マンションを含めて、住宅はもともと「個別性」が強い

このところのマンション市況を見ていると、広域的な立地条件が決して良くなくても(つまり都心以外ということ)駅から近かったり、タワーマンションであったりと、その他のスペックに優れているためにエリアの相場を大きく逸脱した価格でも即日完売する物件が相次いで登場する一方、消費増税の影響でマンションの売れ行き全般は落ち込んでいるとの報道が為されているように、マーケット全体としてはとても好調を維持しているというような見方ができる状況にはない。

これは何を意味しているかというと、マンション市況という「全体概況」と個々の物件の売れ行きや地域の人気度などの「個別状況」とは異なるという、ごく当たり前のことを示しているのに過ぎないのだが、結局は人の見立てや今後の景気変動に対する予測、個人的なライフステージの変化やそれに備える意識など、実に様々な“思い”がカオス化して市場流通に反映されているので、一事をもって万事を見通すことはできないという世の常に思いが至ることになる。(ちなみに状況、市況、概況などに使われる「況」という文字は「物事の様子」という意味を持っている。)
つまり、マンションに限らず住宅というのはもともと「個別性」の強いものなのだ。似たようなものだらけなのだが、同じものとなると皆無というのが大量生産される一般消費財との大きな違いである。住宅は「属性の固まり」なので、属性のわずかな違いで千差万別という言い方もできる。

マンション「価格」と「価値」は同じものではない

同様に、不動産の「価格」と「価値」の意味合いは、ニュアンスレベルでも同じものではない。

「価値」が高いから「価格」も相応に高い、という物件ももちろんあるが、それは意味するところが若干近づいているだけで、決して同じことを示しているのではない。
「価格」は、物件の現在の対価がいくらであるということを示すものであり、相対的なものであって購入条件やその時々の経済環境によっても変化するので、「値引き」ができたり想定価格より上振れたりすることがある。
これに対して「価値」は物件の将来の価値=潜在的価値、つまり資産価値を示すことが多い。もちろん「その人にとって居住満足度が高い」という、いわば情緒的な側面を「価値」ということもあるが、ここでは専ら価格を規定している経済的価値を示すものとして理解しておく必要がある。
したがって、偶然同じく4,000万円で75m2の新築マンションが複数戸分譲されていたとしても、それらの「価値」は自ずと異なることになる。実際に、同じ4,000万円の新築マンションでも、10年後に市場流通する価値を反映した価格が大きく異なるケースがあることを認識されたい。

「価格」は、物件の現在の対価がいくらであるということを示すものであるのに対し、</br>「価値」は物件の将来の価値=潜在的価値、つまり資産価値を示すことが多い「価格」は、物件の現在の対価がいくらであるということを示すものであるのに対し、
「価値」は物件の将来の価値=潜在的価値、つまり資産価値を示すことが多い

不動産売買においては「価格」よりも「価値」を重視する

このように、言葉としての「価格」と「価値」は似て非なるものなのだが、では実際にどのように「価値」を認識すべきなのかが重要になる。「価格」は実際に販売されている値段を数値で示したものなので誰にでも等しくわかるが、「価値」は物件に内在されているもので、当然のことながら目に見えるものではないからだ。

ここで「価格」は現在、「価値」は将来を示すものという上記の定義らしきものをそのまま当てはめると、将来の「価値」を見るためには、過去の「価格」を参考にするのが最も適しているということになる。冒頭示した通りマンションは属性の固まりで個別性が強いものであり、景気変動の波でも自ずと違いが出るものだが、例えば中古マンションであれば現在の「価格」を見て予算内だから買える=妥当な価格、と考えるのではなく、その中古マンションの5年前の市場流通価格、もしくは新築当時の分譲価格を調べて現在の「価格」と比較すると、分譲当時もしくは5年前から「価格」がどれほど変動しているのかがわかる。
その「価格」の差が内在されている「価値」の総和と考えれば、価格差が少ない物件および住戸ほど資産価値が維持されているということを数字で確認できる。分譲当時の価格や5年前の流通価格などはフローの情報からはすでに消えてしまっているが、仲介会社などを通じて調べられるので、現在の「価格」だけでなく過去の「価格」を調べて比較することをお勧めしたい。可能であれば、周辺の築年数が近い物件の価格推移も収集し、物件ごとに比較することでその変動率の違いやエリアの特性も推測できれば資産価値チェックは十分だろう。

新築マンションはエリアの特性と属性を参考にする

将来の「価値」を見るためには、過去の「価値」を参考にするのが最も適しているということになる。例えば中古物件であれば、5年前の市場流通価格、もしくは新築当時の価格を調べて現在と比較すると、当時から「価格」がどれほど変動しているのかがわかる将来の「価値」を見るためには、過去の「価値」を参考にするのが最も適しているということになる。例えば中古物件であれば、5年前の市場流通価格、もしくは新築当時の価格を調べて現在と比較すると、当時から「価格」がどれほど変動しているのかがわかる

上記のように中古マンションであれば、当該物件の過去の売買履歴や分譲当時の価格を調べることによって、物件や住戸の価格推移を確認することができるし、さらに周辺物件と比較することによって特定エリア内で「価値」ある物件なのか否かを検証することができるが、新築マンションはどうすれば「価値」判断することができるだろうか。

その答えは物件のエリア特性と属性に求めることができる。以前マンションのリセールバリューについて言及した際に示した通り、不動産は動かせない財産なので、立地条件が最も資産価値に重要な要素であることは論を俟たない。したがって立地条件というスペック(広域および狭域とも)を最重視し、“何かと便利であること”をその次に重視して経済合理性の範囲内で物件選定を進めれば、将来の「価値」が大きく低下する可能性のある物件を、購入候補から排除することができるのである。
さらに論を進めれば、自分の好みを最優先して物件購入したいという向きでも、まずはこのような資産価値に関するスペックを確認した上で、将来の「価値」が大きく低下するリスクを承知で敢えて購入に踏み切るのであれば、それはそれで高い居住満足度を得られる可能性が高まるのではないか。

住宅購入は、多くの場合“絶対に失敗できない買い物”だ。何らかの理由で住宅ローンを返済できなくなったとしても、オーバーローンに陥っておらず、ほどなく買い手が現れる物件であれば、それはある種の保険として物件購入が機能していることになるが、購入自体が失敗であることは人生において大きな経済的損失をもたらすリスクを高めることに他ならない。
そう遠くない将来の物件売却をイメージすること=出口を考えて購入することが本当の意味で資産価値を考えることなのである。

2014年 10月01日 10時56分