え付けるのがおすすめだ。

▲断熱材のスタイロフォームを切って、2枚で段ボール箱をはさみ、天井とタンスの空間を埋めるというオリジナルの家具固定術を教えてくれた▲断熱材のスタイロフォームを切って、2枚で段ボール箱をはさみ、天井とタンスの空間を埋めるというオリジナルの家具固定術を教えてくれた

その4 ハザードマップや耐震診断などの行政サービスを活用すべし

▲映像と地図で、震度や津波の様子がシミュレーションできるコーナー。右側にあるのは、中部を走る断層を示した地図。「最近、名古屋市の中心部に2本の断層が走っていることが分かり、話題になりました。活断層かどうかは調査中です」(大場さん)▲映像と地図で、震度や津波の様子がシミュレーションできるコーナー。右側にあるのは、中部を走る断層を示した地図。「最近、名古屋市の中心部に2本の断層が走っていることが分かり、話題になりました。活断層かどうかは調査中です」(大場さん)

南海トラフ巨大地震の想定震度は、名古屋市の場合、最大震度7から震度6弱。これは「耐震性の低い木造建物は、傾く・倒れる」といった、住宅の被害も出始める震度となる。

「家具を固定しても、家が壊れてしまえば意味がありません。昭和56年以前に建てられた木造の住宅は、耐震診断を受けてください。名古屋市では『無料耐震診断』を行っています」(吉村さん)

吉村さんによると、「うちは倒れない」と思っている人が多く、耐震補強への危機感はまだまだ低いと感じているそう。
「港防災センターでは、月に1回『無料耐震相談会』を開催しています。大切なご家族を守るために、ぜひ活用してほしいですね」

また、今すぐできる心の備えとしては、行政の『ハザードマップ』で自宅周辺の震度や、液状化区域、津波の想定、避難場所を確かめること。
「『地震発生後、津波は30センチの第1波が96分後に到達する(港区の場合)』といった想定を名古屋市が発表しているので、知っておくと心構えができると思います」(大場さん)。

『名古屋市港防災センター』では、地震の揺れの体験、地震シミュレーション装置のほか、「非常食ランチパーティー」「防災ウォーク」といった体験しながら学べるイベントを定期的に開催している。親子で出かけて、イザという時に身を守る術を発揮できるよう備えてみてはいかがだろう。

取材協力/名古屋市港防災センター

2015年 03月24日 11時07分