民泊が直面する「旅館業法」の壁とは?

前回は民泊が注目される背景と、民泊に分類される宿泊の種類について整理した。
それらを踏まえ、現在の民泊が直面している問題を要約してみると、「営利目的でゲストを宿泊させるとさまざまな法律の要件を満たす必要があるにも関わらず、まだルールが整備されていない」ということになる。
これは国家戦略特区にも当てはまる話で、先行して「民泊条例」が施行されたとはいえ、宿泊日数の規定や旅館業法がクリアされている必要がある。現状の民泊は、ホテル代わりに1~2泊するといった気軽なイメージで利用することはできない。

ここでまず、民泊を行う上で最初に理解しておきたい「旅館業法」について簡単に説明しておこう。

旅館業法とは、旅館業の発展とともに、利用者へのサービスの提供、公衆衛生などの観点から整備された法律。旅館は不特定多数の人が訪れる場所である。そのため防犯、防災、衛生などに厳しい制限が設けられ、営業には認可が必要になる。また、フロント(玄関帳場)を設けて、宿泊者の記帳や本人確認す行うことが義務付けられている。この他にも、採光、照明、換気、衛生管理、構造設備などが細かく規定されている。
これに沿うならば、民泊にも設備投資が求められることが分かる。

そして今度の旅館業法施行令改正で緩和される部分、それが延床面積の規定だ。
現在の旅館業法で民泊を行う場合、「簡易宿所」として営業する必要があった。この際、"延床面積33m2以上"を求められていたが、2016年4月1日施行の規制緩和によりワンルームマンションの1室程度の広さでも営業が可能になる。定員1人当たり1坪と定め、定員数に応じた面積が基準になるという。

旅館業法に沿うと、フロントを設けて記帳などをする必要がある旅館業法に沿うと、フロントを設けて記帳などをする必要がある

その他の適合しなければならない法規制の数々

民泊が適合すべき法律は、旅館業法だけではない。
そのひとつが消防法。防火扉の設置やスプリンクラー、非常ベル、避難時誘導灯など、ホテルでは当たり前のように装備されている防災設備は消防法で設置が定められているもの。しかし民泊が想定される一般的な住宅にすべてが備わっていることはまずない。
さらに、食事を提供するのであれば、食品衛生法を考慮して食品衛生責任者を置き、施設・設備基準は都道府県の条例に適合させる必要がある。

そして建築基準法では『住宅専用地域内に宿泊施設を建てることはできない』とされている。要するに、住宅専用地域にある空き家を民泊に利用することはできない、ということ。つまり、誰もがすぐに民泊ビジネスに参入できるわけではないのである。

このように、民泊を民宿や旅館・ホテルと同じように運営するには、クリアすべき法律が数多く存在する。民泊の形態に見合ったルール作りのために、旅館業法の改正や規制緩和が待たれているのだ。

民泊の動きに対応すべく、マンション管理規約の見直しも

ルール策定が待たれる中、一部で先行している民泊では宿泊客によるトラブルが多く発生している。
トラブル報告が急増しているのは主にマッチングサイトを利用した民泊で、分譲マンションの1室を貸し出していることが一因になっている。

投資目的などで、所有者が居住せずに賃貸物件として貸し出す場合でも、借り手である居住者はゴミ出しや共用施設の利用法など、マンション管理組合が定める管理規約を遵守しなければならない。民泊も同様であるが、短期利用者に管理規約を理解させることは困難だ。
また、たとえオートロックでセキュリティー管理をしていても、内部へ居住者以外が自由に立ち入れるのでは、防犯の観点でも問題ありといえるだろう。高級マンションではプールやトレーニングジム、屋上など豪華な共用施設を備えている物件も少なくない。こうした共用施設を居住者以外が利用できてしまうことも問題になっている。

こうした事情を受け、東京・江東区にあるマンションの管理組合は、いち早く管理規約の見直しを図った。見直しの検討がはじまった2013年当時は、民泊ではなく「シェアハウス」の規制が目的だったが、その後、民泊が同マンションで急増している事実から、民泊の禁止を管理規約とし、2014年の総会で管理規約変更を決議した(2015年8月2日に管理規約を公開)。マンションの管理規約の変更は、通常の生活や仕事を抱えている理事会メンバーが行うため簡単なことではない。そのため現状の多くのマンションの管理規約には、民泊の禁止が盛り込まれていない。

このように、すでにある規約を見直す動きが出てきている中、あらかじめ民泊禁止を管理規約に盛り込んだ新築マンションを大手の不動産会社が販売して注目された。同社では、今後販売される民泊需要の多い都市部のマンションに、民泊を禁止できる内容を管理規約に盛り込む方針と発表。さらに過去の販売物についても、民泊禁止を検討している管理組合には規約見直しの提案をしていく予定だという。

また一方で、積極的にビジネス運用をしていこうとする企業も出はじめている。民泊対応型のマンションの開発や、投資用の民泊物件の開発もそのひとつだ。物件仲介する不動産会社でも、すでに民泊を想定した空き家、空き室の活用がはじまっている。

一部で先行する民泊だが、トラブルも増え始めている。それに合わせ、管理規約を見直すマンションも出はじめた一部で先行する民泊だが、トラブルも増え始めている。それに合わせ、管理規約を見直すマンションも出はじめた

民泊解禁の先にも残債する課題

この先、民泊が解禁されたとして、物件を広く告知し利用者を募集していくマッチングサイトなどの手段・手法は整備中の段階である。世界中から訪れるゲストはどのような情報を必要としているのか。そしてオーナーが安心して物件を貸し出すためには何を整備していけばよいのだろうか。物件周囲に住む人々も安心できる仕組みも必要である。
環境の問題だけでなく、民泊物件の所有に関する税法の扱いもまだ決まっていない。

多くの課題は残るが、民泊は政府のインバウンド(訪日外国人旅行客誘致)政策のキーとして期待されている。全国的な民泊解禁をする方へ向かっているのは確かだ。
将来の民泊普及に向けて、利活用しようとするオーナー、ホスト、ゲストは現状の課題や進捗を知り、動向を見守っていく必要がありそうだ。

※この記事は「民泊JAPAN」クローズに伴って、同社にて運営するLIFULL HOME'S PRESSが著作権を引き継ぎ、使用許諾権に基づいて公開しています。情報は「民泊JAPAN」掲載当時(2016年3月25日)のものとなります。

2016年 03月25日 11時05分