東京駅のような赤レンガ建築「岡崎信用金庫資料館」が突如現れる

愛知県岡崎市の公務員がプライベートで行っている空き店舗撲滅運動『ここdeやるZone』、通称ここやる。今回『ここやる』が開催する「大学生とまち歩き」に参加してきた。 

2019年3月上旬、岡崎市の中心市街地・康生からまち歩きはスタート。岡崎市在住の会社員・近藤浩二さんがボランティアでガイドを務め、徳川家康公の歴史からまちの小ネタや地理解説まで、軽妙なトークで案内してくれた。「岡崎市を自慢に思ってほしい」と話す近藤さんが、自信を見せるのが「岡崎信用金庫資料館」だ。

大通りから1本入った住宅街で、ひときわ目立つレンガ造りの建物。岡崎銀行本店として1917年に建てられた近代建築であり、今は資料館として残されている。
「こちらは、東京駅を設計した建築家・辰野金吾氏を師とあおぐ鈴木禎次氏の設計です。東京駅と似ていますが、ちょっと白っぽいのは地元名産の御影石を多く使っているからです」という解説に、「へぇ~」と見上げる参加者たち。突如現れた名建築からまちの豊かさを感じ取れる。

徳川家康公が生まれた岡崎城の城下町であり、昭和の時代は地域経済の中心地として栄え、平成では住宅街へと変わってきた岡崎市。これからはどう変貌するのか?実際に歩くと、歴史を生かして進化するまちづくりが見えてきた。

空襲を受けたが修復され「岡崎信用金庫資料館」として現存する貴重な建築物(2020年冬まで工事のため休館中)。「窓の下に建築家・鈴木禎次氏のTがあしらわれています」などの解説も楽しい空襲を受けたが修復され「岡崎信用金庫資料館」として現存する貴重な建築物(2020年冬まで工事のため休館中)。「窓の下に建築家・鈴木禎次氏のTがあしらわれています」などの解説も楽しい

芝生が広がる「籠田公園」は今夏完成、「天下の道」は2020年を予定

つづいて中心市街地にある「籠田公園」へ。戦後復興とともに開園し、近年はマルシェや映画会などのイベント会場としても親しまれてきた公園だが、3月時点では工事の真っ最中だった。

「岡崎市では現在『QURUWA戦略』を立ち上げ、岡崎城や康生エリアの商店街といった観光資源を回遊できるまちづくりを目指しています。籠田公園はその動線のひとつで、7月の完成を目指してリニューアル工事中です」(『ここやる』副代表 中川光さん)

籠田公園の完成イメージを見てみると、公園内を斜めに通る旧東海道を境目にして、半分はステージのある芝生広場、半分は遊具やデッキが並び、まちのオアシスやイベント会場として楽しめる計画に。市民が手入れを続けてきた愛着のある芝生広場はなくさず盛り込まれた。

「さらに市では、乙川にかかる人道橋・中央緑道・籠田公園を直線的に結ぶまち歩きルートを整備中です」と中川さん。人専用の人道橋を新設し、既存の中央緑道を広げて大階段のテラス等をつくる工事が進んでいて2020年に完成予定。この3月には、中央緑道が「天下の道」、人道橋が「桜城橋(さくらのしろばし)」という愛称も決定した。こうした新名所が完成すれば、観光の機運がぐっと高まりそうだ。

「籠田公園から康生エリアの商店街にも回遊してほしいですね」という中川さんの案内で、次は公園から歩いてすぐの連尺通りへ向かった。

上/2019年3月時点の籠田公園の様子と完成模型。 下/既存の中央緑道と完成模型。幅員30mもある中央緑道(愛称:天下の道)の真ん中に、河岸段丘を生かした大階段のテラスなどをつくる計画(模型は岡崎市ホームページより)上/2019年3月時点の籠田公園の様子と完成模型。 下/既存の中央緑道と完成模型。幅員30mもある中央緑道(愛称:天下の道)の真ん中に、河岸段丘を生かした大階段のテラスなどをつくる計画(模型は岡崎市ホームページより)

リノベーションした店舗が目を引く、一番古い町「連尺通り」へ

「連尺通りは徳川家康公の祖父の時代につくられた、岡崎市で一番古い町です。江戸時代はここが東海道となり、商店が軒を連ねてにぎわったんですよ」とガイドの近藤さん。江戸の面影はほとんどないが、デザインの凝った建物が多いことに気づいた。例えばブティックの「ラ・ひまわり」はその名の通り、外壁に描かれたひまわりのモザイク画が目を引く。店主にルーツを尋ねてみた。

「この場所で、祖母の時代に婦人服専門店を開いて今に至ります。祖母は、当時大人気だった中原淳一さんデザインの小物を取り扱いたいと考え、上京して直接交渉。ご本人の許可を得て、中原さんが手掛ける少女向け雑誌『ひまわり』の名を店名にし、昭和34年に、ひまわりを外壁にあしらったこのビルを建てました」(ラ・ひまわり3代目店主 都筑さん)

当時は部屋の明かりを灯して、ひまわりのガラス部分をライトアップしていたというのも粋だ。
「最近、少しでも通りのにぎわいになればと思ってひまわりのライトアップを再開しました。連尺通りでは通りを使ったイベントが開かれて盛り上がってきているので、まちの今後が楽しみです」(都筑さん)

先進的で元気な店主たちが代々支えてきた連尺通り。今もラ・ひまわりをはじめ老舗の3、4代目が、店舗を改築して時代に合った店づくりを進めている。一方で「大通りよりも賃料が抑えられることもあって新たな出店がしやすく、ビルや空き店舗をリノベーションした店が少しずつ増えています」と、『ここやる』のメンバーは話す。とくにリノベ店舗を使ったアパレルショップが目に留まるのは、呉服屋が多く「呉服通り」とも呼ばれた名残だろうか。宝探し気分でお店めぐりを楽しみたいと思った。

上/ブティック「ラ・ひまわり」の壁画は、2016あいちトリエンナーレ岡崎会場へ訪れたアーティストからも注目を集めた(左)、創業90年以上の老舗「刃物の正長」がクールな外観に。下/手焼きせんべいの一隆堂がにぎわい創出のため空きビルをリノベーション(左)、セレクトショップ「Songs」では「内藤ルネさんデザインのランプを展示している」と近藤さん。「KAWAII」文化のルーツと言われるマルチクリエイター・内藤ルネさんは岡崎市出身!上/ブティック「ラ・ひまわり」の壁画は、2016あいちトリエンナーレ岡崎会場へ訪れたアーティストからも注目を集めた(左)、創業90年以上の老舗「刃物の正長」がクールな外観に。下/手焼きせんべいの一隆堂がにぎわい創出のため空きビルをリノベーション(左)、セレクトショップ「Songs」では「内藤ルネさんデザインのランプを展示している」と近藤さん。「KAWAII」文化のルーツと言われるマルチクリエイター・内藤ルネさんは岡崎市出身!

徳川家康公の歴史遺産を生かした、温故知新のまちづくり

今回のまち歩きは、江戸時代に描かれた岡崎城下の古地図を見ながら散策した。
東海道の岡崎宿は「二十七曲がり」として知られている。これは城下町に東海道を引き込み、岡崎宿内を27回曲がって通り抜けるよう道筋を整備したもの。敵の侵入を遅らせる意味もあるが、「直線的な道よりも商店を多く並べやすく、まちの経済効果を狙った」というから先進的だ。今も「二十七曲がり」の案内看板に沿っていけば、旧東海道を歩くことができる。

さて岡崎市の観光といえば、天下統一を果たした徳川家康公ゆかりの地は欠かせない。中心市街地・康生から徒歩10分ほどの「松應寺(しょうおうじ)」は、家康公の父・松平広忠が眠る地。家康公が8歳の時、父の墓所に松を手植えし、後に父の菩提寺を創建したという。

「ぜひ見てほしいのが木造アーケード街。日本で一番古いとも言われています」とガイドの近藤さん。松應寺境内に続く20mほどのアーケードは昭和の時代まで花街として栄えていたが、ほとんどが空き家に。かつての活気を取り戻そうと2011年から地域の活動が始まり、「松應寺横丁」として昭和レトロな雑貨店やバー、ケーキ店などが開店した。ボンカレーのホーロー看板が残る路地は、ノスタルジックでSNS映えすると好評だ。

最後に、家康公が生まれた岡崎城の天守閣や資料館、からくり人形といった見どころがそろう「岡崎公園」を見学してまち歩きは終了。「岡崎市民なのに知らない場所もあって楽しかった」と若い参加者の目にもいろいろ新鮮に映ったようだ。家康公と八丁味噌という2大コンテンツに甘んじることなく、新たな魅力創造を続ける岡崎市。名古屋を訪れた時には足を延ばして、ぜひ観光を楽しんでみてはいかがだろう。

観光情報/岡崎市「岡崎おでかけナビ」 https://okazaki-kanko.jp/
取材協力/岡崎市空き店舗撲滅運動『ここdeやるZone』 
https://okazaki-coco-yaru.jimdo.com/

上/松應寺横丁のアーケードは入るのにちょっとドキドキ(左)。一角にある小さなケーキ店「パスレル」は2018年にオープンしたばかり。「デートで穴場として案内したらカッコいい」と参加者。下/日本百名城のひとつ岡崎城(左)、岡崎公園内には5/6までの期間限定で、内藤ルネとコラボした「ルネカフェ」がオープンした上/松應寺横丁のアーケードは入るのにちょっとドキドキ(左)。一角にある小さなケーキ店「パスレル」は2018年にオープンしたばかり。「デートで穴場として案内したらカッコいい」と参加者。下/日本百名城のひとつ岡崎城(左)、岡崎公園内には5/6までの期間限定で、内藤ルネとコラボした「ルネカフェ」がオープンした

2019年 05月12日 11時00分