横浜みなとみらいに、働く人、住む人に開かれたシェアスペースが誕生

ドックヤードガーデン内で行われているプロジェクションマッピング。壁面に画像が投影されるドックヤードガーデン内で行われているプロジェクションマッピング。壁面に画像が投影される

港町横浜にはいろいろな文化遺産がある。そのひとつ、国の重要文化財であり、日本に現存する商船用石造りドックとして最古の「旧横浜船渠第2号ドック」を復元して生まれたのが「DOCKYARD GARDEN(ドックヤードガーデン)」。みなとみらいのランドマークタワー、ランドマークプラザに囲まれた場所にある石造りの、地中に沈められた船のような形をしたスペースで、最近ではプロジェクションマッピングなどのイベントに使われている。

その船体部分に面して地下スペースがある。窓からは石造りの壁が見える雰囲気のある場所で長らく飲食店などとして使われてきたが、2年前に閉店。跡地をどのように使うかが、ずっと議論されてきた。エレベーターのない地下空間であり、目立つ看板などを出せるような場所ではなく、視認性は悪い。一般的な事務所や店舗としては使いづらいだろうと、検討の結果、選ばれたのはみなとみらいに働く9万人のオフィスワーカーや居住者、横浜に住む人たちが共有して使えるシェアスペースという使い方である。

所有者である三菱地所から場所を借りた横浜市芸術文化振興財団が使い方を公募、リノベーション、シェアハウス運営で知られるリビタの提案が採択され、活用事業者、転貸事業者として決まったのが2014年3月。6月19日にはプレス発表会が行われた。

会員制ワークラウンジは第二のオフィス、コワーキングスペースに

ワークスペースの中心にある大きなテーブル。多少仕切られた席もあり、仕事の内容に応じて選べるワークスペースの中心にある大きなテーブル。多少仕切られた席もあり、仕事の内容に応じて選べる

生まれ変わった地下1階スペースの名称はBUKATSUDO(ブカツドウ)。コンセプトは「大人の部活が生まれる、これからの街のシェアスペース」となっており、部活動の動にDO(する、はじめる)、道(きわめる)、堂(つどう)をかけたものとか。ここに人が集まり、趣味や街に関与する活動を通じて、集う人の生活はもちろん、地域の暮らしをも変えていく場として機能することを期待する名というわけである。

全体は817m2(247坪)の細長い三角形で、中央にはスタッフが常駐するコーヒースタンドがあり、その左右には会員制のワークラウンジ、活動に利用する部室が配される。ワークラウンジは近隣で働く人がセカンドオフィスや自習用に、個人事業主がコワーキングスペースとして利用できるもので、デスク席、ソファ席あわせて約60席。使う時間によって3タイプの料金設定がある月額メンバーになる使い方のほかに、1時間500円の一時利用(3時間以上利用で1500円の定額に)も可。落ち着いた色目の木のインテリアが印象的な空間で、ソファ席は打ち合わせなどにも使える。

広さ、設備の異なる6種類のレンタルスペースは部室としての利用も可

約35m2のアトリエ。当日は傘の布をリサイクルするワークショップが行われていた約35m2のアトリエ。当日は傘の布をリサイクルするワークショップが行われていた

ワークスペースと反対側にはホール、キッチン、スタジオ、アトリエ、ブース、ルームと広さ、設備の異なる6種類のレンタルスペースが配されている。ホールは最大100人ほどが入るもっとも広いスペースで、今回のプレス発表が行われた場所。講演会、トークショーや上映会、各種教室などの会場として利用できるのはもちろん、隣接するキッチンと組み合わせてセミナー後のパーティー会場にも使える。

キッチンは各2セットの厨房設備に加えて、食べるスペースもある空間で料理教室を開催したり、料理を作りながら食べる会などもおもしろそう。アトリエには工作、DIYに必要な工具等が備え付けられており、手作り系のイベントに使える。コンパクトなところでは8名まで入れる15m2のミーティングルームもあり、人数、用途でスペースを選択できるようになっている。活動に関わる道具等をしまっておくためのロッカー、倉庫も用意されている。

6月25日のプレオープン以降、10月のグランドオープンまでは部活の立ち上げ期間と位置づけられており、主催者が企画した連続トークショーや連続講座など、様々な企画が進行中。10月以降、この期間に立ち上がった、あるいはすでに活動している団体に向けて部室としての貸出しもスタートする予定で、利用時に時間を限定して借りるのではなく、いつでも利用できる場として使えるようになる(詳細は未定)。

なぜ、場を貸すビジネスを行政がバックアップするのか

コーヒースタンドに近い場所にあるブースからは館内BGMを流したり、インターネット放送を行ったりも。広さは約15m2コーヒースタンドに近い場所にあるブースからは館内BGMを流したり、インターネット放送を行ったりも。広さは約15m2

これまでも貸会議室、貸教室、ギャラリーのように場を貸す商売は複数あった。しかし、従来のやり方では、使う人は決められた時間、契約した場所を使っておしまい。他の利用者と交わることはなく、新しい人間関係も生まれにくかった。だが、今回のBUKATSUDOのように誰もが使えるコーヒースタンドのような空間があったり、主催者が企画するイベントがあったりすれば、利用者は利用する場、時間を逸脱、触れ合うことになる。そこで生まれた交流が人間関係を育み、新しいコミュニティ、活動を生み出していくのではないか、その期待が行政がBUKATSUDOを活用事業として採択、支援する理由だろう。

プレス発表会でプロジェクトメンバーの古田秘馬さんは「日本の消費は団体消費から個人消費へと移行、さらに今、コミュニティ消費へと変化しつつある」と挨拶した。消費が一人のものでなく、友人、仲間と過ごすためのものに変わりつつあるのであれば、コミュニティのある地域は活性化するということになる。

また、リビタの内山博文さんはBUKATSUDOが試みる新しいコミュニティ作りが試金石となり、水平展開していく可能性を示唆した。人気の街横浜の中心街にも多くの遊休化した建物がある。BUKATSUDOの部室で生まれた活動が新しい拠点を求めて外に出ていき、空いた部室に次の活動が生まれという循環ができてくれば、街は変わってくる。もちろん、同じことは横浜だけでなく、他のシャッター商店街でも応用できる。空家とリノベーション、シェアとコミュニティという考え方を組み合わせることで、社会が変わるかもしれないのだ。

ドックヤードガーデン活用事業運営協議会会長で横浜市文化観光局長の中山こずゑさんはアメリカの社会学者リチャード・フロリダの言葉を引用、「クリエイティビティのない街は滅びる」と挨拶した。これを新しいモノを生み出す力のない街は滅びると大胆に言い換えるとすると、これからの新しいモノは目に見える、形あるものだけではない。BUKATSUDOがそれを生み出すことができるかどうか。オープンは始まりであり、問題はこれから5年後、10年後にそれが実現できているかどうか。行政同様、期待したい。

■記事中で紹介した情報についてはこちら。

ランドマークタワーとドックヤードガーデンの解説
http://www.yokohama-landmark.jp/web/guidance/

BUKATSUDO ホームページ
http://www.bukatsu-do.jp/

2014年 06月25日 09時43分