上質なソファが生み出される工場に潜入!

前回、お邪魔したソファ専門店、株式会社NOYES(ノイエス)では、自社工場でソファのデザインから開発・裁断・縫製・張り込み・出荷まで一貫して行っている。
上質なソファを生み出すためにどんな工夫がされているのか、悩みぬいて決めたソファがオーダー後、どのように作られ届けられるのか、その裏側をのぞいてみようと思い、愛知県名古屋市にあるNOYESの工場にお邪魔した。

入口を入ると、黒いTシャツを着た職人たちが、黙々と目の前の仕事に打ち込んでいた。
同社には、国家試験「椅子張り技能検定1級」取得者を含め、確かな技術とこだわりでソファ作りを担う職人たちが終結。「納得できるものを造りたい。みんなモノづくりが好きで、職人気質なんですよね」と、案内してくれた営業グループNOYES事業部の伊原正敏さん。ご自身も有資格者で職人歴17年のベテランという伊原さんに、まずはソファの顔となる張り地を扱うスペースに案内してもらった。

強度試験に合格した生地を使用。真剣なまなざしで傷や穴あきをチェック

前回の記事で紹介したように、同社では本革を含め約180種類の生地から、ソファの張り地を選ぶことができる。その中にはイタリアなどのヨーロッパやアジアからの輸入生地と国産生地があり、どちらも同社の強度試験に合格した生地のみを採用。ソファ生地に最適な素材や風合いを厳選してユーザーの好みや生活環境に合わせた生地を提供できるようになっている。ユーザーが選んだ生地は、どのように形作られていくのか。
まずは裁断スペースへ。生地に無駄がでないよう、コンピューターで計算・設計された通りに裁断機で生地を切っていく。
「ソファは工業製品の中でも限りなく「人の手」が関わる手工芸品と言われています。この工場内で唯一、コンピュータ制御で作業しているのが生地の裁断です」(伊原さん)
確かにこれだけ大きな生地を裁断するのに、手作業では効率も悪い上、無駄が多くコストがかかってしまいそうだ。とはいえ、生地のほつれがないか、細かい部分まで職人の目で厳しくチェックしているので、コンピュータ任せにはできない作業だ。

隣では、牛革の作業が進行中! 布と違い、形がいびつで個体によってついている傷の場所もまちまち。それを職人が丁寧にチェックし、傷や穴あき箇所には付箋をつけ、そこを避けて生地をとる。本革の値段が張るのは、一つの個体から使える生地が少ないことにもあるのだ、と改めて知った。

裁断が終わると、生地は縫い子さんが待つ縫製スペースへ。ソファのデザインによって、さまざまなパーツをここで縫い合わせていく。熟練した職人さんの手にかかると、丁寧かつスピーディに、ただの布が立体的な形に縫いあがっていく。「生地の風合いを損ねず、スピーディに縫い上げるには熟練の技が必要です」と伊原さん。仕上がったパーツは、緩やかなカーブやファスナー部分まで、きっちりと縫いあげられ、さすがの出来栄え!

写真左上:裁断機奥のモニターで切断箇所を確認。左のバーが台の上を通過しながら生地をカットしていく。左下:生地のもつ風合いを損なわないよう、立体的に縫い上げる縫製作業。正確さとスピードはさすが! 右:本革の場合、破れや色ムラ、こすれなどを細かくチェックし、付箋をつけていく写真左上:裁断機奥のモニターで切断箇所を確認。左のバーが台の上を通過しながら生地をカットしていく。左下:生地のもつ風合いを損なわないよう、立体的に縫い上げる縫製作業。正確さとスピードはさすが! 右:本革の場合、破れや色ムラ、こすれなどを細かくチェックし、付箋をつけていく

ソファの骨と筋肉を作る! 「下張り」と「ウレタン接着」

写真左:「木枠の裏に張ってあるこのS字のバネが、ソファ全体を支えているんです」と伊原さん。写真右上:4層に見えるが実は見えない部分に薄いクッション材が入って、絶妙な座り心地を実現している。右下:層になったウレタンを木枠に接着していく。接着剤には環境と体に配慮しノートルエンのものを使用している
写真左:「木枠の裏に張ってあるこのS字のバネが、ソファ全体を支えているんです」と伊原さん。写真右上:4層に見えるが実は見えない部分に薄いクッション材が入って、絶妙な座り心地を実現している。右下:層になったウレタンを木枠に接着していく。接着剤には環境と体に配慮しノートルエンのものを使用している

さて、ソファの顔となる生地が立体的にできあがったのを見届け、ソファの枠を造りウレタンを接着する、いわば骨と筋肉を作る場所へ。

まず、「下張り」と呼ばれる作業からスタート。骨組みである木枠にS字になったバネを組み込んでいく。これは、かなり力のいる作業だとか。
「熟練のバネ職人と一緒にソファごとに最も適した座り心地を実現できるバネを選定しているんです」と伊原さん。約12〜13万回の耐久試験をパスした強度のあるバネをしっかり引っ張り、木枠に組み込む。そして、PPテープと呼ばれる強度のあるテープを張り、さらに強度をつけていく。これでソファの土台ができるわけだ。

枠ができたら、次はソファの筋肉となるウレタン接着。
回転台に枠を置き、接着剤を吹き付けながらウレタンを張り付けていく。このウレタン一つでソファの硬さが決まってくるので、大胆に見えるが繊細な技術を必要とする作業だ。手で感触を確かめながら、何層にもウレタンを重ねて張っていく。ウレタンが接着されると、ソファらしい形になってきた。これで一週間ほど接着剤のニオイを飛ばすために、工場内で乾燥される。

職人の“思い”を着せる作業「張り込み」

写真左上:肘掛けの部分にヌード用の生地をかぶせ、しっかりと張っていく。平らな定規を生地とクッションの間に差し込み、サッとひとなでするだけで、ピンときれいに生地が伸びる。この間、ほんの一瞬だ。左下:生地の引っ張り具合でシワがよったりクッション材がつぶれないよう、絶妙な力加減で止めていく。写真右:縫製された生地をかぶせる作業。さまざまな工程を経たソファがようやく完成する!写真左上:肘掛けの部分にヌード用の生地をかぶせ、しっかりと張っていく。平らな定規を生地とクッションの間に差し込み、サッとひとなでするだけで、ピンときれいに生地が伸びる。この間、ほんの一瞬だ。左下:生地の引っ張り具合でシワがよったりクッション材がつぶれないよう、絶妙な力加減で止めていく。写真右:縫製された生地をかぶせる作業。さまざまな工程を経たソファがようやく完成する!

フルカバーリングのソファが自宅にある人は、カバーをめくるともう一枚、生成りのような生地が張られていないだろうか。
接着剤のニオイを飛ばしたボディに、この生成りの布をタッカーと呼ばれる大きなホチキスのような工具で木枠に張り付け、「ヌード」と呼ばれる状態に仕上げるのがフォルムの最終仕上げ。それぞれの工程を経てできたボディをしっかり包み込み、形を整えていく作業だ。肘置きや背もたれ、足などのパーツがあるため、一カ所でもズレると、どこかでシワがよったりウレタンの角がつぶれる原因になるので、こちらも力と繊細さが必要だ。

ここでようやく「ヌード」のソファに、縫製され立体的に縫いあがった生地をかぶせる作業。各工程に携わってきた職人の、熱い“思い”をソファに着せていくのだ。最良の座り心地と職人の情熱をパッケージしたソファは、こうして完成となる。

時を経ても色褪せない、シンプルで洗練されたフォルム。座り続けても疲れない、人間工学に基づいた設計、部材へのこだわりなど、「ソファ専門店として、自分達が自信と情熱をもって作ったものをお届けしたい」との思いから、生産できるのは一日に50~60台と限りがある。だが、働く職人は、みなそれぞれソファに対しての情熱はとても熱く、ソファ職人としてのプロフェッショナル意識をもって日々作業しているのを感じた。

愛着のあるソファを手放す前に、知っておけばよかった!メンテナンスとリメイクのこと

こちらのソファはオットマンに生まれ変わる予定。愛着があるソファを今の生活スタイルに合うようリメイクできるのも、ソファ専門店ならではだこちらのソファはオットマンに生まれ変わる予定。愛着があるソファを今の生活スタイルに合うようリメイクできるのも、ソファ専門店ならではだ

ショールームに何度も足を運び、選び抜いたソファ。長く使い続けるためには、メンテナンスも必要だ。
ソファのメンテナンスについて、前回の記事でお話を伺った、NOYESショールームの岡田彩子さんにアドバイスをいただいた。

1)表面材(ファブリック / 合皮 / 本革)の場合
「ファブリックの場合には、お部屋の掃除をする際に掃除機のヘッドを取り外した状態で、生地の表面をやさしく撫でてホコリ汚れを取り除きます。
ウォッシャブル機能がある場合には、カバーの型崩れを防ぐために洗濯機は避けて手洗いを。お風呂に30度ぐらいのぬるま湯をはり、汚れが気になる場合には中性洗剤を溶かして生地を入れて押し洗いし、その後、洗剤が残らないようにすすぎ、陰干しをします。
合皮の場合には普段は乾拭きを、汚れがついた場合には水拭きをして水分が残らないようにしっかりと乾拭きを行います。」

2)クッションの中材のメンテナンスについて
「クッションの中材に羽毛が入っている場合には、時々カバーを外してお部屋の中の日の当たる暖かい場所においていただくだけでも湿気を飛ばすことができ、ふんわりとした状態でご愛用いただけます。」


メーカーやソファで使われている素材により異なるが、おおまかなメンテナンスはこれで大丈夫そうだ。しかし、どんなに大切にメンテナンスをしていても、張り地やクッション材は消耗品だ。岡田さんによると、5~7年が買い替えのタイミングとか。

引っ越しや新居の完成、リフォームなど、特別なタイミングに購入することが多いソファ。わが家も結婚と同時に買ったソファが、子どものいたずら書きや皮が破れてしまったりと無残な姿になったため、転居のタイミングで新しいものに買い替えることにしたのだが、今思えば思い出の詰まったソファを手放したことを後悔している。
「愛着のあるソファをなかなか手放せないというお客さまも大勢いらっしゃいます。そういう方には、そのソファを使ってオットマンへの作り替えをご提案させていただくこともあります」と岡田さん。オットマンとは、足置きのこと。愛着のあるソファを、違う形でよみがえらせることができるのはソファ専門店ならでは。こうした作り替えも、買い替えとともに検討するのもアリだろう。


「子どもが赤ちゃんだったころ、あやしながら一緒になって寝ちゃったな」とか、 「そこでジャンプしちゃダメ!ってよく叱っていたな」など、今回の取材で改めて、ソファとは生活だけでなく子どもの成長にもそっと寄り添ってきたモノだったんだと実感。
ただの置き家具ではなく、家族の思い出を紡いでいく一つのアイテムとして、ソファ選びの際は家族と一緒に熟考することをお勧めしたい。

2014年 11月01日 13時39分