スマートハウスの未来をつなぐ貴重な企画

HEMSは、家電と太陽光発電などの電気設備をつなぎ、電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」し、それらを無駄なく使えるように「制御」する(写真は『カワムラHEMS大学』の展示コーナーより)HEMSは、家電と太陽光発電などの電気設備をつなぎ、電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」し、それらを無駄なく使えるように「制御」する(写真は『カワムラHEMS大学』の展示コーナーより)

2014年10月23日、24日に名古屋でスマートハウスが学べる内覧会『カワムラHEMS大学』が開催された。同企画は、ホーム分電盤の開発から販売までを行う河村電器産業(本社:愛知県瀬戸市)が「分電盤からHEMSを増やす」を合言葉に主催し、電気エネルギー業界初の試みとして注目を集めて多くの来場者で賑わった。

最近、よく聞かれるようになり、ご存知の方も多いだろうが、HEMS(ヘムス、Home Energy Management System)とは、家で使うエネルギーを目で見られるようにし、最適にコントロールするシステムのこと。そのHEMSを利用して家電や太陽光発電、蓄電池などを一元管理して、自家発電と電力使用量の最適化を可能にする住宅が、スマートハウスといわれる。家のエネルギーをスマート(賢く)に使う生活を実現するということだ。

しかし、HEMSが広く普及していくには、まだまだ課題があるという。今回の『カワムラHEMS大学』は、ハウスメーカー、ハウスビルダー、マンションデベロッパーなどの中小企業をターゲットにしたもの。実は、そこがポイントとなっているのだ。

HEMSの“今”がわかるセミナーや展示

今回は、河村電器産業のほか、10の企業が参加。会場の一角では各社のHEMSに関わるサービスを紹介・発表するセミナーが順次開催された。

河村電器産業による「HEMS入門講座」は、入場時に配られたオリジナルのテキストを活用しながら、HEMSは知っていても詳しくは知らない…という参加者に向けての内容だった。平成24年「グリーン政策体網」(内閣官房 国家戦略室)によると、政府は2030年までに全世帯にHEMSを普及させることを目指し、まずは2016年まで、電力会社を選んで自由に電気を購入することができるような電力の小売りの全面自由化が計画されている。そうした状況にプラスしてHEMSが普及すれば、電気のコントロールもできるようになり、無駄なく節電可能になる。そこで、データを電力会社へ自動送信する機能を持った電力メーター、スマートメーターが導入されるわけだが、スマートメーターは家の中の各家電と直接つながってはいないため、家全体の電力の計測しかできないという状況に陥る。しかし、家中に電気を分配する機器であるホーム分電盤に計測機能が内蔵されていれば、各家電や家庭用燃料電池、電気自動車などにも個々につながって詳細な電力情報がわかるのだ。

ここで課題が明らかになった訳だが、注目されるホーム分電盤とHEMSが連携できるとは限らないのではないかということだ。ある会社のホーム分電盤を採用したら、その会社のHEMSしか使えないかもしれない。そうすると、各ハウスメーカーなどにとっては、顧客に対しての提案が狭まってしまうことになるのだ。

政府が推進し、すでに導入が始まっているものであるのに、業界では横のつながりがまだできていないことに大いに驚いた。そこで、河村電器産業は自社が開発した計測機能付ホーム分電盤ならば、さまざまなHEMSサービスに連携できる特徴を活かして、HEMSの加速ができると読み、今回の企画を開催したというわけだ。

名古屋駅前にあるミッドランドスクエアのミッドランドホールで開催された『カワムラHEMS大学』。参加企業は、セミナーと展示で自身のHEMSサービスを紹介。写真左下が、河村電器産業が開発したマルチベンダータイプの計測機能付きホーム分電盤「enステーションEcoEye」名古屋駅前にあるミッドランドスクエアのミッドランドホールで開催された『カワムラHEMS大学』。参加企業は、セミナーと展示で自身のHEMSサービスを紹介。写真左下が、河村電器産業が開発したマルチベンダータイプの計測機能付きホーム分電盤「enステーションEcoEye」

HEMSが抱える課題とは?

河村電器産業の広報、牧さん。今回の開催にあたり、ロゴも制作して、かなり力を入れた取り組みとなっている河村電器産業の広報、牧さん。今回の開催にあたり、ロゴも制作して、かなり力を入れた取り組みとなっている

今回の開催の意図を、河村電器産業の広報、牧 幸佑氏に伺った。「現在、中小の住宅建設会社様、工務店様などが、HEMSにすごく興味はあっても、どうやったらいいの?というところになると、やり方も、パートナーになる企業もわからないなど、いろんな問題を抱えているんです。逆に、HEMSを提供するサービス会社様側も、新しくHEMSサービスを作ったけれど、売り先をこれから見つけていこうという状態なんですね。つまり住宅会社様もサービス会社様も互いにパートナーを求めているというアンマッチな状態があったわけです。そこで河村電器産業の持っている住宅会社様のチャネルを集め、ここでビジネスマッチングをしましょうというのが今回の目的なんです」

HEMSを普及させるためには、相互関係が重要だということは基本ではないかと思うのだが、なぜこのようなことが起きているのだろうか?
「まだこれから成長していく見込みがある市場なので、始めたばかりといってもいいくらいなんですね。なので、大手のハウスメーカー様はHEMSをすでにやっていても、まだまだ中小のハウスビルダー様などは始めたばかりで方法がわからないという状況です。今回が起爆剤になれればなと思っています」

河村電器産業の取締役社長、水野一隆氏にも話を伺えた。「まだ世の中がHEMSというものをどういうふうに形作っていくかという段階です。我々としてもHEMSそのものを、我々の分電盤だけで成しえるものではないので、そこから出す情報をうまく扱ってくださるHEMSサービス会社様がそれを使ってお客様と、それぞれの地域であったり、それぞれの都合にあったHEMSを作り上げるということが今回の大きな狙いです」

今後は全国での開催も予定し、HEMS業界を加速させる意気込み

『カワムラHEMS大学』での商談ブース。ビジネスチャンスを逃さない工夫が興味深かった『カワムラHEMS大学』での商談ブース。ビジネスチャンスを逃さない工夫が興味深かった

河村電器産業・水野社長も『カワムラHEMS大学』開催の挨拶でも述べていたが、エネルギー政策の変化は、東日本大震災の影響が大きいともいわれる。各家庭でも節電の必要性が高まり、それにはHEMSが期待できるひとつのシステムとなっている。もちろん、HEMSは震災前から普及が図られていたが、なかなか進んでいなかった状況でもある。

そんななかで、『カワムラHEMS大学』をただの内覧会に終わらせないように工夫されていたのが、商談スペースを大きく設けていたこと。
「ビジネスでは商談が大事なんです。見るだけではビジネスにはなりません。見て、興味を持ったら話をしていただく。この場で決めましょうと」と牧氏。

また、牧氏は「HEMSの課題の一番は、本当にHEMSが普及するのかということではないかとも。一般の方々に受けいれてもらえるのかというところかもしれませんね」と語る。確かに、まだ導入事例を聞くことが少ないが、今回の企画を通して、業界が一丸となっていけば、普及しやすくなるはずだ。

この取り組みは、きっと大きなものになるだろうということを感じた。今後は全国でも順次開催していきたいとのこと。節電対策とともに、ビジネス面での活性化が期待できるのもよいのではないだろうか。


取材協力:河村電器産業株式会社 http://www.kawamura.co.jp/

2014年 11月29日 10時20分