日本の住宅の省エネルギー基準は欧米諸国に比べ遅れていた

住宅の断熱性能などの指標として用いられる省エネルギー基準。これで最高ランク(等級4)と認定された住宅は、フラット35Sによる住宅ローン金利の引き下げなど様々な優遇措置が用意されている。その省エネルギー基準が今年(2013年)10月に14年ぶりに改正される。その背景としては3.11によるエネルギー供給問題はもちろん、日本の省エネ基準が欧州先進国に比べ遅れをとっていることもある。
日本の住宅の断熱性能は前回1999年の基準改正(平成11年基準)により欧米レベルに達した。しかし、欧米諸国の多くは強制基準となっているのに対し、日本は努力目標、つまり未達の住宅を建てても罰則がないのだ。
さらにドイツなどは断熱性能のほかに、暖房・温水設備基準や熱消費量計量装置といった省エネに貢献する設備に対しても強制基準を設けている。
1997年に議決した京都議定書では、日本は2008年から2012年までの温室効果ガスの排出量を1990年から6%削減することを目標とした。しかし2006年の時点ではプラス6.4%。ドイツやフランスなど欧州先進国が大幅に削減しているのに比べ非常に情けない状況だ。
また、日本において冷暖房や給湯など家庭内のCO2排出量は全体の15%を占める。これは部門別でいうと製造業などの産業、事務所などの業務に次ぐ3番目で、貨物などの運輸よりも多い。
このような状況から日本の住宅の省エネ基準の改正は急務だったわけだ。

省エネルギー基準の国別比較省エネルギー基準の国別比較

改正基準は断熱性能だけでなく住宅が消費するエネルギーそのものも適合項目となる

おもな改正点は3つ。
1.地域区分
日本の国土は南北に細長い。当然気候は様々だ。そこで従来の省エネ基準では6区分だった地域区分を8区分に細分化した。
2.外皮の熱性の基準
熱性の基準とは断熱性能の基準のことだ。旧省エネ基準(11年基準)では、建物の内と外の温度差が1℃の時に1㎡あたり1時間に逃げていく熱量を床面積で割った熱損失係数(Q値)と、建物に侵入する日射量を床面積で割った夏期日射取得係数(μ値)を指標としていた。ところがこの場合同じ床面積でも外壁の形状が単純な□型より凸型など複雑な方が不利となり、誤差が出てしまう。そのため、床、壁、天井の合計面積(外皮面積)で割る外皮平均熱貫流率(UA)値、冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)が採用されることになった。
3.一次エネルギー消費量基準の導入
旧省エネ基準(11年基準)の適合項目は上記熱性基準のみだったが、今回より一次エネルギー消費量基準も加わった。一次エネルギーとは石油など自然から採取したままのエネルギーのこと。一方で電力など加工されたエネルギーを二次エネルギーという。改正基準では、ドイツなどのように冷暖房や照明、給湯といった設備機器のエネルギー消費も適合項目となる。これらの消費エネルギーを合計し、一次エネルギーに換算したものが指標となるのだ。

(出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会)(出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会)

今後の日本の住宅が抱える省エネルギーの課題

改正基準は今年(2013年)10月1日から施行となるが、経過措置としてその後2014年3月31日まで旧基準でも適用となる(図A)。国土交通省は2020年までにこの改正省エネ基準の義務化を目指している。つまり努力義務ではなくなるということだ。しかしここで課題がある。
現在、住宅性能評価における旧省エネ基準(平成11年基準)の適合率は4割弱(図B)。これは新築住宅の2割程度である住宅性能評価を受けた住宅での割合だ。調査もとの国土交通省は新築住宅全体での適合率は1~2割程度と推定している。
この数字の低さの理由は、高断熱化による建物価格の上昇や施行者の知識・技術不足など様々なものがある。旧省エネ基準でさえ1~2割の適合率なのに、よりハードルの高い改正省エネ基準の強制基準化を実現することができるのだろうか。
たしかに改正基準を満たした住宅は快適で、地球環境にもやさしいはずだ。だが、完全な義務化にはまだまだ課題が山積しているようだ。関係省庁は大工・工務店といった中小の施工企業を中心に省エネ技術の習得支援など様々な施策を検討している。
今後消費者としては、このような新しい省エネ技術を習得している施工企業かどうかを見極める必要があるだろう。

【関連リンク】
日本の省エネルギー基準は世界でどのレベルか(一般財団法人建築環境・省エネルギー機構)

諸外国の省エネルギー対策の現状について(経済産業省)

A:2014年3月31日までは経過措置として旧基準も適用となる(出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会の資料を基に作成) B:住宅性能評価における省エネ判断基準適合率の推移(出典:国土交通省)A:2014年3月31日までは経過措置として旧基準も適用となる(出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会の資料を基に作成) B:住宅性能評価における省エネ判断基準適合率の推移(出典:国土交通省)

2013年 09月24日 11時44分