全国一斉不動産ババ抜き合戦開催中!

“全国一斉不動産ババ抜き合戦開催中!”…ババは「売れない不動産」である。
バブルの時は高値掴みの事だったが、今度は現金化できない不動産だ。このババを引いてしまえば人生の選択肢は大きく狭まることになる。できれば、ババはつかみたくないところ。しかし、どのカードがババか気づいていない人が多くいるので、少しそこに触れたい。

「地方創生より地方消滅で行こう!」すっと、腑に落ちるタイトルだった。これは、大阪市天王寺区の水谷区長のレポートのタイトル。自治体の長としてこのレポートはかなり勇気のいることだと思う。ぜひ一読されることをお勧めする。念のため、区長のレポートをご紹介したい旨お伝えし、水谷区長に快諾いただいた。心から御礼を申し上げたい。【選択が始まった「捨てる街」「残る街」】は私がこちらに寄稿するようになって2回目のタイトルだ。Facebookの「いいね!」ボタンを1334回も押していただいた、私の寄稿では最も反響のある記事になった。そこで、もう少しこの課題を掘り下げてみたい。

「二地域居住」「空家対策」「団地再生」等、人口減少問題を背景に多くの対策が取られている。私が身を置く不動産業界でも、それら分野で多くの方が問題解決のために心血を注がれ、腐心されている。だから、なかなか言い出しにくかったが、最近は同じような声を上げる人も増えてきており、少し声のボリュームを上げていこうと思う。

「地方創生ではなく、消滅する街を早く選択する」ことが重要であると。痛みを軽減するかのような地方創生という言葉は耳触りはいいが、ただの問題の先送りであると同時に、残すことになった街を力強くするための資金すら使い込んでしまう結果になりかねない。

惑わされてはいけない「ユニーク層の一般化」

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」予測。2100年の人口予測が、平成14年1月発表時には中位推計で6,414万人だったものが、平成18年12月推計では4,771万人と大きく下方修正されていた。
我々が生きてきた「人口増加」「家不足」「成長産業とインフレ」時代は、楽観的に考えても成立したかもしれない。しかし、これからは今までと同じには生きていけない。私たちはその岐路にいるという認識がもっと必要だ。

2040年には全国896の市区町村の半分が人口減により消滅の危機を迎えるとの予測がある。
水谷区長のレポートにもあるが、日本には1,800ほどの市区町村があるので、実に約半数が消滅の危機を迎えるということになる。区長は、こうも続ける。「意識が高いユニークな層の動きを一般化させて見せるのはメディアの常套手段だ。話題になった2013年の毎日新聞と明治大学の共同調査。2009年から13年にかけて3,000人が8,000人、3倍近くになったということで話題を呼んだが対象の自治体が1,000程度なので1自治体平均で8人程度、人口が増えただけ。これを焼け石に水と呼ばずして何と呼ぼうか。」私も強く同意した。二地域居住や地方移住、空家再生に空家リノベーション、数が延びているという報道もあるが、まさに「ユニーク層の一般化」だ。

この、メディアが取り上げたがる「ユニーク層の一般化」に惑わされてはいけない。一部の特殊な事例に過ぎないということだ。

「人口の長期的な推移と将来推計」</br>※国土交通省「我が国の住生活をめぐる状況」資料より「人口の長期的な推移と将来推計」
※国土交通省「我が国の住生活をめぐる状況」資料より

家は一生で一回の買い物、好きな場所に、好きなデザインで、自分らしく!?

「自分らしく生きる」何か聞こえはいいが、そんなキリギリスみたいな考え方で本当にやっていけるのだろうか?
冬が来ることに備えてせっせと食料を準備するアリと、夏を謳歌するキリギリス。冬に食料が無くて困ったのはキリギリス。将来を見通す目を忘れ、今の自分を充足させるだけで本当に良いのだろうか?この様なシュリンクする社会では、お金の稼ぎ方も重要だが「お金の保全の仕方」がもっと重要だ。注ぎ込む水の量に限度があるのであれば、流れ出る水を止めるということ。この流れ出るお金の最大のものは、多くの人にとって「住居費」である。この住居費が「支出」になっている人と「貯蓄」になっている人とでは、将来の人生の選択の幅が大きく違うことになるだろう。

以前も同じような記事を投稿したが、「終の棲家」などという幻想は追いかけない方が良い。そんな家はあり得ない。偶然、その家で人生を終えたら「終の棲家だった」という結果に過ぎない。積極的にも消極的にもライフスタイルに合わせて「いつでも住み替え可能」と言う環境づくりが未来の選択肢を増やすのである。「いつでも住み替え可能」であることの最重要ポイントは「買った時と遜色ない値段で売れる」ことである。お金持ちは別として、多くの人にとって「売却を考えない住宅購入はあり得ない」と心得た方が賢明だ。

そこで、タイトルにも掲げた「感性に訴えることの危うさ」を発信したい。

アリとキリギリスの童話ではないが、住居費が「支出」になっている人と「貯蓄」になっている人とでは、将来の人生の選択の幅が大きく違うことになるだろうアリとキリギリスの童話ではないが、住居費が「支出」になっている人と「貯蓄」になっている人とでは、将来の人生の選択の幅が大きく違うことになるだろう

理性をもって現実を把握し、最後は感性で結論を

人は物事を判断する時、「資産価値が落ちるか落ちないか」という理性的な判断をするより、「好きか嫌いか」という感性的な判断をしていた方が心地よい。また、訴えかけるのも感性で訴えかけた方が相手の心に響くだろう。新築分譲マンションのPRが詩的で秀逸というのも、この感性に訴えることの結果なのかもしれない。だから、すべての感性を捨てて理性だけで判断するような野暮なことを言うつもりはないが、「理性的な判断プロセスを踏んだうえで最後に感性で判断する」ことを強くお勧めしたい。

この前、「旧耐震マンションは絶対ダメと全否定しないでほしい」と、講演の時に当社社員が主催者からプレッシャーをかけられたそうだ。でも結論から言えば、旧耐震マンションはやめた方が良い。旧耐震が大丈夫なのであれば、大丈夫であるという根拠を示す必要がある。「うちは仲介だから、そこは自己判断で」では、お金を頂くプロとして失格だ。旧耐震マンションは不動産事業者の買取再販物件に多く見られるが、仕入れが安いからだ。住宅購入は資産価値下落リスクを少しでも軽減したい。人口減少・家余り社会で、住宅購入予定者が積極的に旧耐震基準のマンションを選択する理由は無い。旧耐震が絶対ダメで、新耐震が絶対安全と言っているわけではない。資産性を損なうリスクとして、そのリスクは旧耐震マンションの方が圧倒的に高いということだ。売ってしまえば利益が確定する不動産事業者と、買ってからの資産価値が重要な購入者とでは、立場が全く違っていることの認識も大切だ。

最近は「団地リノベ」の様な文化も普及しつつある。団地がすべて悪いわけではない。中には良い立地にある団地もある。しかし、多くの団地は昔のベッドタウン。空家だらけで高齢者だらけ。もちろん、その点については社会問題として何か対策を考えなくてはいけないのだが、その社会問題解決策として個人の資産が大きく毀損するようなことがあってはならない。たまに、ベッドタウンの500万円の団地に1,500万円のリフォームの様な事例を見かける。1,500万円のリフォームを請け負った事業者はそこで利益が確定しているので良いのかもしれないが、そこに住む人の資産性についてはどう考えているのであろうか?500万円で買った団地は、いまでこそ500万の価値しかしないのに、10年後には値がつかない可能性が高い。その売れない物件に1,500万円もの内装リフォームをして、しかも個性を強くしているのだ。現金化でき無い物件のローンを払い続けるほど悲しいものは無い。1,500万円内装をリフォームしても、個人の満足感は充足するかもしれないが、それを価格と言う価値に変換するのはほぼ不可能。個性が強いリフォームをすればするほどリセールバリューは悪くなる。私にも70点、多くの人にとっても70点と言うリフォームの方がリセールバリューは高くなる。カフェ風にリノベーションして、売りたいときに売れなくて「70歳過ぎてもカフェ風に住み続けなくてはいけない」のはつらい。

不動産の資産価値は、
「立地」という資産価値を判断する上で最も大きな要素の上に
「性能」という住居としての最低限の性能を兼ね備え
「デザイン」という個性を最後に加えるもの
であって、「立地」「性能」という基礎となるものを無視した「ただの趣味の家」にはリセールバリューは無い。

不動産の資産価値は、「立地」と「性能」と「デザイン」であるが、</br>「立地」「性能」という基礎となるものを無視した「ただの趣味の家」にはリセールバリューは無い不動産の資産価値は、「立地」と「性能」と「デザイン」であるが、
「立地」「性能」という基礎となるものを無視した「ただの趣味の家」にはリセールバリューは無い

問題の本格化は圧倒的な数の都市部の空家

平成22年時点で自治体の数は1898。人口3万人以下の自治体は945。人口3万人以下の自治体は実に総数の半分になるのだが、その自治体の総人口はわずか1100万人。残りの半数の自治体で1億1500万人を抱えている。人口3万人を切る自治体は既に消滅する町と言う認識が高いだろう。この様な町は地方に多い。それでは、今まで都会と言われてきたエリアではどうであろうか?

人口が増えるもしくは減らない町は「仕事がある町」である。
仕事がある町には若者が集い、多世代が生活する。その町に仕事があるのかないのかを確認する術の一つとして、昼間人口と夜間人口がある。昼間人口が少ない町はベッドタウン化していることがわかる。人口3万人以上の自治体953のうち、昼間人口が1割以上減る自治体は263ある。この263の自治体は、例え現在は人口が多くてもこれから減るリスクが高いところである。しかも、人口が多い町は「空家問題」が地方より深刻だ。3万人以上の人口を抱え、昼間人口が2割以上減る自治体の総人口は490万人。まずはこのエリアの空家問題がこれから顕在化してくるだろう。3万人以上の人口を抱え、昼間人口が夜間人口より5万人以上少なくなる(5万人以上が他の町に仕事や学校に通っている)自治体は3つある。そのすべてが神奈川県だ。首都圏のベッドタウンとして人気だった証だろう。

多くの人は職住近接を望む。満員電車で通勤時間1時間のようなライフスタイルを過ごしている若者はもういない。多くは、学校や仕事場のそばにもう既に住んでいる。わざわざ遠くに住む意味がない。都心の一極集中は、さらに進むだろう。コストがかからず合理的だからだ。一極集中が進んだ結果、その時に大量に供給されるこれらの地域の空家。値段を下げてでも売れれば良いが、全く売れないという時代が既に来ている。事実、私の知り合いの築24年80m2・3面バルコニーのさいたま市南区内のマンション、とても良い住戸だが、駅から15分以上かかると言うこともあり、2年半前から売り出しているが未だに買い手がつかない。

感性だけで家を買ってはいけないと思うのは、私だけだろうか?

「昼間人口移動人口」総務省統計局 平成22年調査「昼間人口移動人口」総務省統計局 平成22年調査

2015年 11月25日 11時09分