不動産コンサルタントだから解決できること

武蔵野不動産相談室株式会社 代表の畑中学氏。東京農業大学で造園を学び、経験を活かして設計事務所へ就職。そこで大学のキャンパス作りなどに携わったのち、ゼネコンの商品企画部へ転職。当時の経験を活かし、現在は不動産コンサルタントとして活躍する武蔵野不動産相談室株式会社 代表の畑中学氏。東京農業大学で造園を学び、経験を活かして設計事務所へ就職。そこで大学のキャンパス作りなどに携わったのち、ゼネコンの商品企画部へ転職。当時の経験を活かし、現在は不動産コンサルタントとして活躍する

不動産売買は住む、資産の運用だけでなく、相続にも関わる身近な問題である。しかし、人生において家を売買する機会は多くない。いざ自分がその立場に置かれたとしたら、何から始めたらいいのか、誰に聞いたらよいのかわからない。そんな相談に応える一人に不動産コンサルタントがいる。今回はオピニオンリーダーの畑中学氏に、これまでの経験から見えてきた不動産売買の傾向や問題など、不動産コンサルタントの視点でお話を伺った。

-不動産コンサルタントになったきっかけを教えてください。

畑中:現場を知るために営業部に移ったのですが、不動産仲介をするうちに、物件価格や商品力によって都心と郊外で様々な差があることに気が付きました。

そもそも都心と郊外では、前者の方が売りやすく買いやすいのです。単純な営業では都心にいる方が楽ですが、私がいたのは主に郊外。だからこそ、頭を使わなければ都心の営業マンに勝てませんでした。
たとえば、再建築不可の場所を、条件を整えて再建築可能にすることで問題が解決した家がありました。何かを加えてやることでさらに光ることもある。そういったところに面白さを見出して、コンサルという切り口でやってみようと考えたのが始まりです。
コンサルだと、ただの売買でお金のやりとりするだけでなく、贈与や借り換えのような他のやり方も提案ができるのが強みです。

何かと問題になりやすい親子間の不動産売買

親子間売買の相談はとても多いそうだ。簡単に見えて問題の起きやすい取引だからこそ、お客様に寄り添った丁寧なコンサルティングを心がけているという親子間売買の相談はとても多いそうだ。簡単に見えて問題の起きやすい取引だからこそ、お客様に寄り添った丁寧なコンサルティングを心がけているという

-畑中氏の元に持ち込まれる相談はどのような内容が多いでしょうか?

畑中:親子・親族間売買が圧倒的に多いですね。相続時のトラブルを避け、早いうちに土地を継承したいという息子。住宅ローンがまだ残っている父からローン継承したい…そんな親子間での相談が7割にも上ります。
親子間の悩みは増えているように感じます。その分問題も複雑化しています。特に相続は関わる人が増えるほど手間がかかるので、単純に右から左へ片づけて終わってしまうと、将来トラブルを抱える可能性があります。実際、相続後に問題が起きたという相談も多いです。特に、親子間売買は売主と買主が揃っているため、一見簡単な問題に見えます。だから、簡単に片づけてしまう不動産会社もあります。
人間関係のトラブルが起きても、不動産仲介として負う責任の範疇ではありませんが、客側は仲介側に責任がないとは思っておらず、トラブルになるのです。相談を受ける側としては、そうならないような丁寧なコンサルを心がけています。

-このような相談が増えている理由は?

畑中:高齢化だけでなく、60~70代の人が購入した不動産の価格が要因になっているのではないかと。高額な家を買ったものの収入が思ったように伸びず、返済の計画が狂ってローンを残している人がたくさんいます。老後破産を危惧するような相談もあります。そのうち、親子間売買のような方法で解決できるのは2~3割程度しかありません。子どもに収入がない、不動産評価が低くて残債の価格に満たない等の理由で解決に至らない人がいるのです。平成初頭のバブル時代に不動産を購入した60~70代は受難の年代ともいえるのではないでしょうか。

-もし、相談できる不動産コンサルタントが身近にいない場合は?

畑中:3大都市圏以外では探すのが大変かもしれません。地方には不動産取引だけでなく、不動産全般やお金に関する課題が沢山あります。解決できずにそのまま捨て置かれ、負の遺産として残ってしまう。もしプロを入れて相続しているなら、登記が不明のままになるなんて問題は起きないはずです。私のところにも地方からの相談が多数寄せられます。
コンサルタント以外だと、都道府県庁の不動産相談課のような場所や、不動産に通じている士業の先生が考えられます。どうしたらいいか駈け込んで聞けるような窓口が、もっと全国的に広まればいいですね。

インスペクションで見えてきた中古住宅の現状

-最近の相談傾向として変化してきたところは?

畑中:中古住宅が注目されています。その中でリフォームして住む選択が本当に良いのか?という相談が多いように思います。建てられた年代にもよりますが、昔の家はさほどメンテナンスを気にかけていない。今の新築戸建はグレードが高すぎて、中古が見劣りしてしまう。だったら安い新築戸建を買った方がいいのでは、とお客さんは考えてしまうんですね。しかし土地の仕入れ値は上がり、新築戸建の価格も上昇。消費者は予算を抑えたいという意識が高まっています。

-中古住宅を選ぶ時の注意点を教えてください。

中古でもマンションなら構造といった基本的な品質は建築確認審査である程度信頼できるので、比較的安心して選択できます。一方で戸建は、インスペクションを入れて構造体を見ないと判断ができないので難しいところ。作った工務店や大工によるのかもしれませんが、築15年くらいの建物でも問題があったり、もっと古くても質の良いものがあったり。一概に中古がいいとは勧め難いです。良い悪いはすべて見ていただき、その上でお客さんに判断していただきます。
築年数による家の状態のデータを、インスペクション会社が持っていると面白いのですけど。

このインスペクションについて自身の体験なのですが、実家の売却を仲介した不動産会社の営業が、インスペクションを理解していませんでした。業界でもまだそんなレベルのところがあります。インスペクションがいくら普及しても、営業が価値として認めた売り方ができないと意味がない。都内ではそれなりに認知されてきましたが、まだまだです。もしこのまま認知が進んでも、「インスペクションの実施=安全」という誤解を生み、結果を確認せず不具合に気付かない…という危険性があります。そこをどのように解決していくかは、不動産業界の大きな課題です。

生涯の友人になれるエージェントを増やしたい

エージェント育成のための団体を立ち上げた。「不動産業界は勤続年数が多くとも、転職すると会社ごとにやり方が異なるので、キャリアがリセットされてしまう傾向がある。個人のキャリアが活かせる環境となるように改善していきたい」(畑中氏)エージェント育成のための団体を立ち上げた。「不動産業界は勤続年数が多くとも、転職すると会社ごとにやり方が異なるので、キャリアがリセットされてしまう傾向がある。個人のキャリアが活かせる環境となるように改善していきたい」(畑中氏)

-畑中氏から見た不動産業界は?

畑中:勉強不足です。消費者が知らないこと、勘違いしていることを不動産会社は分かっていない。それを「消費者が知らないなら言わなくていい」で済ませるべきではない。勉強することで業界全体をもっとグレードアップさせていくべきです。
アメリカでは「不動産屋と弁護士と医者の友人を持て」なんていうけれど、そんな位置になればいいですね。日本の不動産屋はただの営業マン。それは一生に1回程度しか家を買わないから。アメリカのように生涯で3~4回買い替えるようなライフスタイルになるのであれば、変わってくるのかもしれません。

最近では「不動産エージェント協会」を立ち上げ、人材の育成にも取り組んでいます。"価値のある取引を提案する"、"報酬を明示する"といった、ごく当たり前の5つ倫理規約を掲げ、それさえ守れば参加できます。業界にはそれさえもやっていないところが多いのです。
不動産業界も生き残りの時代に入ったのに、契約優先主義の古い体質がまだまだ根強い。やっぱり不動産なんですね、と言われてしまう業界を、そんなことないと言えるようにしていきます。ちゃんとやっている人間を集めれば一つのブランド価値に成り得るはず。顧客から信頼される業界になるようにしたいものです。

売る側と買う側。双方とも勉強が必要

-最後に、これから家の取得を考えているユーザに向けてメッセージを。

畑中:1つ1つの内容や言葉をよく理解して家を買ったり、建てたりしてください。その理解によって数百万円節約できることもあります。専門用語が多いのでそこまでは大変という場合でも、少なくとも納得できる程度には勉強してから望めば、損は小さくなるでしょう。
家を買おうと思ったけど、不動産会社の話が信じられない。ネットで見た情報に踊らされてしまう…そういった相談者が絶えません。
今は家について知ろうとしても、書籍やネットから情報を得ることがほとんど。でも実際に家を買おうと思ったときに読める本は意外とありませんでした。そういうユーザーに向けて本を書きました。売る人は買う人の目線を持たなければならないし、買う人は売る人の目線を持たなければいけない。本にはそんなメッセージを込めています。

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幸いにも、畑中氏の元へ相談に来るのは勉強熱心な人が多いようで、よい取引ができているそうだ。一生に1度か2度の買い物だからこそユーザーも勉強をして、良い家に出会いたいものである。

売る・買う双方の疑問を解決する手引書として執筆した「家を売る人・買う人の手続きがわかる本」(かんき出版)</br>「辞書のように使ってもらえたらうれしいです」売る・買う双方の疑問を解決する手引書として執筆した「家を売る人・買う人の手続きがわかる本」(かんき出版)
「辞書のように使ってもらえたらうれしいです」

2018年 06月11日 11時05分