間取り模型を取り入れたリノベーションマンション販売開始
これまで新築マンションや戸建住宅で作られていた間取り模型を、中古マンションのリノベーション物件で導入する新しい試みが始まった。
システムの運用を開始したのは、名古屋市にある中古マンションの売買やリノベーション事業を手がける株式会社リアルだ。
同社のリノベーション事業ブランド「リアリノ」の進化系として、間取り模型を用いた販売方式を「リアリノセミオーダーマンション」と名づけ、4月26日に名古屋市中村区の「ユーハウス名駅南B棟701号」と、昭和区の「コ・ドミニオン昭和橋通1104号」の2室を、モデルルームとしして販売開始した。
中古マンションのリノベーション物件は、通常は図面を作ったらすぐに施工し、販売するという流れだったが、「リアリノセミオーダーマンション」の場合は、
間取り図面完成→【模型制作】→顧客公開・販売→施工
と、ワンクッション置いた流れとなる。
新築マンションには完成形のモデルルームが用意されていることもあるが、リノベーション物件の場合は、30分の1に縮小された間取り模型が、モデルルームの役割を担う。模型を取り入れたリノベーションについて、「リアリノセミオーダーマンション」第一号の「ユーハウス名駅南B棟701号」にお邪魔して、同社代表片田一幸氏に取材をした。
間取り模型はコスト削減の救世主!
内装まで完成した状態で販売すると、間取りや収納、壁紙など、やり直しがきかない。再工事の際は、施主が費用を負担することになるので、ある程度のところで妥協する場面も出てくる。「そこをなんとかしたい」という思いから、模型を中古リノベーションに取り入れようと思ったと片田氏。
施工する前に模型を作り、物件購入を考える顧客に検討材料として提供する。
実際に間取り模型を見てみると、1mm単位で精密に作られており、ダイニングテーブルやベッドなどの家具を動かすことができるから、自分の生活スタイルに合った間取りを考える手助けになるだろう。施主と施工側のイメージの共有もしやすくなり、工事への不満を減らすこともできそうだ。
さらに、模型を現場で用いることで、施工ミスを減らすことにも期待が寄せられている。
「段差ひとつとっても、図面では見落としてしまうことがありますが、模型だと立体的に見えていますので、そういうミスは限りなく少なくなるはずです」と片田氏。
ミスがあれば、当然やり直す。
片田氏によると、施工会社によってはこのやり直しの分も最初から見積もりに含まれている場合があるのだとか。
「ミスがないとわかっていれば、その分見積もりが安くできる。工事スピードもアップする。工期が短ければ人件費なども安く済む」と、顧客にとっては費用面でも大きなメリットとなりそうだ。
こだわりたい部分にスポットをあてたセレクト&カスタマイズ
マンションにおけるリノベーションというと、今まで2通りの方法があった。
築年数が古い中古マンションをまず自分で探し、それから設計事務所を探して一からリノベーションを進める方法。もしくは、一棟丸ごとリノベマンションなど、既にリノベーションされたマンションを購入するかだ。
しかし、従来の方法だと、前者はとても時間がかかり、後者は自分がイメージする部屋に住めないといった両極端の問題が発生した。そうした中間をとったのが、今回の「セレクト&カスタマイズ」というスタイルになる。間取りのみ先にリアル側が着手し、部屋の細かな仕様などは模型を使って購入者と一緒に部屋を作っていく仕様だ。
「全部をイチから作りたいという人は、そこまで多くないと思っているんです」と話す片田氏。
マンションをフルカスタマイズするとなると、不動産会社だけでなくデザインや建築会社などに工事を頼むことになり、それなりにお金と時間がかかる。
何度もヒアリングを重ね、イメージをすり合わせながら、夢の住まいを作り上げる楽しみはあるが、そこまではなかなか・・・という人にとっては「リアリノセミオーダーマンション」は“ちょうどいい加減”なのかもしれない。
例えば、フローリングや壁紙の材質や色、リビングやキッチン、トイレなどの仕様などを部分的にカスタマイズして、オリジナリティを出すこともできるし、間取りも「ここをもう少し広くしたい」といったリクエストも可能だ。
リノベーションにおいては、セミオーダーシステムを取り入れている会社が多々あるが、模型があることで事前に生活イメージが“見える”状態にできるというのが、最大のメリットといえるだろう。
イメージとのギャップを最小限に抑える心強いツール
間取り模型を用いた「リアリノセミオーダーマンション」、同社では前述の2物件のほか、現在のところ名古屋市内で3物件、愛知県内で2物件で販売の準備を進めており、初年度20~30戸の販売を目指している。
各物件とも、模型公開・販売開始から4週間ほどの間に商談が成立しなければ、リアル側が考えた模型と図面を元に着工し、リノベーション済みマンションとして販売されることになるが、片田氏は
「もし、工事途中で購入希望者が出てきた場合、工事中の物件と図面だけでは判断しにくいことも、模型があれば完成形をイメージすることができ、工事の進み具合によってはそこから可能な限りカスタマイズできる。これも間取り模型の強みです」と話す。
同社では今後、間取り模型単独での制作も開始する予定だ。他社物件でも、模型を使ってリノベーションを考えたいという場合、模型制作のみでの依頼も可能となる(名古屋圏内・1物件につき5万円)。
イメージと施工後のギャップを最小限に抑える間取り模型。活用の幅が広がれば、リノベーションにおいても心強いツールとなりそうだ。
取材協力:株式会社リアル
http://real-inc.jp/
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