80%超が室内飼育の今。ペットにとって住まいは快適か?
愛犬家住宅コーディネーターという資格をご存知だろうか。
昨今、ペットの室内飼育率は増え続け、犬は約80%、猫にいたっては85%と、多くのペットが室内で飼われている(※)。
室内で飼うことにより、距離が縮まり「家族」感がより強くなったペットだが、彼らにとって、今の住まいは快適なのだろうか。
犬だけでなく猫も含め家族同様のペットと、より快適に過ごすための住まい作りを、専門的な知識をもって提案してくれるのが愛犬家住宅コーディネーターだ。
有資格者の一人、加藤工業株式会社 業務管理部長であり店長の伊藤暢宏(のぶひろ)さんと、同社主任 ショールームチーフでペット担当の野嵜まゆみさんにお話を伺った。
※平成25年一般社団法人ペットフード協会 犬猫全国飼育実態調査による
住宅の専門家であり、犬の専門家でもある「愛犬家住宅コーディネーター」
愛犬家住宅コーディネーターは、愛犬家住宅のコンサルティング会社 株式会社ワンオンワンが創設した資格で、愛犬との暮らしを豊かにするために、犬の育て方に関する知識と住宅の知識をあわせもつ専門家を育成することを目的に作られた。
犬と暮らすための空間作りや建材についての知識を修得する“建築編”と、犬種別にかかりやすい病気やケガ、育て方やしつけなどについて詳しく勉強する“ドッグライフ編”の2つのカリキュラムを受講し、検定試験に合格すると晴れて資格が授与される。
「どんなペットにもいえることですが、人間にとって住みやすいフローリングは、実はペットにとっては負担が大きいんです。滑りやすく、ジャンプした際の着地の衝撃などで股関節を痛めてしまうケースが多いので、滑りにくいペット用の床材をおすすめしたいですね」
と話す伊藤さん。
狩猟犬や牧羊犬など運動量が必要な犬には、ドッグランのようなスペースを、ミニチュアダックスフンドのようにヘルニアになりやすい犬種の場合は、階段の段差を小さくしたりと、それぞれの家の環境やペットの種類によって工夫できることをアドバイス。
資格を取得したことで、今までよりペットとその家族に寄り添った具体的な提案ができるようになったそう。
実際に同社では、犬をのびのび育てたいという施主の方に、リビングと一体化したウッドデッキを作ったり、壁面にリードフックを作りつけるなど、“愛犬家住宅”へのリフォームは少しつづつ増えてきているようだ。
3大悩みを軽減する建材で、ペットも人も快適に
そこに住む人よりも、長い時間を家の中で過ごす室内飼いのペット。
彼らが健康で気持ちよく暮らせて、なおかつ飼い主自身もストレスのない環境を望むところだが、具体的にどのような工夫ができるのだろうか。
回遊性のある間取り、自由に出入りできるペットドア、キャットウォークの設置など、ペットの行動に配慮した設備と合わせて考えたいのが、飼い主が最も気になるニオイ、音、傷。この3大悩みを軽減するための建材が、各メーカーから発売されている。
例えば、LIXILのインテリア壁材「ECOCARAT(エコカラット)」は、ニオイを吸着する素材でできており、快適な湿度を保ちながら、気になるペット臭やトルエンなどの有害物質を低減させる効果がある。結露やカビ、ダニの抑制が期待できるから、ペットの皮膚病の予防にも効果があるそうだ。
機能だけでなくデザイン性も兼ね備えているので、バスルームやトイレだけでなく、リビングや玄関に設置して空気をキレイに保つことができる。
ほかにも、滑りにくく傷や汚れがつきにくいフローリング材や、スタイリッシュな柄で汚れを目立たなくするクッションフロア材、ジャンプしたときなどの衝撃を吸収し、ペットの足腰の負担を和らげてくれるマルチマットなど、ペットに配慮した建材が揃う。
ペットの習性をふまえた建材選びで家庭内の危険を回避
伊藤さんは、こうした建材を軸にペットと人が共生する空間作りを提案していく。
「ペットがなめたり体をこすりつけても安心な、ワックス不要のフローリング材や、ひっかき傷に強い化粧板を使った腰壁、抜け毛やホコリをたまりにくくするパッキン付きの巾木を設置するのもおすすめです。鳴き声が気になる場合は、防音効果のある内窓を付けることもできます。散歩から帰ってきたワンちゃんを洗える、室内用の洗面化粧台も便利ですよ」と伊藤さん。
また、野嵜さんは
「子犬や子猫は好奇心旺盛で、なんでもかじる習性があるため、電気製品などのコードなどが出ているとかみついて感電してしまう恐れも。コンセントをペットの届かない場所に設置したり、ガス式の床暖房を採用するなど、工夫をしてあげたいですよね」
と、家庭内での事故や危険を回避するアイデアも豊富だ。
ペットに優しい家=人に優しい家
飼い主の留守中に、ペットの様子を確認できる見守りカメラ。スマートホンでカメラの向きを変えたり、電話を通じて飼い主の声を聞かせられる優れもの。年老いたペットを留守番させておくのは気がかりという時にも活用できそうだ伊藤さんによると、ペットリフォームが増えてきたといっても、最初からペットを視野に入れて考える人はまだ少なく、施工前のヒアリングの中で最終的にペットリフォームという形に辿り着くことが多いのだそう。
ただ、同社がショールームで定期的に開催しているペットリフォーム祭では、4月の開催時は2日間で30組ほどの来場者があったというから、少しずつペットに特化したリフォームの認知度は高まっているようだ。
ペットフードの改良、生活環境の改善、医療の発達などにより、ペットも人間と同じく高齢化時代に。
ご自身でもミニチュアダックスフンドを室内で飼っているという野嵜さんは、
「ペットは人間よりも早く歳をとりますよね。白内障で目が見えにくくなり、ちょっとした段差で転んで骨折してしまうこともあります。そんな老犬でも危なくないように、バリアフリーにしてみるなど、ペットができるだけ安全で落ち着く家作りをしてあげたいですね」。
と、愛犬家ならではの目線でアドバイスを送る。
「ペットも快適に暮らせる住まいを考えていくと、結局子どもやお年寄りにも暮らしやすい住まいに行き着くんです」と伊藤さん。
愛犬家住宅コーディネーターと建てる家は、危険が少なく、健康的で人にもペットにも優しい家。
ペットに対する深い知識があるコーディネーターがいれば、住まいの完成度はより満足いくものになりそうだ。
取材協力/加藤工業株式会社
http://www.life-energy.jp/
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