消費増税後にはリフォームについても支援策が適用・実施される

少子化・高齢化の進行で住宅需要の減少は今後確実視されており、国土交通省の調査によれば2018年の新設住宅着工は約94万戸と2年連続の減少で、今後も回復の見込みは立っていない。民間の調査では2025年には約73万戸、2030年には約63万戸と現在の7割以下の水準にまで落ち込むとの予測も公表されている。

このような市場環境では住宅ローンの需要も縮小することになる。中古住宅の市場が相対的に活性化する可能性は高いものの、新築住宅のローンをカバーするほどの規模に拡大することも考えにくい。

各金融機関では、住宅購入ローンの代わりに活用が見込まれる住宅セクターの市場開拓・参入に注力せざるを得ない状況になっており、現状ではリバース・モーゲージ、残価設定型住宅ローンなどが相次いで商品化されているが、その中でも有望株と見られているのがリフォームローンだ。

現在、三大都市圏で中古マンションの売れ行きが好調だが、その要因は、まず新築マンションの価格高騰が背景にあり、それに加えて①2000年以降の大量供給期の物件が中古適齢期を迎えて物件が豊富なこと、②それらの物件は資産デフレ期の供給で比較的安価であったため売却差損が少なく(売却差益が出るケースも多数あり)売却に前向きなオーナーが多いこと、③その中古を購入しリフォームして居住するニーズが顕在化していること、などが挙げられる。同様に地価上昇によって中古戸建てに対する需要も徐々に拡大しており、中古住宅市場の活性化がリフォームローン拡大に直接影響することは明らかである。

さらに、2019年10月から消費税が10%に引き上げられ、住宅購入だけでなく、住宅のリフォームについても消費増税後の制度変更には関心が高まりつつある(住宅購入支援策として公表された施策はリフォーム・リノベーションにも適用されるため、住宅を買い替えるのではなく機能向上によって住み心地をより良くしたいニーズに対応している)。

このような状況下で、今後リフォーム市場全体は今後も順調に拡大していく可能性が高いのか、それとも一定の規模で留まるのか、金融機関のリフォームローン市場参入が続く現状と今後について専門家の意見を聞いた。

消費増税後にはリフォームについても支援策が適用・実施される

既存住宅流通市場の拡大がリフォームローン市場の拡大につながる ~榊原 渉氏

<b>榊原 渉</b>:1998年3月早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了。1998年4月株式会社野村総合研究所入社。現在 グローバルインフラコンサルティング部長/上席コンサルタントを務める。専門は建設・不動産・住宅関連業界の事業戦略立案・実行支援榊原 渉:1998年3月早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了。1998年4月株式会社野村総合研究所入社。現在 グローバルインフラコンサルティング部長/上席コンサルタントを務める。専門は建設・不動産・住宅関連業界の事業戦略立案・実行支援

リフォームローン市場全体は、基本的には今後も拡大していく可能性が高いと考える。その最大の要因としては、住宅の長寿命化が挙げられる。特に、構造躯体の耐久性能は上がっているため、築年数が経過しても建て替えるのではなく、設備機器の交換やライフスタイルの変化に応じたリフォームを実施することによって、長期間に渡り住み続けることができる。

しかしながら日本の場合、ライフスタイルの変化に応じたリフォームがなかなか増えないのが実状だ。そこで期待されるのが、既存住宅(中古住宅)として売買される前後に実施されるリフォームである。先の指摘にもあるように、既存住宅流通市場は新築住宅市場の影響に左右されながらも、基本的には拡大傾向にある。さらに今後は、大工人口の減少が新築住宅市場の減少スピードを上回る可能性が高いため、より一層、既存住宅流通市場が拡大していくことが見込まれる。

日本において、既存住宅流通市場の拡大が遅れた背景には、気候風土や文化的な問題があると考えられるけれども、住宅金融市場の整備が遅れたことの影響も少なからずあったのではないだろうか。特に、既存住宅を購入した後にリフォームを実施しようとした場合、リフォーム資金の調達方法は限られており、自己資金等に頼らざるを得なかった。近年、リフォームローン商品が増えてきたことは、リフォームに関わる資金調達環境が整ってきたことを意味する。
とりわけ2017年から、既存住宅の購入とリフォームが一体的に行われ、所定の要件を満たす場合は、割賦販売法の規定にかかわらず、「購入+リフォーム一体型提携ローン」を提供・活用できるようになったことの影響は大きい。従来は、消費者保護の観点から、割賦販売法において事業者との提携等の取扱いを金融機関が実施する場合、経済産業省への事業者登録が必要とされていた(住宅ローンのみであれば対象外であるけれども、リフォームローンは割賦販売法の対象であった)。

このように、新築住宅を購入する場合と、リフォーム済みの既存住宅を購入する場合、既存住宅を購入してからリフォームをする場合、それぞれの資金調達環境に大きな差異がなくなりつつある。その他にも、新築住宅と既存住宅の差異を埋める法制度等が整備されてきていることも、既存住宅流通を拡大させる要因となり、同時にリフォーム市場の拡大、リフォームローン市場の拡大につながる可能性は高い。

リフォームローンに対する控除には、更なる拡充の余地あり ~中川雅之

<b>中川雅之</b>:1984年京都大学経済学部卒業。同年建設省入省後、大阪大学社会経済研究所助教授、国土交通省都市開発融資推進官などを経て、2004年から日本大学経済学部教授。専門は都市経済学と公共経済学で、主な著書等に「都市住宅政策の経済分析」(2003年度日本経済図書文化賞)、「放棄された建物:経済学的な視点」(2014年学会賞・論文賞)がある中川雅之:1984年京都大学経済学部卒業。同年建設省入省後、大阪大学社会経済研究所助教授、国土交通省都市開発融資推進官などを経て、2004年から日本大学経済学部教授。専門は都市経済学と公共経済学で、主な著書等に「都市住宅政策の経済分析」(2003年度日本経済図書文化賞)、「放棄された建物:経済学的な視点」(2014年学会賞・論文賞)がある

日本政府は既存住宅流通を活性化するための取組みを、急速に進めようとしている。例えば、2009年には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、耐用性能の高い住宅に対する補助、税制、金融上の措置による支援を行っている他、安心R住宅など公的な信用をつけた良質な既存住宅の流通を促進しようとしている。
人口減少や少子高齢化が本格化していく一方、一定の質の住宅ストックが蓄積されつつある中で、このような政策の大きな方向性は支持されるべきものであろう。本稿ではこのような前提に立ちながら、既存住宅の流通には欠かせないリフォームについて、特に税制の面から再考してみたい。

リフォームとは既存の躯体等をそのままにしながら居住性能を向上させる投資であり、既存建物の存在が前提となっているという観点から、建替えによる住宅投資と代替するものと位置づけることができるかもしれない。ここで、簡単な数値例を出してみよう。Aさんが3,000万円の上物つきの土地を購入したものの、それを何等かの事情で手放さなければならない状態になったとする。この場合、インスペクション等様々な評価を行えば、売却時点での建物価値は2,000万円程度に評価ができるものとしよう。しかし、そのような評価制度や商慣行がないため、今の日本の住宅市場では一定年数を超えてしまった住宅の上物価値は0円としか評価されない場合がままある。もしも適正な評価が可能な状況であれば、2,000万円の既存住宅の現状に1,000万円のリフォーム投資を行うことによって、新しい居住者がその地に住み続けることが可能である。しかし、情報の非対称性などを解決する適正な評価ができない場合は、例えば300万円の除却投資+3,000万円の建替え投資を行うことで、初めて同じ状況を出現させることができるようになる。

余計な投資の負担は、売主あるいは買主のどちらかが負担をすることになるため、これは社会にとっての負担と考えることができよう。現在住宅ローン利子控除では、新築、建替えとともにリフォームもその対象になっており、リフォームに関する適用範囲も十分なものだと考えられる。その意味でニュートラルな適用が行われている。しかし、上記のような同じ結論をもたらす2つのアプローチについて、一方が明らかに大きなコストを伴うものだとすれば、政策税制的な観点から、リフォームローンに対するローン利子控除などについては、更なる拡充の余地があるのではないだろうか。

リフォーム市場は、増税前の駆け込みとは関係なく伸び続ける~北川友理氏

住宅リフォーム市場の伸長に伴い、リフォームローン市場は拡大している。重要なのは「消費増税に伴う駆け込みで今現在盛り上がりを見せている」のではなく、「拡大がようやく始まったばかりで、今後どんどん伸びていく」ということだ。ローンの市場も今後さらに拡大し、商品の幅も質も向上していくと思われる。理由は主に二つある。

一つは、目の前の超高齢社会と進み続ける少子化を前に、住宅市場をストックの流通を中心とした市場に移行させたいという国の方針にある。空き家の問題が身近な社会的課題になっているが、この問題は新築至上主義という過去のスタンダードは終わったという点を明確にしている。立地が悪くて老朽化し、メンテナンスもされていない大量の住宅が行き場をなくして所有者や相続人を悩ます「負動産」と化している。少子化と人口減が止まらない以上着工棟数も減り続けるし、一般的なサラリーマンが買える価格帯の家を大量に建てて大量に売るという、これまでの市場モデル自体がすでに破綻寸前だ。したがって、国の住宅政策には住宅の利活用期間の向上(高寿命化)と既存住宅の流通強化といった指針が並ぶ。

ストック市場拡大の前提として、安全性や使い勝手といった各種性能を満たした既存住宅が増えなければならない。質の低い既存住宅がいくら増えたところで、流通市場が活性化することにはならない。空き家が増え続けるだけだ。市場価値がある質の高い既存住宅を増やすため、国は既存の住宅のバリアフリー化や耐震化、高断熱化などといった住宅の価値や寿命、信頼性を向上させるためのリフォームを後押ししたい。他にも定期点検普及の促進といった、関連する取組みを進めている。国はこうした目的のために予算を組んでいるため、住宅所有者からすると、リフォーム関連の補助金が以前より増え、リフォームをしやすくなった。

二つ目は、実際にリフォーム工事を提供する側の事情だ。多くのハウスメーカーはこれまで新築住宅を中心に扱ってきたが、大量生産大量供給の時代は終わっているので、これから企業として生き残っていくためには、ストック活用の比重を高めていかなければならない。リフォーム分野でも技術を磨き、新しい商品プランを作り、サービスを向上させて頑張っている。住宅所有者からすると、ハウスメーカーや工務店の提案がどんどん良くなって、選べる選択肢も増え続けている。

住宅の所有者はリフォームを、「住環境を高め、将来順調にストック活用市場に回すための先行投資」と捉えるべきである。

北川友理:不動産業界専門紙「日刊不動産経済通信」記者。京都市出身。1987年10月生。地方新聞記者を経て、2018年に不動産経済研究所入社。以降ハウスメーカー担当

2019年 11月20日 11時05分